いゝ)” の例文
土地とちにて、いなだは生魚なまうをにあらず、ぶりひらきたるものなり。夏中なつぢういゝ下物さかなぼん贈答ぞうたふもちふること東京とうきやうけるお歳暮せいぼさけごとし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
作「はア宜うござえやす、立派な先生だからわりい烟草なんぞア呑まねえから、大急ぎでいゝのを買ってなせえ……あんた銭有りますかえ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「どうも不可いかねえもので、親の悪いところばかり子に伝はる。丑松も用心深いのはいゝが、然し又、あんまり用心深過ぎて反つて疑はれるやうな事が出来やすまいか。」
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いゝ加減の目方をつけて坦ぎ出させると、それが途中で転げ出して大騒ぎをしたことがあるそうです。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
くれますと云ば越前守殿然樣さうか其藤助のうちは車坂の通りにて右より左へゆくいゝところだらうなと申されしに小僧然樣さうさアノ大井戸より左の方へ行くと水菓子屋みづぐわしやうらでございますと云ふを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
舞台ぶだいへ来てもうお姫様もお供の影もないのでまご/\しているをいゝ寸法に出来てるもので、お姫様が其処そこへたった一人で出懸けてまいり
日当ひあたりいゝんですけれど、六でふのね、水晶すゐしやうのやうなお部屋へやに、羽二重はぶたへ小掻巻こかいまきけて、えさうにおつてゝ、おいろなんぞ、ゆきとも、たまとも、そりや透通すきとほるやうですよ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仕廻しまつて休むがいゝといふに下男彌助何さま然樣さやう致さんと早々に見世をかたつけいま戸をたてんとする處へ見上みあぐる如き大兵の武士てつ禪杖ぜんぢやうを引さげつか/\と這入はひり來り是々若いもの酒を一升かんを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
伊「ナニ知れる気遣いはない……鳶頭だって知ってる筈はなし、伯父さんだって猶さら御存知の気遣いはないとこ、あゝいゝとこを思い出した」
聞直八それ高價たかいわしは百姓のことだから身にはすこしかまひは無い見てくれさへよければいゝほんの御祝儀しうぎざしもうちつと負て下さい道具屋否々いへ/\此品はかた代物しろものなれば夫よりは少しもひけやせんと是より暫時しばし直段ねだん押引おしひき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
また神奈川在とのみにて行先ゆきさきも判然ときいて置かなかったし、何うしていゝかとうろ/\して居りますと、新橋発十時の汽車はまた汽笛をならして通り越して仕舞う。
皆様が贔屓にして供に連れて歩くという、此の五人連でいゝ天気でぶら/\と出掛けました。
作「はアうごぜえやす、ばアさま、旦那さま烟草買ってくんろと仰しゃるから買って来て上げなよ、此の旦那はいゝんでなけりゃア気に入るめえ、唯の方ではねえ安田一角先生てえ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おかめはこれをいゝ機会しおにして分家へ話をすれば、分家のじゝいは堅いから多助を追出すのは手間暇いらずだから、斯ういう都合にしましょう、あゝいう都合にしましょうと密々話ひそ/\ばなしをしている所へ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
というので薬を飲ませるといゝ塩梅に薬も通ってさがる様子
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)