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片肱
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かたひじ
ふりがな文庫
“
片肱
(
かたひじ
)” の例文
取って返しの勢いで、十夜頭巾の侍が、ぴたぴたと自分の影へ寄ってくるのに、橋の女は、その欄干に
片肱
(
かたひじ
)
もたせて澄ましたもの。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
取っつきの
室
(
しつ
)
には粗末な木地のテーブルに、ミルクの
空罎
(
からびん
)
だのつまったのだの、ゴチャ交ぜに並べた、その横に
素
(
す
)
の
片肱
(
かたひじ
)
をついて
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
竜之助も同じような丹前を羽織って、
片肱
(
かたひじ
)
を炬燵の上に置いて、
頬杖
(
ほおづえ
)
をしながら、こちらを向いて、かしこまっておりました。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いつものように腰巻一ツの
裸体
(
はだか
)
のままで
片肱
(
かたひじ
)
を高く上げた脇の下をば
頻
(
しきり
)
と片手の
団扇
(
うちわ
)
であおぎながら話をしているのであった。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と云うと、のめずって、低い縁へ、
片肱
(
かたひじ
)
かけたなり尻餅を
支
(
つ
)
いたが、……月明りで見るせいではござらん、顔の色、
真蒼
(
まっさお
)
でな。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
長火鉢の
猫板
(
ねこいた
)
に
片肱
(
かたひじ
)
突いて、美しい
額際
(
ひたいぎわ
)
を抑えながら、片手の
火箸
(
ひばし
)
で炭を
突
(
つ
)
ッ
衝
(
つ
)
いたり、灰を
平
(
なら
)
したりしていたが、やがてその手も動かずなる。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
夜なかにひょいと眼がさめるでしょ、見ると光子のやつが
片肱
(
かたひじ
)
を突いて半身を起こして、ぼくのことを上から見おろしているんです。そしてぼくが眼を
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
アンジョーラはカラビン銃の銃口に
片肱
(
かたひじ
)
をついて
舗石
(
しきいし
)
の段の上に立っていた。彼は考え込んでいた。そしてある
息吹
(
いぶき
)
を感じたかのように身を震わしていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
やがてのことに、なみなみとはいった茶碗をつかんだなりで、
片肱
(
かたひじ
)
を突いて、横に伸びて
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
秋元の我部屋へ帰ってからも、なお鳴鳳楼の座敷に居るような心持で、きょう半日珍しく楽を得て居た机に
片肱
(
かたひじ
)
載せ、
衣服
(
きもの
)
も着更えず
洋燈
(
らんぷ
)
の
蓋
(
かさ
)
を
瞻詰
(
みつ
)
めて、それでその蓋に要があるのではなく
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
彼女は曲げた
片肱
(
かたひじ
)
で反絵の胸を押しのけると静にいった。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
幸田はモーニングのズボンの上に
片肱
(
かたひじ
)
を立て
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
橋廊下の
阿娜
(
あだ
)
な女は、
片肱
(
かたひじ
)
のせた欄干に頬づえついて、新九郎の後ろ姿をいつまでもじっと瞳の中へ
溶
(
とろ
)
けこむほど見送っていた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
種彦は書きかけた『田舎源氏』続篇の草稿の上に
片肱
(
かたひじ
)
をついたまま唯
茫然
(
ぼうぜん
)
として天井を仰ぐばかりである。物優しい
跫音
(
あしおと
)
が
梯子段
(
はしごだん
)
に聞えた。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、ややあってお銀様が、机の上に
片肱
(
かたひじ
)
を置いて言いましたが、竜之助の方では、とんと返事がない。お銀様は別段それを追究するでもなく
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そう思いながら、ふと脇にある机のような物に、
片肱
(
かたひじ
)
を突いて
倚
(
よ
)
りかかった。唐草の風呂敷が掛けてあるからわからないが、倚りかかった感じは机のようであった。
落葉の隣り
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この時までも目を放たで直立したりし黒衣の人は、濶歩坐中に
動
(
ゆる
)
ぎ
出
(
いで
)
て、燈火を仰ぎ李花に
俯
(
ふ
)
して、厳然として椅子に
凭
(
よ
)
り、
卓子
(
ていぶる
)
に
片肱
(
かたひじ
)
附きて、眼光一
閃
(
せん
)
鉛筆の
尖
(
さき
)
を
透
(
すか
)
し見つ。
海城発電
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
正成に抑えられて、初めて、彼はその
片肱
(
かたひじ
)
で顔を横にこすった。顔半分、
柘榴
(
ざくろ
)
のようにスリ
剥
(
む
)
けていたのである。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
片肱
(
かたひじ
)
を
舷
(
ふなべり
)
に背を
胴
(
どう
)
の
間
(
ま
)
の横木に寄せかけたまま、
簾越
(
すだれご
)
しに
唯
(
ただ
)
ぼんやり遠い川筋の景色にのみ目を移していた。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
机に
片肱
(
かたひじ
)
をつき、手で
顎
(
あご
)
を支えた恰好や、精のぬけたような眼や、濁った冴えない膚の色など、深い疲労を示しているようである。彼は疲れていた、げっそりと疲れていた。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この時までも目を放たで直立したりし黒衣の人は、
濶歩
(
かっぽ
)
坐中に
動
(
ゆる
)
ぎ
出
(
いで
)
て、燈火を仰ぎ李花に
俯
(
ふ
)
して、厳然として椅子に
凭
(
よ
)
り、
卓子
(
ていぶる
)
に
片肱
(
かたひじ
)
附きて、眼光
一閃
(
いっせん
)
鉛筆の
尖
(
さき
)
を
透
(
すか
)
し見つ。
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
側には大きな荷物をおいて、
片肱
(
かたひじ
)
を
凭
(
もた
)
せ、ひどく屈託のない若々しさを顔にたたえて、ときどき、大口あいて笑ったり、自分の鼻を
抓
(
つま
)
んでみたりしている。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おじさん。わたしも今ので少し酔って来ましたわ。」と君江は横坐りに
膝
(
ひざ
)
を崩して窓の敷居に
片肱
(
かたひじ
)
をつき、その手の上に頬を支えて顔を後に、洗髪を窓外の風に吹かせた。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
舷
(
ふなべり
)
に手首を少し
片肱
(
かたひじ
)
をもたせて、じっと私を
視
(
み
)
たのが円髷の
婦
(
おんな
)
です、横に並んで銀杏返のが、手で浪を
掻
(
か
)
いていました。その時船は
銀
(
ぎん
)
の色して、浜は
颯
(
さっ
)
と桃色に見えた。
合歓
(
ねむ
)
の花の月夜です。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
唐焼
(
からやき
)
の
陶物床几
(
すえものしょうぎ
)
に、ここの
御隠家
(
ごいんけ
)
様なる
千蛾
(
せんが
)
老人はゆたりと腰を休めて、
網代
(
あじろ
)
竹の卓のうえに
片肱
(
かたひじ
)
乗
(
の
)
せ
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渠
(
かれ
)
は
腕袋
(
カウス
)
の美しい
片肱
(
かたひじ
)
を椅子の縁に掛けて、悠然とぶら下げながら
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
片肱
(
かたひじ
)
つきて
頭
(
かしら
)
支ふる夢心地
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
見ると、その野郎が、いまいった通りな
櫃
(
ひつ
)
を側へおいて、後生大事に
片肱
(
かたひじ
)
を乗ッけています。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鏨を取った
片肱
(
かたひじ
)
を、ぴったりと太鼓に
矯
(
た
)
めて、銀の鶏を見据えなすった、右の手の
鉄鎚
(
かなづち
)
とかね合いに、向うへ……打つんじゃあなく
手許
(
てもと
)
へ
弦
(
つる
)
を絞るように、まるで名人の弓ですわね、トンと矢音に
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「じゃあ、吾輩はどうだ。この黄祖は」と、
片肱
(
かたひじ
)
を張って、自分を前へ押しだした。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「え、何、下らない、何を言ってるんだ。まあ、おかみさん、飲むさ、こっちへ来て。」神月はこれをキッカケに
片肱
(
かたひじ
)
をちゃぶ台に
支
(
つ
)
いて、やや所在を得たのである、しかたのなかった懐中の手は
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると宗治は、
片肱
(
かたひじ
)
起して、むくと
面
(
おもて
)
をもたげながら、一同の者へ
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
片
常用漢字
小6
部首:⽚
4画
肱
漢検準1級
部首:⾁
8画
“片肱”で始まる語句
片肱掛