本統ほんとう)” の例文
しかし疫病えやみは日一日と益〻猛威をたくましゅうし、たおれる人間の数を知らず、それこそ本統ほんとう死人しびとの丘が町の真ん中に出来そうであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして果せる哉、本統ほんとうに伊勢鰕のように真赤な顔になった。乃公おれは困ったと思うと、富田さんが突然いきなり乃公の手を捉えたのには喫驚びっくりした。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「そんなことを訊いてどうするんだ。お前は本統ほんとうにわかるのかね。冗当を言っているんじゃないかな。きょうは大層いい天気だよ」
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
何でも私に目認みとめられまいと思う様に本統ほんとうに憎いじゃ有ませんか廊下の燈明あかりが充分で無いのを幸いちょい/\と早足に通過とおりすぎました
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
A イヤ、あれは本統ほんとうだよきみ。ちやんと新聞しんぶんいてあつた。それを精密せいみつ記憶きおくしてるのがすなはおれ頭腦づなう明晰めいせきなる所以ゆゑんさ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
もっともこれはお歴々の先生方には初めから失礼であったかもしれませんが——今伺ってみますと、なるほど本統ほんとうのことをねらってあるものでげす、な
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
鉄梃まで使つかって本統ほんとうにごつごつ岩をって、浮岩うきいわの層のたまり水をそうとしたりしているのだと思うと、私どもはじつは少しおかしくなったのでした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あなたさまは本統ほんとうにお健やかでおわすのでしょうか、それならそれ以上のしあわせはないとしても、ひょっとしたらお健やかでないのではないでしょうか
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
無論偉くない人だから本統ほんとうに啓発するほど教えなかったが、教場に立って先生と呼ばれ、生徒と呼んだことは確かにある。なお自白すれば、熊本に来たてであります。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
君は本統ほんとうに仕合せものだぜ。黙っている奴が曲者くせものとは君のことだ。今まで女嫌いを看板にしていた君が、東京や大阪の社交界にだって、滅多に見当らぬ様な、日本一の美人を
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは本統ほんとうはクララが始めから考えていた事なのだ。十六のとしから神の子基督キリスト婢女しもべとして生き通そうと誓った、その神聖な誓言せいごんを忘れた報いに地獄に落ちるのに何の不思議がある。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
失ひ花見といへば上野か隅田すみだ又は日暮里飛鳥山人の出盛でさか面白おもしろき所へ行が本統ほんとうなるに如何常より偏屈へんくつなる若旦那とは言ながらとほき王子へ態々行夫もにぎはふ日暮里をばきらひて見榮みばえなき土地とちの音羽を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私が本統ほんとうに彼を知っていたのなら、彼もまた私を見覚えていて、たとえ街上でなりと二度目に出会ったのだから、目付でなり立ち止まるなりして、その心持を表示しなければならぬわけだが
誰? (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「いや、本統ほんとうだよ、奉公どころか、嫁に欲しいと望む人も出て来るよ」
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
分ッたにも、う明白に分ッたよ、罪人は此老人が死切れた物と思い安心して逃て仕舞ッたが実はれが本統ほんとう天帝てんていの見張て居ると云う者だろうよ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「きょうは変なことばかりあったのよ。お湯屋の時計が停っていたし、うちのも三時で止っていたし、それに本統ほんとうに妙よ。あたしののも止っていたの。」
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
人がともだちをほしいのは自分の考えたどんなことでもかくさず話しまたかくさずにきたいからだ。だまっているということは本統ほんとうにつらいことなのだ。
つまり人格から出た品位を保っている本統ほんとうの紳士もありましょうが、人格というものを度外どがいに置いて、ただマナーだけを以て紳士だとして立派に通用している人の方が多いでしょう。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
始めて本統ほんとうの事情を知った妻から嫉妬しっとがましい執拗しつこい言葉でも聞いたら少しの道楽気どうらくげもなく、どれほどな残虐な事でもやり兼ねないのを知ると、彼れは少し自分の心を恐れねばならなかった。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
さア今度こんど本統ほんとうだ。いよ/\掘當ほりあてた。けれども矢張やつぱり横穴よこあなであらう。
吾々われ/\は曲者の計略に載られて居たのだ、藻西太郎に罪は無い、爾とすれば本統ほんとうの罪人は誰だろう警「爾さ誰だろう目「夫を見出すは判「目科君、君の役目だ」
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
どういうものか、私は私の姉の話をきいていると、話してくれることがすっかり目の前にはっきり浮んできて、まるで本統ほんとうの実景を見ているような気がするのです。
不思議な国の話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
須利耶すりやさまは何気なにげないふうで、そんな成人おとなのようなことをうもんじゃないとはっしゃいましたが、本統ほんとうは少しその天の子供がおそろしくもお思いでしたと、まあそうもうつたえます。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
とにかく二通りの人間があるということを言うが、これはこの両面を持っているというのが、これが本統ほんとうの事でしょう。いくらオリヂナルの人でもイミテーションの分子を何処かに持っている。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つたかもれぬが、いまいのが本統ほんとうらしい。
しかしこれは本統ほんとうかも知れないとも思われた。ただ、ふいに此処ここにいるという事はうそではなかった。そのさきを覚えていないことも、ありそうな事に考えられた。
童話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
大鞆は心の底にて「ナニ生意気な、人を試すなどと其手に乗る者か」と嘲りおわッて「そんなら本統ほんとうの所ろアレは何の傷だ(谷)夫は未だ僕にも少し見込が附かぬがまあ静かに聞く可し、 ...
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
どうだかさっぱりわからないのが本統ほんとうだ。とにかく窓を開いて挨拶あいさつしよう。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
本統ほんとうに何も起ってはいなかろう……がしかし、あれは又毎時の壁を見詰めて、こうして此処ここに坐ってこの女と話していることをすっかり考えあてたとすると、しくば考えあてようと
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そして私は本統ほんとうにもうその三人の天の子供らを見ませんでした。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
たましいに生きのあるものなら、うつつに、ゆめに、そらごとのおもいに、早く早く、ひと刻も早くおしらせくださいませ、ああ、あなたは本統ほんとうに生きていられるのでございますか
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「それは本統ほんとうですか。」
三階の家 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
本統ほんとうでしょうか。」
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)