帰途きと)” の例文
旧字:歸途
だが、私は帰途きとについてから、思いかえしてもみた。珠子から私へあてた移転の手紙が、今郵便局の配達員の手にあるのではないか。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おじいさんは、また、自分じぶんむらをさして帰途きとについたのであります。途中とちゅうで、れかかりました。そして、とうとうゆきってきました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
ヘルンは常に散歩を好み、学校の帰途きとなどには、まだ知らない町の隅々すみずみ徘徊はいかいしたが、新しい興味の対象を見出すごとに、必ず妻を連れてそこへ再度案内した。
巨男おおおとこは大きな大理石を三つもらって、それを背負せおい、白鳥をその上にとまらして帰途きとにつきました。
巨男の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
此に於て竹葉上に点々てん/\したたれる所のつゐめ、以て漸くかつす、吉田署長病再発さいはつあゆむにへず、つゐに他の三名と共に帰途きとかる、行者まゐり三人も亦こころさびしくやなりけん
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
春泥はきっと、六郎氏が小梅の碁友達の家を辞して、帰途きと吾妻橋を通りかかった折、彼を汽船発着所の暗がりへ連れ込み、そこで兇行を演じ、死体を河中かわなかへ投棄したものに相違ない。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
役所よりの帰途きと、予が家に立寄たちより、今日俸給ほうきゅうを受取りたりとて、一歩銀いちぶぎん廿五両づつみ手拭てぬぐいにくるみてげ来られ、予がさいしめし、今日きょうもらって来ました、勇気ゆうきはこれに在りとて大笑たいしょうせられたり。
そこで弁当をたべ、それからそこらにある荒れ寺の境内けいだいでさんざん遊び、それから午後三時ごろになって、二人は帰途きとについた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むかし一人ひとり武士ぶしが、殿とのさまのお使つかいで、たびかけました。おもいのほか日数にっすうがかかり、ようがすんで、帰途きとにつきましたが、いいつけられたまでに、もどれそうもありませんでした。
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
すすんで大蘆村にいたれば櫻井郡長之より帰途きとかる、村をぐればいよいよ無人のけうとなり、利根河岸の絶壁ぜつぺきに横はれる細逕さいけいに入る、すすむこと凡二里にしてみちまつたき、猟夫の通路つうろ又見るを
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
それで一思いに女をすてようとある日女の家からの帰途きと、わたしは決心したのでございます。よく日永劫えいごう女のもとを去るべく、早朝荷物をまとめて、女にはつげずに、都をさして出発いたしました。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
とにかく、地球へ派遣せられたわしの任務も、一段落となったから、これから帰途きとにつくのだ。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
病漸次にきたり以後つね強健けうけんなりき、人夫等皆之をとし恐喜ところを知らざるが如し、昨朝帰途きときし三人の行者まゐりをしてらしめば、其よろこび果して如何いかなりしか、おもへばいたりなり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
会議から帰途きとについた総領事の自動車が、議場の門から二百メートルほど行ったところで物蔭にひそんでいた○国人約十名よりなる一団に襲撃され、軽機関銃を窓越しに乱射され
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)