後見こうけん)” の例文
所でまたあなたの運命に似てるやうですが、彼女は、ロチスターとか云ふ人の後見こうけんをしてゐる子供を教育する仕事に就いたのです。
下男の思案は『此事を主人に知らせよう。』と奥に入るべく、中央の暖簾口のれんぐちに掛つたので、此時後見こうけんの役に廻つてゐた自分は、ビツクリした。
硯友社と文士劇 (新字旧仮名) / 江見水蔭(著)
嫁は真白に塗って、掻巻かいまきほどの紋付のすそを赤い太い手で持って、後見こうけんばあさんかかみさんに連れられてお辞儀じぎをして廻れば、所謂顔見せの義理は済む。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ここで後見こうけんがおれば、太夫さんのために面白おかしく芸当の前触れをして看客かんきゃくを嬉しがらせるだろうけれど、米友にはさっぱり後見が附いていません。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから後見こうけんけてもらうて、覺束無おぼつかなげにれい入場にふぢゃう長白つらねべるのもうれしうい。先方さき如何どうおもはうとも、此方こっち此方こっちで、おも存分ぞんぶんをどりぬいてかへらう。
「そんなこた、ありまっせんですよ。玉井の旦那は、バクチの後見こうけんなんぞのようなことは、なされんでしょ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
金縁の眼鏡めがねをかけながら、まるで後見こうけんと云う形で、三浦の細君と並んでいるのを眺めると、何と云う事もなく不吉な予感におびやかされずにはいられませんでした。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今では後家ごけのお豊がひとり息子の後見こうけん役でこの大きな店を踏まえているのであるから、彼女が飽くまで行者を信仰して、わが子の祈祷になんの故障もない限りは
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
茶縞ちゃじま布子ぬのこと来て、すみれ、げんげにも恥かしい。……第一そこらにひらひらしている蝶々ちょうちょうそでに対しても、果報ものの狩衣かりぎぬではない、衣装持いしょうもち後見こうけんは、いきすぎよう。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たゞ隼人正よりも仕合わせなことには、乳母はあの後見こうけんの男のような不実な者ではなかったと見えて、或る町人の知るの家へ安全に連れ込んでくれたのであった。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
付れども主税之助は兎角とかく安心せず否々いや/\う手輕く申せども内記殿の心中がどうも心配なれば公事の始末しまつを話して見よすけ十郎郷右衞門の兩人へ惣右衞門と云ふ古狸ふるだぬき後見こうけん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「舞台の奥に居りました。下座げざの囃子はお伝さんに任せて、ちょいと親方の後見こうけんをしておりました。親方の小左衛門が舞台に出るときは、私が後見をすることになって居りますので」
その中にはこの馬籠の村の開拓者であるという祖先青山道斎のことも書いてあり、家中女子ばかりになった時代に妻籠の本陣から後見こうけんに来た百助ももすけというような隠居のことも書いてある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……夕風に吹かれながら、こんなところであなたと魚づくしをやる気はねえのだから、さめなと海坊主うみぼうずなとお好きなものをお釣りなせえ。両国の請地うけちへ見世物に出すなら後見こうけんぐらいはいたします
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
後見こうけんさせ——庶民の間にも少ない人情をお示しになったという。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰かゞ姿をかくして、愉しげに鈴を鳴らした。すると、アデェル(彼女は自分の後見こうけんをしてゐる人の組になりたいと言ひ張つたのである)
気をかえてきっとなって、もの忘れした後見こうけんはげしくきっかけを渡すさまに、紫玉は虚空に向って伯爵の鸚鵡を投げた。が、あの玩具おもちゃの竹蜻蛉のように、晃々きらきらと高く舞った。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其方儀せがれ惣内不屆の儀を押隱おしかくし九郎兵衞を後見こうけん人と名付我が家へ入れ密通みつつうに及びし而已ならず同人と申合九助へ無實むじつの申かけをなし亡なはんとせし段不屆至極に付村拂むらはらひ申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
後見こうけんしてる叔父おじさんとがあるだけやさかい、一ぺん光子さんが会うてくれて、「こないこないの訳ですよって、いずれ家から表向きに申し込んで来たら黙って承知して下さい」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
俄か天気の三月末の暖気は急にのぼって、若い踊り子たちの顔を美しく塗った白粉は、滲み出る汗のしずくでまだらになった。その後見こうけんを勤める師匠の額にも玉の汗がころげていた。
「舞臺の奧に居りました。下座げざの囃子はお傳さんに任せて、ちよいと親方の後見こうけんをして居りました。親方の小左衞門が舞臺に出るときは、私が後見をすることになつて居りますので」
「秀吉の後見こうけんとして、そちも洲股すのまたに詰めておるように」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
リン夫人は注意した、「そのお子さんが、ロチスターさんの後見こうけんをしてゐらつしやる方だと存じますよ——あの方が話してゐらした佛蘭西の小さなお孃さんよ。」
気をかへてきっと成つて、もの忘れした後見こうけんはげしくきつかけを渡すさまに、紫玉は虚空こくうに向つて伯爵の鸚鵡おうむを投げた。が、あの玩具おもちゃ竹蜻蛉たけとんぼのやうに、晃々きらきらと高く舞つた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
藤助にはお冬という片眼の娘がありまして、これが生まれ付き素ばしこい人間でありますので、蝶を飛ばす役はお冬が勤め、父の藤助はその後見こうけんを致して居ったようでござります。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
追出し候故私し儀惣内方後見こうけんも致しをり候間介抱かいはう人に相成娘儀むすめぎは惣内妻に致させ候然る處九助儀は江戸表より同道どうだう仕つり候哉又は途中とちうより連參つれまゐり候哉せつと申女を引入ひきいれ直樣すぐさま後妻こうさいに仕つり候全く此節を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
後見こうけんは?」
じつ一昨年いつさくねん出雲路いづもぢたびには、仔細しさいあつて大阪朝日新聞おほさかあさひしんぶん學藝部がくげいぶ春山氏はるやまし大屋臺おほやたい後見こうけんについてた。此方こつちだまつて、特等とくとう、とあるのをポンとゆびのさきですと、番頭ばんとう四五尺しごしやくする/\とさがつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
後見こうけん最も年配なり。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)