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熾烈
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しれつ
ふりがな文庫
“
熾烈
(
しれつ
)” の例文
と作左衛門も今更敵方の周密な用意に舌を巻いたが、それと同時に、いよいよ両藩の確執が
熾烈
(
しれつ
)
になって来た暗示を受けた気がした。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ユダヤ人の部落に
蟄居
(
ちっきょ
)
して悲惨な生活をつづけたけれども、誰も助ける者はなかった。しかし彼の製作欲はますます
熾烈
(
しれつ
)
を加えた。
レンブラントの国
(新字新仮名)
/
野上豊一郎
(著)
いかに
熾烈
(
しれつ
)
な善を求める心でもこの世界では悪を全く避けることができないような有様である。私たちは本当に弱い葦のようなものだ。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
彼は、そうした悪夢の中を漂い、人間に与えられた地獄味の中で、わけても、味のもっとも
熾烈
(
しれつ
)
な、一つを味いつづけていたのである。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
この演奏はあまりにも
瑰麗
(
かいれい
)
であり、ワインガルトナー風に隠健であるが、その代り
渾然
(
こんぜん
)
たる
完璧
(
かんぺき
)
の出来で、この精神的内容の
熾烈
(
しれつ
)
な曲を
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
▼ もっと見る
だが、この鮮麗な大河の
風色
(
ふうしょく
)
と
熾烈
(
しれつ
)
な日光の中では決して不調和ではない。私は南国の大きい
水禽
(
みずどり
)
のように
碧流
(
へきりゅう
)
を遡るのだ。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
現に世界大戦の最も
熾烈
(
しれつ
)
な時でも、バッハやモーツァルトの音楽はあらゆる国境を越えて人々の心のオアシスとなった。
望ましい音楽
(新字新仮名)
/
信時潔
(著)
しかし、この不思議な自分が壑底に墜ちるのを待っていたという一家の素性を、どうかして知りたいという欲望は、火のように
熾烈
(
しれつ
)
を極めていた。
陳宝祠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
こうした
日蔭者
(
ひかげもの
)
の気楽さに
馴
(
な
)
れてしまうと、今更何をしようという野心もなく、それかと言って自分の愚かさを
自嘲
(
じちょう
)
するほどの感情の
熾烈
(
しれつ
)
さもなく
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
が、それほど
熾烈
(
しれつ
)
に、芸術的良心をもたぬ人々の間には、彼女が軌道に乗って、乗りだしてゆくのが不安にもなった。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
一方からいうと居士の門下生に対する執着——愛——がこの時に至るまで
熾烈
(
しれつ
)
であって黙ってそのぐうたらを観過することを許さなかったのであった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ために、私は、その
翌
(
あく
)
る日もそのまた翌る日も、何らの行動をも取らなかったのであった。しかも日を追うて各紙の叫びはいよいよ
熾烈
(
しれつ
)
さを増してくる。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それこれに頓着なく、私たち二人はみょうとに似たような間柄に、いつか
堕
(
お
)
ちていました。人は愛や情熱の
熾烈
(
しれつ
)
なときばかり、これに堕ちるとは限りません。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
コナンドイルや
涙香
(
るいこう
)
の探偵小説を想像したり、光線の
熾烈
(
しれつ
)
な熱帯地方の焦土と緑野を恋い慕ったり、腕白な少年時代のエクセントリックな
悪戯
(
あくぎ
)
に
憧
(
あこが
)
れたりした。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その論法の不統一はかえって情感の
熾烈
(
しれつ
)
を語るものである。実に六節—十七節の全体にわたる神に対する怨恨は、その語調とその感情と共に激越痛烈を極めている。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
砲撃は、ますます
熾烈
(
しれつ
)
さを加え、これに
応酬
(
おうしゅう
)
するかのように、イギリス軍の陣地や砲台よりは、高射砲弾が、附近の空一面に、
煙花
(
はなび
)
よりも豪華な空中の祭典を展開した。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
初老に近い男の、好色の念の
熾烈
(
しれつ
)
さに就いて諸君は考えてみたことがおありでしょうか。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そういう
霊感
(
インスピレーション
)
の
悦
(
よろこ
)
びは、クリストフに他のすべてをきらわしたほど
熾烈
(
しれつ
)
なものだった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
親鸞に道徳の言説が少ないのはむしろその絶対者への情熱の
熾烈
(
しれつ
)
を語るものであろう。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
青年の静かな言葉の裡には、彼の
熾烈
(
しれつ
)
な恋が、火花を発していると云ってもよかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
この
直弼
(
なおすけ
)
という人は『作夢記事』などという本は「井伊掃部頭殿は無識にして強暴の人なり」とだいぶこっぴどくこきおろしているが、強暴というのはいってみれば闘志
熾烈
(
しれつ
)
の別名で
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
久美子にたいする控え目な慕情が、猿沢の出現以来、しゃにむにといった具合の
熾烈
(
しれつ
)
な情熱に変化したのは、蟹江にとっても意外なほどでした。つまり競争意識というやつなのでしょう。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
だからKが一直線に愛の目的物に向って猛進しないといって、決してその愛の
生温
(
なまぬる
)
い事を証拠立てる訳にはゆきません。いくら
熾烈
(
しれつ
)
な感情が燃えていても、彼はむやみに動けないのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
折角子供が生れても、母親が生きて居なければ、その子は非常に不幸であるにも拘わらず、子を儲けたいという本能的欲望は、わが子の将来の不幸を考える余裕のないほど
熾烈
(
しれつ
)
なものであります。
印象
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
情熱なきサタイアリストの筆は、諷刺の半面を完備すれども、人間の実相を刻むこと難し。ボルテーアとスウ※フトの偉大なるは、その諷刺の偉大なるに非ずして、其情熱の
熾烈
(
しれつ
)
なるものあればなり。
情熱
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
それ等は
皆
(
みな
)
不純なる根源から出発し、常に悪霊から後押しされる。魔軍の妨害は常に
熾烈
(
しれつ
)
であると覚悟せねばならぬ。が、
汝
(
なんじ
)
は
須
(
すべか
)
らく現代を超越し、目標を遠き未来に置いて、
勇往邁進
(
ゆうおうまいしん
)
せねばならぬ。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
求むる心の
熾烈
(
しれつ
)
さを示すものに外ならなかったのである。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
という慾望は、尚一層
熾烈
(
しれつ
)
になって行くのだった。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
嗚呼
熾烈
(
しれつ
)
なる
光明
(
くわうみやう
)
の、狂へる如き
大旋轉
(
だいせんてん
)
よ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
そんな
熾烈
(
しれつ
)
な望みはおろか会わない間の辛さ、
世路
(
せろ
)
にまよう身のかなしさ、武蔵の
情
(
つれ
)
ないこと——なに一つとしていえないのだった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから滝人の生活は、夢うつつなどというよりも、おそらく悪夢という地獄味の中で——ことに味の最も
熾烈
(
しれつ
)
なものだったに相違ない。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それが出来ずとも、倉持との恋愛が、何物をも犠牲にするほど
熾烈
(
しれつ
)
なものであったならば、当然伯爵家も伯爵夫人も最初から捨てなければならなかったのだ。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
町並で山下通りの電車線路の近くは、表町通りの
熾烈
(
しれつ
)
なネオンの光りを受け、まるで火事の
余焔
(
よえん
)
を浴びているようである。池の縁を取りまいて若い並木の列がある。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして私は精神鑑定を三回も受けているのであったが、この新聞で見ると私の事件に対する社会の注目なり憤激なりは、まだかなり
熾烈
(
しれつ
)
を極めているように思われる。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
いかにこの青少年層が科学小説に対し熱意をもっていてくれるか、それは恐らく今日の多くの編集者も知らないし、多くの作家も知らないところであろうが、実に
熾烈
(
しれつ
)
を
極
(
きわ
)
めている。
『十八時の音楽浴』の作者の言葉
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
斯
(
か
)
く
迄
(
まで
)
熾烈
(
しれつ
)
なる、斯く迄痛切なる物質慾が己の胸中に燃えて居ながら、其れが満足されずに終るという筈はない。真面目なる慾望の発する所には、必ず対象が生れなければならない。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ふるさとを、私をあんなに嘲ったふるさとを、私は捨て切れないで居るのである。病気がなおって、四年このかた、私の思いは一つであって、いよいよ
熾烈
(
しれつ
)
になるばかりであったのである。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
が、その当時、僕の
熾烈
(
しれつ
)
な職務心は、そんな心をすぐ打ち消したのでした。
島原心中
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
われわれ凡人には経験することの出来ない、
熾烈
(
しれつ
)
な心の動き、深刻な悩み、それを征服する意志の力、異常な歓喜——等は、ベートーヴェンの音楽を通して最もよく知ることが出来るだろう。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
樺太はやはり冬に
来
(
く
)
べきところだと思う。私はここで童謡はできるかも知れないと思えるが、
北国
(
ほっこく
)
風の民謡は到底作れそうにもない。夏は南国だ、
熾烈
(
しれつ
)
で、あの深刻な悩気と
棄
(
すて
)
ばちの気分は。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
何となれば、毛利家に
亡
(
ほろ
)
ぼされた尼子一党の
復仇心
(
ふっきゅうしん
)
たるや
熾烈
(
しれつ
)
なもので、彼らが、失地恢復にのり出す前提でなくて何でしょう。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
最初抱いていた、あの
熾烈
(
しれつ
)
な憎悪も、近頃ではどうやら惹き合うものが現われてきて、早苗は、愛憎並存の異様な心理に悩むようになってきた。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
全くヒルミ夫人は、その昔、田内新整形外科術をマスターするために見せた
熾烈
(
しれつ
)
なる研究態度のそれ以上熾烈な研究慾に燃え、病院のなかに電気メスの
把手
(
はしゅ
)
を執りつづけたのである。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
わたしはかの女の情熱の
熾烈
(
しれつ
)
に煩いを感じ、一方、女王蜂のような威力に
惧
(
おそ
)
れて、わたしは無意識のうちにかの女の青眼に向けて来るものを右に左にまた八方へ外らすことに骨を折ったらしい。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
熾烈
(
しれつ
)
なる好奇心の湧き起ってくるのを禁じ得なかったのでありますが、この疑問はやがて本文書翰を読み進むに従って、次第に氷解してきましたことは、すでに皆様も御存知のとおりであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その音楽が強大
熾烈
(
しれつ
)
で、聴者に
憩
(
いこ
)
う
寸隙
(
すんげき
)
も与えず、かつて感情の移入を許さなかったことや、採り用いた題材がことごとく神話であり、英雄主義に
溺
(
おぼ
)
れて、その宿命的悲劇に救いのなかったことなど
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
よろずに奔放で
熾烈
(
しれつ
)
であります。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その周到をきわめた、いかにも再現されるのを
懼
(
おそ
)
れるような行為を見ても、その内容が疑いもなく、異常に
熾烈
(
しれつ
)
な秘密だったに相違ありません。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
奈良坂、東大寺附近、法華寺
界隈
(
かいわい
)
、
手掻
(
てがい
)
小路と、合戦は連日、
熾烈
(
しれつ
)
をきわめた。——が、一方の顕家の
麾下
(
きか
)
は、いかんせん、いわゆる“疲れ武者”で疲れぬいていた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つまり、これなどは、廓と云う別世界が持つ地獄味のうちで、最も味の
熾烈
(
しれつ
)
な、そして華やかなものであろう。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
熾
漢検1級
部首:⽕
16画
烈
常用漢字
中学
部首:⽕
10画
“熾”で始まる語句
熾
熾盛
熾火
熾熱
熾熱燈
熾々
熾仁親王
熾仁
熾然