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かきみだ
ふりがな文庫
“
掻乱
(
かきみだ
)” の例文
旧字:
掻亂
今朝方、
暁
(
あかつき
)
かけて、
津々
(
しんしん
)
と降り積った雪の上を忍び寄り、狐は竹垣の下の
地
(
じ
)
を掘って
潜込
(
くぐりこ
)
んだものと見え、雪と砂とを前足で
掻乱
(
かきみだ
)
した
狼藉
(
ろうぜき
)
の有様。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
倒れながら
屹
(
きっ
)
とその
面
(
おもて
)
を上げると、翼で群蝶を
掻乱
(
かきみだ
)
して、白い
烟
(
けぶり
)
の立つ中で、鷲は
颯
(
さっ
)
と舞い上るのを、血走った目に
瞶
(
みつ
)
めながら少年は
衝
(
つ
)
と立った。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雪は風を添へて
掻乱
(
かきみだ
)
し掻乱し
降頻
(
ふりしき
)
りつつ、はや日暮れなんとするに、楽き夜の
漸
(
やうや
)
く
来
(
きた
)
れるが
最辱
(
いとかたじけな
)
き唯継の目尻なり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
田圃に薄寒い風が吹いて、野末のここ彼処に、千住あたりの工場の煙が重く
棚引
(
たなび
)
いていた。疲れたお島の心は、
取留
(
とりとめ
)
のない物足りなさに
掻乱
(
かきみだ
)
されていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
しかもその満足と悔恨とは、まるで陰と
日向
(
ひなた
)
のやうに、離れられない
因縁
(
いんねん
)
を背負つて、実はこの四五日以前から、絶えず小心な彼の気分を
掻乱
(
かきみだ
)
してゐたのである。
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
残酷なやうな、
可懐
(
なつか
)
しいやうな、名のつけやうの無い
心地
(
こゝろもち
)
は丑松の胸の中を
掻乱
(
かきみだ
)
した。今——学校の連中は
奈何
(
どう
)
して居るだらう。友達の銀之助は奈何して居るだらう。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
この世から消えて
失
(
なく
)
なりました。僕は全然恋の
奴隷
(
やっこ
)
であったからかの
少女
(
むすめ
)
に死なれて僕の心は
掻乱
(
かきみだ
)
されてたことは非常であった。しかし僕の悲痛は恋の相手の
亡
(
なく
)
なったが為の悲痛である。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
その馬鹿にされたような静けさが、余計私の神経を
掻乱
(
かきみだ
)
すのだ……。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
露地が、
遠目鏡
(
とおめがね
)
を
覗
(
のぞ
)
く
状
(
さま
)
に
扇形
(
おうぎなり
)
に
展
(
ひら
)
けて
視
(
なが
)
められる。湖と、船大工と、幻の天女と、描ける玉章を
掻乱
(
かきみだ
)
すようで、近く
歩
(
あゆみ
)
を入るるには
惜
(
おし
)
いほどだったから……
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さらでも切なき宮が胸は
掻乱
(
かきみだ
)
れて、今は
漸
(
やうや
)
く危きを
懼
(
おそ
)
れざる覚悟も
出
(
い
)
で来て、いつまで草のいつまでかくてあらんや、文は送らんと、この日頃思ひ立ちてけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
さあ、丑松は
畏
(
おそ
)
れず
慄
(
ふる
)
へずに居られなかつた。心はもう底の底までも
掻乱
(
かきみだ
)
されて
了
(
しま
)
つたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
襟
(
えり
)
の返る縞のホワイトシャツの襟元のぼたんをはずして襟飾をつけない事、洋服の上着は手に提げて着ない事、帽子はかぶらぬ事、髪の毛は
櫛
(
くし
)
を入れた事もないように
掻乱
(
かきみだ
)
して置く事
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
到頭
(
たうとう
)
私はソシアル・ダンスと
紅
(
あか
)
い文字で出てゐる、横に長い電燈を見つけることが出来た。往来に面した
磨硝子
(
すりガラス
)
に踊つてゐる人影が
仄
(
ほの
)
かに差して、ヂャヅの音が、町の
静謐
(
せいひつ
)
を
掻乱
(
かきみだ
)
してゐた。
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
然し深い
風趣
(
おもむき
)
に乏しい——起きたり伏たりして居る
波濤
(
なみ
)
のやうな山々は、不安と混雑とより外に何の
感想
(
かんじ
)
をも与へない——それに
対
(
むか
)
へば唯心が
掻乱
(
かきみだ
)
されるばかりである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
と
総身
(
そうしん
)
を
震
(
ふる
)
はして、
小
(
ちひ
)
さな
口
(
くち
)
を
切
(
せつ
)
なさうに
曲
(
ゆが
)
めて
開
(
あ
)
けると、
煽
(
あふ
)
つ
水
(
みづ
)
に
掻乱
(
かきみだ
)
されて
影
(
かげ
)
が
消
(
き
)
えた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
さて
何時
(
いつ
)
までかここに在らんと、主の遺骨を
出
(
いだ
)
せし
辺
(
あたり
)
を拝し、又妻の
屍
(
かばね
)
の
横
(
よこた
)
はりし処を拝して、
心佗
(
こころわびし
)
く立去らんとしたりしに、彼は怪くも
遽
(
にはか
)
に胸の内の
掻乱
(
かきみだ
)
るる心地するとともに
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と、掌をもじゃもじゃと振るのが、枯葉が乱れて、その頂の森を
掻乱
(
かきみだ
)
すように見え
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
尾を地へ着けないで、舞いつつ、飛びつつ、庭中を
翔廻
(
かけまわ
)
りなどもする、やっぱり羽を馴らすらしい。この舞踏が
一斉
(
いっとき
)
に
三組
(
みくみ
)
も
四組
(
よくみ
)
もはじまる事がある。
卯
(
う
)
の花を
掻乱
(
かきみだ
)
し、
萩
(
はぎ
)
の花を散らして狂う。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、耳も
牙
(
きば
)
もない、
毛坊主
(
けぼうず
)
の
円頂
(
まるあたま
)
を、水へ
逆
(
さかさま
)
に
真俯向
(
まうつむ
)
けに成つて、
麻
(
あさ
)
の
法衣
(
ころも
)
のもろ
膚
(
はだ
)
脱いだ両手両脇へ、ざぶ/\と水を掛ける。——
恁
(
かか
)
る
霜夜
(
しもよ
)
に、
掻乱
(
かきみだ
)
す水は、氷の上を
稲妻
(
いなずま
)
が走るかと疑はれる。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
掻
漢検準1級
部首:⼿
11画
乱
常用漢字
小6
部首:⼄
7画
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