武運ぶうん)” の例文
そらこが狼火のろし……そして最後さいご武運ぶうんいよいよきてのあの落城らくじょう……四百年後ねんご今日こんにちおもしてみるだけでも滅入めいるようにかんじます。
いつもであると、訣別けつべつに際し、各艦は水平線上に浮かびあって、甲板上に整列し、答舷礼とうげんれいを以て、おたがい武運ぶうんと無事とを祈るのが例であった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてご武運ぶうんだにあらば、おりを待ってまたの大事をおはかりなさるのがなによりの万全ばんぜんじゃ。……晴季はそう思うが、御意ぎょいのほどはどうおわすの?
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにも心配しんぱいするな。まん一、おれが、武運ぶうんつたなくきてかえるとしたら、きっとおかあさんにたままを言伝ことづてする。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
思ひ出しさても/\如何成事にて斯迄武運ぶうん盡果つきはてたるこの身かな以前は越後家にて五百石の祿ろく頂戴ちやうだいし物頭役をもつとめ大橋文右衞門とも云はれたる武士さふらひが人の金ゆゑ寢ず番を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
田村麻呂たむらまろはそんなにつよい人でしたけれど、またたいそうこころのやさしい人で、人並ひとなみはずれて信心深しんじんぶかく、いつも清水きよみず観音様かんのんさまにかかさずおまいりをして、武運ぶうんいのっておりました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ウーム! さてはお父上には、早くも毒手どくしゅちたもうて、桑名へさしたてられるご武運ぶうんすえとはおなり遊ばしたか、……ああ、おそかった……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北條某ほうじょうなにがしとやらもう老獪ずる成上なりあがものから戦闘たたかいいどまれ、幾度いくたびかのはげしい合戦かっせん挙句あげくはてが、あの三ねんしのなが籠城ろうじょう、とうとう武運ぶうんつたな三浦みうらの一ぞく
いまも前線ぜんせんにあってたたかいつつある戦友せんゆうのことをかんがえると、自分じぶん武運ぶうんつたなくして帰還きかんしながら、なんで、これしきの戦傷せんしょう名誉めいよとしてひとほこることができようか
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
貞光さだみつ季武すえたけ熊野くまの権現ごんげんにおまいりをして、めでたい武運ぶうんいのりました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
てらし給はぬにや國にては惡人あくにん小栗美作をぐりみまさかが爲にざんせられ終に浪人らうにんしてかく零落れいらく困窮こんきうに及び其上にも此度斯る無實むじつの難にあふ事はよく/\武運ぶうん盡果つきはてたりしか夫に付てもうらめしきは新藤市之丞殿が當時の名前并びに町所等ちやうどころとう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あのときばかりは、いかに武運ぶうんめぐままれた御方おんかたでも、今日きょう御最後ごさいごかとあやぶまれました。
以て屑屋一同御呼出し下置れ一々見分みわけ候へ共新藤市之丞の相知申さゞるは誠に是非ぜひなき次第にして能々武運ぶうん盡果つきはてたる身の仕合せなりと無念の涙に伏沈ふしゝづみ居たりしかば越前守殿も氣の毒に思はれなほまた追々おひ/\吟味ぎんみの致し方もあらん然樣さやう存ぜよとて又々傳馬町へぞさげられける扨も斯迄かくまでに市之丞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)