招聘しょうへい)” の例文
二十年前大学の招聘しょうへいに応じてドイツを立つ時にも、先生の気性を知っている友人は一人ひとり停車場ステーションへ送りに来なかったという話である。
ケーベル先生の告別 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
招聘しょうへいして一儲けするんだから資金を貸せだの、困ってる劇団があるから、金を出してやれだの——この頃はひどく連珠れんじゅに凝りましてね
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
東京帝国ていこく大学の招聘しょうへいに応じて、松江まつえ熊本くまもとの地を去ったことも、同じくヘルンの身にとっては、愛する妻への献身的けんしんてき犠牲ぎせいだった。
この財政の困難ということが、レーリーをしてケンブリッジの教授としての招聘しょうへいに応じさせた主要な原因であったと云われている。
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
松代藩では、それより数年前に、家老の矢沢監物けんもつの周旋で、初代水心子すいしんし正秀の直門じきもん、荘司箕兵衛直胤を、かなり高禄で、招聘しょうへいしていた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ケートは富士男、ガーネット、イルコックらの父母から、しきりに永久客分として招聘しょうへいせられたが、かの女はいずれにもおうじなかった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
自分の所有物を処分するにも遠慮がある。その都度これでは困るとき立てられた心持になって、東京から水力電気の専門家を招聘しょうへいする。
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そして亜留然丁アルゼンチンからの招聘しょうへいで私から引き受けたこの仕事が済み次第ブエノスアイレスへ赴くといったあの時の探偵の言葉をも想い出して
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
村住居はしても、会堂の牧師になる事を私が御免蒙ったので、信者の人々は昔馴染むかしなじみの下曾根さんをあらためて招聘しょうへいしたのでした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
モスクワから招聘しょうへいされた舞踊の師匠が踊りの振り付けをした同家の家庭劇場で、彼女もいっしょに踊ったその踊り方であった。
当時我東京大学で先生を招聘しょうへいしたいと云うたので、先生には直ぐに夫れを承諾せられ一度米国へ帰り家族を連れて直ぐに又来られたのである。
当時我東京大学で先生を招聘しょうへいしたいと云うたので、先生には直ぐに夫れを承諾せられ一度米国へ帰り家族を連れて直ぐに又来られたのである。
もとからこの山腹にあった県の療養所を増築し、いまの田島博士を招聘しょうへいして、ここに、物資にたよらぬ独自の結核療養所が出来たというわけなのだ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
各工場の職長に日本一の技術者を招聘しょうへいしたいという私のかねての宿望を実現することになり、二月初旬には日本菓子部に荒井公平、洋菓子部に高相鉄蔵
わが国でも改造社の山本実彦やまもとさねひこ氏が京都帝国大学の西田教授と相談して教授招聘しょうへいのことを決定し、私にもこれを話されたので、私も大いに賛成したのでした。
今年の正月には、朝日新聞の招聘しょうへいで、人造人間ロボットレマルク君が独逸ドイツから、はるばるやって来て、みなさんの前に、円満な顔をニコニコさせて御挨拶ごあいさつがあった。
人造物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一時日本内地工人を招聘しょうへいして指導を受けた事があるそうですが、結果においては内地の方がまけで、在来のものがずっと強く、そしてずっとすぐれている。
台湾の民芸について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
菟道の王が百済くだら王仁わに招聘しょうへいして学ばせられたのがはじめでありますから、この御兄弟の皇子の御心こそ、そのまま中国の聖人の精神ともいってよいでしょう。
○明治二十三年初めて議会の開かれた時分にはいずこの学校にも官省にも西洋人が教師また顧問こもんとして招聘しょうへいされていた。時の人が御雇おやとい教師と言ったものである。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こちらで招聘しょうへいして十分才能を発揮させました、ここにはそうしたあらゆる方面の学者やその子孫がいます。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
知人を介して、マニラの市立病院から招聘しょうへいされた。心機一転には打つてつけの申出だつたが、少し考へてからきつぱり断わつた。彼は新たな別の野心に燃えてゐたのだ。
地獄 (新字旧仮名) / 神西清(著)
トスカニーニは一九二八、九年頃ニューヨーク交響楽団とニューヨーク・フィルハーモニーとが合併の後、その正指揮者として招聘しょうへいされ、つい最近までこの楽団を指揮した。
そうすると本人もツイその気になって、折角せっかくやり掛けた専門の学問を打捨ててしまい、ノコノコとその招聘しょうへいに応じて、事務官とか、教育家とかいう者になってしまうのである。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
歌舞伎座でも今度かれを招聘しょうへいすることになったのであろうが、ある意味においては自分の敵ともいうべき歌舞伎座の招きに応じたのは、敵の軍門に降伏したような形にも見える。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鎌倉に禅寺を興した北条時頼が最初に招聘しょうへいしようとしたのもまた彼であった。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
紅葉が読売の待遇に不平である内情も聞込んでいたので、そんなら黒岩と直接談合してからと、抱一と同道して黒岩を訪問し、精しく招聘しょうへいの条件を相談してから改めて紅葉に会見を申込んだ。
それから、父が死ぬ前「もし窯が出来てうまくいったら、秋塘と竜山りゅうざんとを招聘しょうへいしたい」と口癖のように、褒めていた石野いしの竜山のことを思い出して、裏通りの小さい店を探して行ったこともあった。
九谷焼 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「それでは、わたしの招聘しょうへいのことはどうなっているんです?」
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
ラビノフから電報で招聘しょうへいされました。
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
急使霧島六弥が仙石家の客分たる稀世の名剣客を招聘しょうへいして来たと見える——京極丹後守の前には汗みどろになった霧島六弥が復命をしていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先生は昨年の春、南米ブラジルの招聘しょうへいにより、御令息と一緒に彼の地へお出でになり、つい先だって研究を果たしてめでたく御帰朝になったのであります。
寄宿学校の教授に招聘しょうへいする中等教師のことや、まだカチェリーナ自身が学校時代にフランス語を習ったマンゴーという尊敬すべきフランスの老人のことや
ついにそれが果されるに至ったのは、偶々たまたま沖縄県の学務部長に赴任された山口泉氏からの招聘しょうへいがあったからによるのであります。私は心をおどらせて海を渡りました。
沖縄の思い出 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その間にロンドン大学からの招聘しょうへいを受けたり、ずっと後には王立協会の会長にも推薦されましたが、すべてそれらを断って、もっぱら王立研究所のために尽したのでした。
マイケル・ファラデイ (新字新仮名) / 石原純(著)
徳川幕府が仏蘭西フランスの士官を招聘しょうへいして練習させた歩兵の服装——陣笠じんがさ筒袖つつそで打割羽織ぶっさきばおり、それに昔のままの大小をさした服装いでたちは、純粋の洋服となった今日の軍服よりも
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こしくに灌頂かんじょうの戒師として招聘しょうへいされ、百日余り御逗留なさいましたが、その国から十二、三歳ぐらいの童子をつれておかえりになり、身のまわりの世話などさせられました。
はやく適当の日本人を招聘しょうへいして、大学相当の講義を開かなくっては、学問の最高府たる大学も昔の寺子屋同然のありさまになって、煉瓦石れんがせきのミイラと選ぶところがないようになる。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
片田舎かたいなかに定住している老詩人が、所謂いわゆる日本ルネサンスのとき到って脚光を浴び、その地方の教育会の招聘しょうへいを受け、男女同権と題して試みたところの不思議な講演の速記録である。
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
朝日新聞が独逸から招聘しょうへいしたレマルク君は、日本に初めて来た人造人間であるが、一番美しい容姿を持っている。テレボックスの如きは、これに反して、最もグロテスクな姿をしている。
人造物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一八四一年プロシア王フリードリッヒ・ウィルヘルム四世は、ベルリンの文化を飾るために芸術大総合そうごうのアカデミーを設立せんと企て、音楽部の主任としてメンデルスゾーンを招聘しょうへいした。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
ある日田舎の人が二人青山高樹町のかれ僑居きょうきょに音ずれた。一人は石山氏、今一人は同教会執事角田新五郎氏であった。彼は牧師に招聘しょうへいされたのである。牧師は御免を蒙る、然し村住居はしたい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ベルンの大学は彼を招かんとして躊躇ちゅうちょしていた。やっと彼の椅子が出来ると間もなく、チューリヒの大学の方で理論物理学の助教授として招聘しょうへいした。これが一九〇九年、彼が三十一歳の時である。
アインシュタイン (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
チャーチ博士はそれをたいへん残念がって、加奈陀カナダの北極研究所長であり、かつ国際雪氷委員会の事務局長であるベアード博士とともに、今度私をアメリカと加奈陀とへ招聘しょうへいする世話をしてくれた。
ネバダ通信 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
日本から招聘しょうへいせられた工学者で、この島へきてからもはや、二十年の月日はすぎた、かれは温厚おんこうのひとでかつ義侠心ぎきょうしんが強いところから、日本を代表する名誉めいよ紳士しんしとして、一般の尊敬そんけいをうけている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「その人は私の招聘しょうへいにかかわりがあったんです」
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
京極丹州の切なる招聘しょうへいをも退けて、飄然とここへ相変らず粗服の旅装を現わしたのであるが、そもこの鐘巻自斎の剣法とは、如何なる奥底のものであろうか
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これ改制の第三である。武術の師を招聘しょうへいして大に武を講じた。これ改制の第四である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かつて門司の労働者が三井に対してストライキをやったときに、相生さんが進んでその衝に当ったため、手際てぎわよく解決が着いたとか云うので、満鉄から仲仕の親分として招聘しょうへいされたようなものである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼が、その忠利に招聘しょうへいされて熊本へ来た年の寛永十七年は、島原の乱後わずか三年目であった。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葉松石は同じころ、最初の外国語学校教授に招聘しょうへいせられた人で、一度帰国した後、再び来遊して、大阪で病死した。遺稿『煮薬漫抄』の初めに詩人小野湖山おのこざんのつくった略伝が載っている。
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)