ほれ)” の例文
まことを云えば御前の所行しょぎょういわくあってと察したは年の功、チョンまげつけて居てもすいじゃ、まことはおれもお前のお辰にほれたもく惚た
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ほれるというものは妙なもので、小増が煙草を一ぷく吸付けてお呑みなはいと云ったり、また帰りがけに脊中せなかをぽんと叩いて
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ほれっぽくて、物の道理もわからないのが、此時代の江戸の市井に、幾多の物語と伝説とを作ったことは事実で、芝居と絵本と、みだらな話で、娘をこう教育した
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「俺のは刹那的一夫一婦主義だ」と云っていたが、つまり極端にほれっぽく、飽きっぽいたちなのである。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かねさんすつかりほれられつちやつた」と風呂桶ふろをけそばからいつた。おつぎはかほあかくしてあわたゞしく手桶てをけつてげた。一ぱいんだ手桶てをけみづすこ波立なみだつてこぼれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
小さな裸の児供は土から生へてゐる一本の草にそつと耳を当て地の底の唄ひ声に聞きほれた。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
その中で一人のちんちくりんな男が、音楽に合せて一人よがりな唄を歌っています。それをぼんやり聞きほれているうちに又いつかそれが教壇に立った教師に変っているのです。
歪んだ夢 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
悪たれ店子たなこの上に店賃は取れず、せたうわばみでも地内に飼って置くようなもんですから、もうくにも追出しそうなものを、変ったおやじで、新造がほれるようじゃ見処があるなんてね
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれど家の中にいるものの耳には、この小川の囁きも水車の音も聞えない。ただ、歌い手の歌の声に聞きほれているばかりだ。或者は懐手ふところでまま聞いている。或者は頬被ほおかむりをした儘聞いている。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いはんやほかの芸事とはちがひ心中物しんじゅうものばかりの薗八節そのはちぶしけいこ致させほれねばならぬ殿ぶりに宵の口説くぜつをあしたまで持越し髪のつやぬけてなど申すところはとりわけじょうをもたせて語るやう日頃註文ちゅうもん致を
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
実にその志操こゝろざしに傳次やなおほれるじゃアねえかとういう旦那の心持で、誠にもっともだからそう云う事ならせめて盃の一つも献酬とりやりして、眤近ちかづきに成りたいと云うので
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小さな裸の児供は土から生へてゐる一本の草にそつと耳を当て地の底の唄ひ声に聞きほれた。
土の中の馬賊の歌 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
まず第一に何を可愛かわゆがってたれしたうのやら、調べて見ると余程おかしな者、爺のかんがえでは恐らく女におぼれる男も男にくらむ女もなし、皆々手製の影法師にほれるらしい、普通なみなみの人の恋の初幕しょまく
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ほれた同士が二人きりでほかに誰もいないのでげすから、たまには痴話や口説くぜつで夜更しをして思わぬ朝寝もしましょうし、また雨なんかゞ降るときはまだ夜が明けないと存じて
桃色と幻青あおとの軽羅うすものの女を、好んで描く女画家マリー・ローランサンにほれてゐることだ。
梅桃桜菊色々の花綴衣はなつづりぎぬ麗しく引纏ひきまとわせたる全身像ほれた眼からは観音の化身けしんかとも見ればたれに遠慮なく後光輪ごこうまでつけて、天女のごとく見事に出来上り、われながら満足して眷々ほれぼれとながめくらせしが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此の他にはまるで方なしのとこにはかれませんが、あゝい事が有りますぜ、旦那が一番贔屓にしてくれた人という者は何で美代吉さんです、是が運の善い人で、自分がほれた男に請出されて
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は彼様あんな煩いなどが有って、お前さんが無かったら大変な所を、信実しんじつに介抱して下すったので、お前さんの信実は見抜いたから、その信実には本当に感心してほれる……と云う訳じゃア無いが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それもお前にほれてるのだから何うかして夫婦にしたいねえ
旦「君にほれられちゃア有難てえフヽヽ」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)