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とぐち
ふりがな文庫
“
扉口
(
とぐち
)” の例文
やがて間もなく、
真蒼
(
まっさお
)
になった女房が番台から
裾
(
すそ
)
を
乱
(
みだ
)
して飛び降りて来るなり、由蔵の駆けて入った釜場の
扉口
(
とぐち
)
で
甲高
(
かんだか
)
い叫びを発した。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そう思うと私はふと早く家へ帰って見ようと、変な気持になった。そこで私は
扉口
(
とぐち
)
のところへ歩いて行って、口笛でフラテを呼ぶ。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
そう
言
(
い
)
って、
扉口
(
とぐち
)
を
出
(
で
)
る
拍子
(
ひょうし
)
に、ドシーン! と
鳥
(
とり
)
が
石臼
(
いしうす
)
を
頭
(
あたま
)
の
上
(
うえ
)
へ
落
(
おと
)
したので、おかあさんはぺしゃんこに
潰
(
つぶ
)
れてしまいました。
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
右側には身体のわりに大きな声をだす歴史の先生、人のよい図画の先生、一番おわりには
扉口
(
とぐち
)
に近く体操の先生の
少尉
(
しょうい
)
がひかえている。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
今度こそ本当に未亡人になった女と、丸辰の親爺、それから最初酒場の
扉口
(
とぐち
)
に安吉を見たマドロス達は、その場で一応の取調べを受けた。
動かぬ鯨群
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
▼ もっと見る
そして、令嬢らと談笑しつづけ、なおいつまでも別れかねて、
扉口
(
とぐち
)
で何度も
挨拶
(
あいさつ
)
をかわしながら、ついに自分の室のほうへ上がってきた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ここの
扉口
(
とぐち
)
は回転窓もないし、下に隙もない。けれども、糸で鍵を操る術はヴァンダインの『ケンネル殺人事件』だけでつきちゃいないよ。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ルパンは大急ぎで階段を降りて、その
扉口
(
とぐち
)
へ近づいた。
扉
(
と
)
は閉じられてある。
左手
(
ゆんで
)
を見ると例の下のはめ板をはずした穴があいているらしい。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
ばりっと、
膠
(
にかわ
)
を
剥
(
は
)
ぐような音がした。犬の顔は、もう少しで二つになるところでぶらついていた。それを、ぶーんと
扉口
(
とぐち
)
から外へ投げやって
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はね起きて、どこかに出口はないかと、手探りではい廻ると、幸い
扉口
(
とぐち
)
のようなものを探し当てた。そこで静かに
扉
(
と
)
を明けて、暗い廊下へ出た。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
其処
(
そこ
)
に幾人かの工人が
鋳上
(
いあが
)
つた翁の製作の何かの銅像を運んで来たので、翁は
一寸
(
ちよつと
)
立つて
扉口
(
とぐち
)
の方へ
行
(
ゆ
)
かれた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
その一団のかげになっている
扉口
(
とぐち
)
ごしには、明るい部屋が見えて、そこの家具は
空色
(
そらいろ
)
ずくめだった。
接吻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
図書館の
扉口
(
とぐち
)
に近い、
目録
(
カタログ
)
の
函
(
はこ
)
の並んでいる所へ、
小倉
(
こくら
)
の袴に
黒木綿
(
くろもめん
)
の
紋附
(
もんつき
)
をひっかけた、背の低い角帽が一人、
無精
(
ぶしょう
)
らしく
懐手
(
ふところで
)
をしながら、ふらりと外からはいって来た。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ヘンリー——ローランドが
扉口
(
とぐち
)
に来てゐるぞ。俺は彼女に対する俺の全部の愛情を譲つて、貴様を祝福せずには居られないんだ。今の君の働きは充分、それに価するんだ。」
サクラの花びら
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
扉口
(
とぐち
)
に立った女はこう張りのある声をかけて扉に片手をもたせながら、胸にかけた小さい金の十字架がぶらと前にたれるほど頭をかがめて薄暗い小屋の中の方をのぞくように見た。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
扉口
(
とぐち
)
の外からは、
罵声
(
ばせい
)
と足踏みとが聞こえた。「燃やしちゃうぞ!」と聞こえた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
彼女は
扉口
(
とぐち
)
に立停った。そしてウィル——彼女の息子のウィルがエフィの上に蔽いかぶさる様に屈んで、彼女の喉を両手で堅く絞めつけているのを見た。エフィの顔は
凄
(
すさま
)
じく紫色に変っていた。
目撃者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
患者はそう言うと、
扉口
(
とぐち
)
の方へくるりと向き直った。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
そのために、
嫌悪
(
けんお
)
と愛情と
嫉妬
(
しっと
)
と熱い
憐憫
(
れんびん
)
との名状しがたい印象を心に受けた。彼女はその小さな客間の
扉口
(
とぐち
)
まで送ってきた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
けれどもやがて女は、ものも云わずに、
扉口
(
とぐち
)
のほうへ
馳
(
か
)
けだして行った。人々もその後から
雪崩
(
なだれ
)
を打って押しかけた。
動かぬ鯨群
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
それと見るより
拳銃
(
ピストル
)
片手に龍介君は
扉口
(
とぐち
)
に突進した。しかしそこにも厳重に
鎧扉
(
よろいど
)
が下りていたので、外へ出るまでにはたっぷり二分はかかっていた。
危し‼ 潜水艦の秘密
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
二回往復した
四条
(
よすじ
)
の跡が印されていて、それ以外には、
扉口
(
とぐち
)
から現在人形のいる場所に続いている
一条
(
ひとすじ
)
のみだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
尋有
(
じんゆう
)
はいつまでもからだの
顫
(
ふる
)
えがとまらなかった。脚ぶしをがくがくさせて、廻廊の
扉口
(
とぐち
)
から大床のうちを
覗
(
のぞ
)
いた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、女房はその
扉口
(
とぐち
)
に近く、警官や刑事らしい人々が数人、ひどく難しい表情で突立っているのを認めると、何故か
心怯
(
こころおび
)
えてゆく気にはなれなかった。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
後列の方から
扉口
(
とぐち
)
へくずれだした、いとしめやかな足取り、葬式のごとく悲しげに一同は講堂をでた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
公爵夫人は翁の製作に
上
(
のぼ
)
つた日本女優花子の噂をした。翁は僕等の帰るに臨んで三葉の自身の写真に署名して贈られ、
而
(
さう
)
して
扉口
(
とぐち
)
に立つて
一一
(
いちいち
)
僕等の手を握られた。(六月十九日)
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
が、
幸
(
さいわい
)
、その時開会を知らせるベルが鳴って、会場との境の
扉
(
と
)
がようやく両方へ開かれた。そうして待ちくたびれた聴衆が、まるで
潮
(
うしお
)
の引くように、ぞろぞろその
扉口
(
とぐち
)
へ流れ始めた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ルパンは再び客間に帰って
扉口
(
とぐち
)
を調べにかかったが一目見て愕然として戦慄した。一目瞭然、
扉
(
ドア
)
の羽目板は六枚の小板を合せたものであるが、その
一番左手
(
ゆんで
)
の板が変な具合に
嵌
(
はま
)
っておる。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
扉口
(
とぐち
)
へ一々ステッキを突っ込んではこう言うのである。
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
そして彼はその
扉口
(
とぐち
)
をガラリとあけた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
そこで蜂須賀巡査は意気込んで馳けだし、勝手口の
扉
(
と
)
をあけて屋敷の中へ這入って行った。が、やがてその
扉口
(
とぐち
)
から顔を出すと、勝誇ったように云った。
石塀幽霊
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
主人は、
赭
(
あか
)
ら顔を全く恐怖で包んだまんま
扉口
(
とぐち
)
の前列に立っていた。女房はというと、投げ出した蒲団の後に眼を
据
(
す
)
えたまま口を開けて立ちつくしている。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
マンハイムは窓を
閉
(
し
)
めた。訪問の女優は恐れて、逃げ出そうとした。しかしクリストフが
扉口
(
とぐち
)
をふさいでいた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
猪子伴作
(
いのこばんさく
)
は、次にこうわめきながら、駕籠の
扉口
(
とぐち
)
を
土足
(
どそく
)
ではげしくけとばした。と、
足
(
あし
)
もとが、不意に軽くすくわれたので、伴作はあッといってうしろへよろめく。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
扉口
(
とぐち
)
は今入ったのが一つしかなく、左手には、横庭に開いた二段鎧窓が二つ、右手の壁には、降矢木家の紋章を中央に刻み込んである大きな
壁炉
(
かべろ
)
が、数十個の石材で畳み上げられてあった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
とたんに、
扉口
(
とぐち
)
へ人があらわれて叫んだ。
黒襟飾組の魔手
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
とたんに、部屋の
扉口
(
とぐち
)
の下で、ぺしゃんと
濡
(
ぬ
)
れ
雑巾
(
ぞうきん
)
でも叩きつけたような音がした。そのままかと見ていると、彼女は跳ね返っていた。泣きもしない。痛い顔もしない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
侘
(
わ
)
びしく待ちあぐんだ後、ついに汽車が現われた。クリストフは車室のどの
扉口
(
とぐち
)
かに、ロールヘンの
精悍
(
せいかん
)
な顔つきを待ち受けた。彼女が約束を守ることを確信していたのである。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
小姓の虎之助と市松のふたりが、彼の
佩刀
(
はかせ
)
をささげて、
扉口
(
とぐち
)
のそとに
畏
(
かしこ
)
まっていた。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
エマニュエルは一言もいわずに
扉口
(
とぐち
)
まで送ってきた。彼の足取りは彼が不具なことを示していた。彼はそれをみずから知っていたし、自負の念からそれを気にかけない様子をしていた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
呂布は、われを忘れて、臥房のすぐ
扉口
(
とぐち
)
の外まで、近づいて行った。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何濤は、むかっとして、そこの
扉口
(
とぐち
)
から呶鳴りつけた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると、四、五人の手下が、
扉口
(
とぐち
)
から首をだして
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御方は開けた
扉口
(
とぐち
)
から半身見せて
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
扉
常用漢字
中学
部首:⼾
12画
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
“扉”で始まる語句
扉
扉船
扉前
扉際
扉々
扉代
扉無
扉筏
扉紙
扉門