扉口とぐち)” の例文
やがて間もなく、真蒼まっさおになった女房が番台からすそみだして飛び降りて来るなり、由蔵の駆けて入った釜場の扉口とぐち甲高かんだかい叫びを発した。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そう思うと私はふと早く家へ帰って見ようと、変な気持になった。そこで私は扉口とぐちのところへ歩いて行って、口笛でフラテを呼ぶ。
そうって、扉口とぐち拍子ひょうしに、ドシーン! ととり石臼いしうすあたまうえおとしたので、おかあさんはぺしゃんこにつぶれてしまいました。
右側には身体のわりに大きな声をだす歴史の先生、人のよい図画の先生、一番おわりには扉口とぐちに近く体操の先生の少尉しょういがひかえている。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
今度こそ本当に未亡人になった女と、丸辰の親爺、それから最初酒場の扉口とぐちに安吉を見たマドロス達は、その場で一応の取調べを受けた。
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
そして、令嬢らと談笑しつづけ、なおいつまでも別れかねて、扉口とぐちで何度も挨拶あいさつをかわしながら、ついに自分の室のほうへ上がってきた。
ここの扉口とぐちは回転窓もないし、下に隙もない。けれども、糸で鍵を操る術はヴァンダインの『ケンネル殺人事件』だけでつきちゃいないよ。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ルパンは大急ぎで階段を降りて、その扉口とぐちへ近づいた。は閉じられてある。左手ゆんでを見ると例の下のはめ板をはずした穴があいているらしい。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
ばりっと、にかわぐような音がした。犬の顔は、もう少しで二つになるところでぶらついていた。それを、ぶーんと扉口とぐちから外へ投げやって
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はね起きて、どこかに出口はないかと、手探りではい廻ると、幸い扉口とぐちのようなものを探し当てた。そこで静かにを明けて、暗い廊下へ出た。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
其処そこに幾人かの工人が鋳上いあがつた翁の製作の何かの銅像を運んで来たので、翁は一寸ちよつと立つて扉口とぐちの方へかれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その一団のかげになっている扉口とぐちごしには、明るい部屋が見えて、そこの家具は空色そらいろずくめだった。
接吻 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
図書館の扉口とぐちに近い、目録カタログはこの並んでいる所へ、小倉こくらの袴に黒木綿くろもめん紋附もんつきをひっかけた、背の低い角帽が一人、無精ぶしょうらしく懐手ふところでをしながら、ふらりと外からはいって来た。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ヘンリー——ローランドが扉口とぐちに来てゐるぞ。俺は彼女に対する俺の全部の愛情を譲つて、貴様を祝福せずには居られないんだ。今の君の働きは充分、それに価するんだ。」
サクラの花びら (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
扉口とぐちに立った女はこう張りのある声をかけて扉に片手をもたせながら、胸にかけた小さい金の十字架がぶらと前にたれるほど頭をかがめて薄暗い小屋の中の方をのぞくように見た。
扉口とぐちの外からは、罵声ばせいと足踏みとが聞こえた。「燃やしちゃうぞ!」と聞こえた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
彼女は扉口とぐちに立停った。そしてウィル——彼女の息子のウィルがエフィの上に蔽いかぶさる様に屈んで、彼女の喉を両手で堅く絞めつけているのを見た。エフィの顔はすさまじく紫色に変っていた。
目撃者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
患者はそう言うと、扉口とぐちの方へくるりと向き直った。
そのために、嫌悪けんおと愛情と嫉妬しっとと熱い憐憫れんびんとの名状しがたい印象を心に受けた。彼女はその小さな客間の扉口とぐちまで送ってきた。
けれどもやがて女は、ものも云わずに、扉口とぐちのほうへけだして行った。人々もその後から雪崩なだれを打って押しかけた。
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
それと見るより拳銃ピストル片手に龍介君は扉口とぐちに突進した。しかしそこにも厳重に鎧扉よろいどが下りていたので、外へ出るまでにはたっぷり二分はかかっていた。
危し‼ 潜水艦の秘密 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
二回往復した四条よすじの跡が印されていて、それ以外には、扉口とぐちから現在人形のいる場所に続いている一条ひとすじのみだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
尋有じんゆうはいつまでもからだのふるえがとまらなかった。脚ぶしをがくがくさせて、廻廊の扉口とぐちから大床のうちをのぞいた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、女房はその扉口とぐちに近く、警官や刑事らしい人々が数人、ひどく難しい表情で突立っているのを認めると、何故か心怯こころおびえてゆく気にはなれなかった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
後列の方から扉口とぐちへくずれだした、いとしめやかな足取り、葬式のごとく悲しげに一同は講堂をでた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
公爵夫人は翁の製作にのぼつた日本女優花子の噂をした。翁は僕等の帰るに臨んで三葉の自身の写真に署名して贈られ、さうして扉口とぐちに立つて一一いちいち僕等の手を握られた。(六月十九日)
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
が、さいわい、その時開会を知らせるベルが鳴って、会場との境のがようやく両方へ開かれた。そうして待ちくたびれた聴衆が、まるでうしおの引くように、ぞろぞろその扉口とぐちへ流れ始めた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ルパンは再び客間に帰って扉口とぐちを調べにかかったが一目見て愕然として戦慄した。一目瞭然、ドアの羽目板は六枚の小板を合せたものであるが、その一番左手ゆんでの板が変な具合にはまっておる。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
扉口とぐちへ一々ステッキを突っ込んではこう言うのである。
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして彼はその扉口とぐちをガラリとあけた。
そこで蜂須賀巡査は意気込んで馳けだし、勝手口のをあけて屋敷の中へ這入って行った。が、やがてその扉口とぐちから顔を出すと、勝誇ったように云った。
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
主人は、あから顔を全く恐怖で包んだまんま扉口とぐちの前列に立っていた。女房はというと、投げ出した蒲団の後に眼をえたまま口を開けて立ちつくしている。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
マンハイムは窓をめた。訪問の女優は恐れて、逃げ出そうとした。しかしクリストフが扉口とぐちをふさいでいた。
猪子伴作いのこばんさくは、次にこうわめきながら、駕籠の扉口とぐち土足どそくではげしくけとばした。と、あしもとが、不意に軽くすくわれたので、伴作はあッといってうしろへよろめく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
扉口とぐちは今入ったのが一つしかなく、左手には、横庭に開いた二段鎧窓が二つ、右手の壁には、降矢木家の紋章を中央に刻み込んである大きな壁炉かべろが、数十個の石材で畳み上げられてあった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
とたんに、扉口とぐちへ人があらわれて叫んだ。
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
とたんに、部屋の扉口とぐちの下で、ぺしゃんと雑巾ぞうきんでも叩きつけたような音がした。そのままかと見ていると、彼女は跳ね返っていた。泣きもしない。痛い顔もしない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
びしく待ちあぐんだ後、ついに汽車が現われた。クリストフは車室のどの扉口とぐちかに、ロールヘンの精悍せいかんな顔つきを待ち受けた。彼女が約束を守ることを確信していたのである。
小姓の虎之助と市松のふたりが、彼の佩刀はかせをささげて、扉口とぐちのそとにかしこまっていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
エマニュエルは一言もいわずに扉口とぐちまで送ってきた。彼の足取りは彼が不具なことを示していた。彼はそれをみずから知っていたし、自負の念からそれを気にかけない様子をしていた。
呂布は、われを忘れて、臥房のすぐ扉口とぐちの外まで、近づいて行った。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何濤は、むかっとして、そこの扉口とぐちから呶鳴りつけた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、四、五人の手下が、扉口とぐちから首をだして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御方は開けた扉口とぐちから半身見せて
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)