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悪罵
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あくば
ふりがな文庫
“
悪罵
(
あくば
)” の例文
旧字:
惡罵
けれど、今、戸外に呶鳴っている法師たちの
悪罵
(
あくば
)
には、時こそよけれと、いい機会をつかまえて
襲
(
よ
)
せてきたらしい
気色
(
けしき
)
が濃厚である。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こちら側の音頭とりは、いふまでもなく河合だつた。彼はさうした
悪罵
(
あくば
)
の応酬にかけて、じつに明敏な頭脳の持主だつたのである。
少年
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
悪罵
(
あくば
)
、
奔走
(
ほんそう
)
、
駈引
(
かけひ
)
きは、そののち永く、ごたついて尾を引き、人の心を、生涯とりかえしつかぬ程に
歪曲
(
わいきょく
)
させてしまうものであります。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そこに並んでいるなまめかしい令嬢たちは割かた
朴訥
(
ぼくとつ
)
で飾り気がないから、そんな客には遠慮ぬきで
嘲弄
(
ちょうろう
)
と
悪罵
(
あくば
)
をあびせかける。
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さんざんな
悪罵
(
あくば
)
の中にノックはおわった。千三はいくどもいくども滑ったので
身体
(
からだ
)
はどろだらけになった、その他の人々も同様であった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
▼ もっと見る
ションボリ帰って行くガラッ八の後ろ姿へ、源吉は思う存分の
悪罵
(
あくば
)
を浴びせました。平次にはよっぽど
怨
(
うら
)
みがある様子です。
銭形平次捕物控:030 くるい咲き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
次に口を開いて
悪罵
(
あくば
)
を浴せかけた。クリストフは自分の仕業にぞっとして、
椅子
(
いす
)
の上に堅くなり、雨と降ってくる
拳固
(
げんこ
)
を受けても感じなかった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
翁はそれを聞いて、もし
悪罵
(
あくば
)
の声でも放って呉れるなら不思議に牽かれる娘の女神への恋々の情を薄めてでも貰えるようにさえ感ずるのだった。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
見よ彼は三友のすべての
悪罵
(
あくば
)
と無情とを
赦
(
ゆる
)
して、彼らのために祈るに至った。この大なる愛はいかにして生れしぞ。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
「ああ、それ以上の
悪罵
(
あくば
)
に妾が堪えられると思っているのかい。約束の五分間以上
喋
(
しゃべ
)
らせるような甘い妾ではないよ。お前さんはよくもこの妾の邪魔をしたネ」
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「馬鹿!」とか、「詐欺!」とか云う
悪罵
(
あくば
)
の声は、だんだん観客席の隅々から頻発されるようであった。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そうした犬を両親にしてパトラッシュは生れました。彼は
悪罵
(
あくば
)
と鞭とに育てられ
一疋前
(
いっぴきまえ
)
の犬となる前にすでに荷車を挽く
擦傷
(
すりきず
)
のいたさと、
頸環
(
くびわ
)
の苦しみを味いました。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
百姓達から
悪罵
(
あくば
)
を浴びせられ、うしろから小突かれながら、良寛さんは村役人の家にひつぱられて来た。その間、百姓が何を
訊
(
き
)
いても良寛さんは
唖
(
おし
)
のやうに黙つてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
と、米友が思わずじだんだを踏んで、こういって怒鳴りつけてみましたけれど、その
悪罵
(
あくば
)
には毒を含んでいませんでした。それのみか、その眼に何となしに露を帯びている。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
わしは昔の哲学者達が、女性に加えた
悪罵
(
あくば
)
の数々を、長々と弁じ立てるのが常であった。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
群集が彼らに
悪罵
(
あくば
)
の声をかけ始めた。それは仮装の者らに対する群集の愛撫である。今言葉をかわしたふたりも、仲間の者らといっしょに、衆人に立ち向かわなければならなかった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その「男たらし」である彼女が、わたしの
偶像
(
ぐうぞう
)
であり、わたしの神とあがめる存在なのだ! その
悪罵
(
あくば
)
が、わたしの胸を焼き
焦
(
こ
)
がした。わたしはそれから
逃
(
のが
)
れようと、枕に顔を
埋
(
う
)
めた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
その非私なる者の花鳥諷詠に
悪罵
(
あくば
)
を加えることもこれまた当然な事である。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
二言目には家風を
楯
(
たて
)
に取り、自分の旧式な思想を無上の権威として嫁の個性を
蹂躙
(
じゅうりん
)
し圧倒することを何とも思わず、聞き苦しい干渉と邪推と、
悪罵
(
あくば
)
と、あてこすりとを以て嫁を
苛
(
いじ
)
めて悔いぬような
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
山男! こういう
悪罵
(
あくば
)
を投げつけられた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
やり場のない
鬱憤
(
うっぷん
)
も、気のゆるせる
内輪
(
うちわ
)
の家臣を前に、酒気を加えて洩れ始めると、口ぎたない
悪罵
(
あくば
)
にまでなって、止まるなき有様だ。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おれが老いぼれの腰抜けなら、きさまなんぞは、その、あの」彼はもっとも痛烈な
悪罵
(
あくば
)
を思いだそうとしてあせる
超過勤務
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「コーラ、
此
(
こ
)
の
無礼者奴
(
ぶれいものめ
)
。警察と知って
悪罵
(
あくば
)
をするとは、捨てて置けぬ。うぬ、今に後悔するなッ」
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
八五郎に縄尻を取られながら、文六は縁側の上の平次に
悪罵
(
あくば
)
の限りを浴びせるのでした。
銭形平次捕物控:119 白紙の恐怖
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼女のしどろもどろの
悪罵
(
あくば
)
の言葉の中からも、わたくしが汚い着物の下に美衣を
着覆
(
ちゃくふく
)
しているのをこの女は嗅ぎ付け、それによって嫉妬の
火
(
ほ
)
むらを一層高めているのを知りました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
孤高
狷介
(
けんかい
)
のこの四十歳の天才は、憤ってしまって、東京朝日新聞へ一文を寄せ、日本人の耳は
驢馬
(
ろば
)
の耳だ、なんて
悪罵
(
あくば
)
したものであるが、日本の聴衆へのそんな罵言の後には、かならず
ダス・ゲマイネ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そういう時クリストフは、
嫌悪
(
けんお
)
の眼つきを彼に注ぎ、冷酷な
悪罵
(
あくば
)
を彼に浴びせかけた。ハミルトンの自尊心はそれに傷つけられた。ピアノの演奏会も
喧嘩
(
けんか
)
に終わることがしばしばだった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その
喧
(
やかま
)
しい
悪罵
(
あくば
)
の声は、すぐ眼の前の往来のまんなかで起りました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私はこっそり頭の中で、こんな
悪罵
(
あくば
)
を浴びせて見ました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
『何の
意趣
(
いしゅ
)
があって、他家へ嫁がせる娘にあらぬ
悪罵
(
あくば
)
を浴びせたのみか、娘の部屋へ忍び入ったか。その返答を承まわろう』
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
悪童どもは飽きもせず、毎日やって来て青べかの
虐待
(
ぎゃくたい
)
に興じた。雨の日にさえ、学校のゆき帰りに石を投げ、
泥
(
どろ
)
を投げ、
悪罵
(
あくば
)
と嘲弄をあびせかけた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして素敵なダヴィデを記事で賞賛した——前年ある記事で二、三行
悪罵
(
あくば
)
を加えたことなんかは、もうきれいに忘れはてていた。彼の周囲の者も一人として、もうそれを覚えてはいなかった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
もとより私は、東京を離れた瞬間から、死んだふりをしているのである。どのような
悪罵
(
あくば
)
を父から受けても、どのような
哀訴
(
あいそ
)
を母から受けても、私はただ不可解な微笑でもって応ずるだけなのである。
玩具
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それは
悪罵
(
あくば
)
と
嘲笑
(
ちょうしょう
)
と無関心とに葬られていたのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
ところが本来なら、群集の弥次馬心理や日ごろの反官意識が当然、彼への
唾
(
つば
)
ともなり
悪罵
(
あくば
)
や石つぶてになるべきなのに
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは例の
悪罵
(
あくば
)
の始まる前兆なのだが、そのときは逆に、眼を伏せて口をつぐみ、いかにも自分をもてあましたというふうに、せかせかと酒を飲み続けた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は、私の作品を、ほめてくれた人の前では極度に
矮小
(
わいしょう
)
になる。その人を、だましているような気がするのだ。反対に、私の作品に、
悪罵
(
あくば
)
を投げる人を、例外なく軽蔑する。何を言ってやがると思う。
自作を語る
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しかしまた、浄土門を、
呪詛
(
じゅそ
)
する
側
(
がわ
)
の他宗の僧は、いっそう、彼を
悪罵
(
あくば
)
し、彼を
嫉
(
そね
)
んだ。わけても
播磨房
(
はりまぼう
)
弁円は
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鬼ばばあ、くたばっちまえ——、という第一
矢
(
し
)
でそれは始まり、相当な無頼漢でも思い及ばないような、豊富な
語彙
(
ごい
)
を駆使して
呪
(
のろ
)
いと
悪罵
(
あくば
)
と
嘲弄
(
ちょうろう
)
をあびせかける。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ころされる日を待ち切れず、われからすすんで命を断とうと企てた。衰亡のクラスにふさわしき
破廉恥
(
はれんち
)
、
頽廃
(
たいはい
)
の法をえらんだ。ひとりでも多くのものに審判させ嘲笑させ
悪罵
(
あくば
)
させたい心からであった。
狂言の神
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
次にまたこの小次郎も、武蔵が名目人の一少年までを討ったということを、口を極めて、
悪罵
(
あくば
)
した。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雨の日にさえ、学校のゆき帰りに石を投げ、泥を投げ、
悪罵
(
あくば
)
と嘲弄をあびせかけた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
劉高
(
りゅうこう
)
の
悪罵
(
あくば
)
だけを浴びて、追ッ返されて来た使いの言を聞くや、花栄は烈火の如く怒って即座に
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぶっつけに、あけすけに、
悪罵
(
あくば
)
と暴力で搾りあげた。
七日七夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
芸州の城下には、よく九州や広島へ旅する文人や画家が足をとめて、その土地が、山陽の郷里であるところから、自然と、彼に反感をもつ者の
悪罵
(
あくば
)
なども言いふらされた。
梅颸の杖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
象戯
(
しょうぎ
)
をさしているうちに、いつか主従の見さかいも忘れ、余りに暴言を吐くので、
懲
(
こ
)
らしめてくれようとしたところ、さらに
悪罵
(
あくば
)
を放って、逃げて行ったというのである。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
李逵は小舟の方へすっ飛んで行き、なにか二た言三言、
悪罵
(
あくば
)
を戦わせていたかとみるまに
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いかに半狂人の言としても、吐雲斎の
悪罵
(
あくば
)
は聞きづらい。無礼きわまる。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その間にも、雑人たちは、口汚い
悪罵
(
あくば
)
をまわりから放っていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
悪罵
(
あくば
)
は、順々に、その口々から飛び出して、
川面
(
かわも
)
を打った。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
悪
常用漢字
小3
部首:⼼
11画
罵
常用漢字
中学
部首:⽹
15画
“悪罵”で始まる語句
悪罵嘲笑