しく)” の例文
いよいよ御勝おすぐれあそばし、寒さの御障おさわり様もあらせられず、御さえ/″\しく入らせられ候御事、数々御めで度く、御よろこび申上げまゐらせ候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
何時迄も致すは迷惑めいわくなり殊に又私しの末の弟がツケしくふゆゑ何か最初さいしよより申通り持參金ぢさんきんの百兩衣類道具代等は兎も角も離縁状りえんじやうばかりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此度のお咄しお、くハしく成可(なしつかはさるべく)候。愚兄の内 此佐井ハ北奉行ママ人町杉山佐井虎次郎
どうかなされた事かと拾八九の赤ら顏紫めりんすと黒の片側帶氣にしつゝめづらしくくるまたのみに來たお三をつかまえて口も八町手も八町走るさすが車屋の女房の立咄たちばなし
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
可哀相かあいさうあいちやん!よこになつてひとつの花園はなぞののぞむことしか出來できることはまへよりも一そう六ヶしくなつたので、あいちやんはすわんでまたしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その上へ胡座ござしくやらおもちやの茶道具を運ぶやらすつかり来客の仕度をして待つて居り升た。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
この宝の船は種々くさぐさの宝を船に積たる処をかき回文かいぶんの歌を書添へ元日か二日の夜しき寐してしき夢は川へ流す呪事まじないごとなりとぞ、また年越としこしの夜もしくことある故に冬季ともいひたり
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
其だから今夜は斯様こんなことを言出しもしたんだが、まあ、僕に言はせると、あまり君は物をむづしく考へ過ぎて居るやうに思はれるね。其処だよ、僕が君に忠告したいと思ふことは。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
代助はかるはこが、軌道レールうへを、苦もなくすべつてつては、又すべつてかへる迅速な手際てぎはに、軽快の感じを得た。其代り自分とおなみちを容赦なく往来ゆきゝする外濠線そとぼりせんくるまを、常よりは騒々しくにくんだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何程才覚アリテ甲斐/\しくトモ義理ヲ知ラヌ誠ノ無者ヲ人ノ後見トハ成スベカラズト、皆人沙汰シアヘリ、隼人正ハ力ナク唯二人ノ小姓ト手ヲトリくん徒膚足かちはだしニナリ阿部野ヲさしテタドリ行
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
門北お御所のかたに当り一道の火気を発し、甚だ騒々しく候間、これ阪兵への内応と申居り候間、忽に鎮定、その内に伏見の砲声も追々遠く相成り、京軍勝利の様子に相成り候まゝ終夜砲声にぶる事無之これなく
鳥羽伏見の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と三輪さんは大変にむつしくしてしまった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しくば明後日追放つゐはうの場所へいたり對面すべしかならず御府内にて麁相そさうなる儀いたすこと勿れとて下られけるに忠八は思はず眼中がんちうなみだ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さらば我一代を何がための犠牲などこと/″\しくとふ人もあらん、花は散時ちりどきあり月はかくる時あり、わが如きものわが如くして過ぬべき一生なるに、はかなきすねものの呼名よびなをかしうて
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
とりよろこすがりしかば皆一同に惘果あきれはてたるばかりなり時に大岡殿申さるゝは此彦兵衞儀白状は致せしかど其口振くちぶりと云ひ人體じんていと申しうたがしく思ひ外に罪有る者牢死せしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)