ごみ)” の例文
病葉わくらばも若葉も、ごみのように舞って、人々の鎧へ吹きつけて来るし、炊事している兵站部へいたんぶの、薪のけむりが風圧のために地を低く這って
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娑婆しゃばにある大きな蒸汽機械も折々休息をさせて大掃除おおそうじもしなければごみまったり油が切れたりしてきに機械が壊れてしまう。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
浪「貴方がおあつらえだと申してごみだらけのふくべを持ってまいりましたが、あれはお花活はないけに遊ばしましても余りい姿ではございません」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
数年前まで、ごみ捨場であつたその辺は、見渡すほど広い空地になつてゐて、その黒い腐つた、土塊は肥料いらずであつた。
泥鰌 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
お咲は突っかかって来る悲しみを、押えきれないで、ごみくさい咲二の足につかまって泣き伏してしまった。それでも咲二は、涙を浮べさえしない。
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ごみと一しよあななかちてたのを、博士はかせたはむれに取出とりだされたので、これは一ぱい頂戴てうだいしたと、一どうクツ/\わらひ。
きらきらと、ごみのようなものが浮かんで地表を離れていくのが見えたが、それはおびただしい人間の群だった。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お前達が空つぽの貝殻を見る事があるのは、前にはかたつむりが這入つてゐたのだが、それが死んで了つてごみになつたので、その家だけが残つてゐるものなんだ。
棚の上なぞを片付ける時には、まだ見た事もないものや、忘れ果てゝ居たものなどが、ひよつこり出て来るので、お末と力三とはごみだらけになつて隅々を尋ね廻つた。
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
女学生のでこでこした庇髪ひさしがみが赤ちゃけて、油についたごみ二目ふためと見られぬほどきたならしい。一同黙っていずれも唇を半開きにしたままのない目でたがいに顔を見合わしている。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いつも門口かどぐちに来ると、杖のさきでぱっ/\とごみを掃く真似をする。其おとを聞いたばかりで、安さんとわかった。「おゝそれながら……」と中音で拍子ひょうしをとって戸口に立つこともある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
井伏さんは窓外の山桜を見ようとして、汽車の窓をあけ、目にごみを入れてしまう。
井伏鱒二によせて (新字新仮名) / 小山清(著)
「どうしたんでしょう。あんな大きなごみがあるわ。だんだん大きくなるようよ。」
幻の彼方 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それは、咳嗽菽豆くしゃみそらまめに似た清潔好きな小草で、ごみがはいると咳嗽くしゃみのようなガスをだす。そして、いきんだように葉をまっ赤にして、しばらく、ぜいぜい呼吸いきをきるように茎をうごかしている。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
膝の下でソッとごみを払いながら、小さな咳払いを一つ二つした。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
汁茶碗の手を少し下げ、箸の手を蕎麦箱へ伸ばして、蕎麦のたまにたかっているごみでも取っているのか、何かはさんでは、窓の外へほうっていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数年前まで、ごみ捨場であつたその辺は、見渡すほど広い空地になつてゐて、その黒い腐つた、土塊は肥料いらずであつた。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
小「何故大地ぢびためる、汚ならしい、ごみでも這入ってるといかないから止せ……御用の会符でも立ってるか見ろ」
置いてある御馳走へは畳のごみが舞い上って自然とまるし、長い時間中にははいが飛んで来て不潔な汚点しみをつける。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
膝を抱えて小さくうずくまっている禰宜様宮田は、うっとりと、ごみくさい大きな肩と肩の間からチロチロと美しく燃える火を見ながら、あてどもない考えに耽るのが常であった。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
汽車で明す夜といえば動揺する睡眠に身体からだも頭も散々さんざんな目に逢う。動いて行く箱の中で腰の痛さに目が覚める。皮膚があかだらけになったような気がする。いろいろなごみが髪と眼の中へ飛込む。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
震災は大地からあらゆる女のごみをたたき出したらしい。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「エエ、ごみへいった……」と背中へ手を突っこみながらふりかえってみると、むしろをかぶせた四角い荷物。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暑い暑いと言出してから早くも半月ばかり雨は一滴も降らず、日毎きびしく照りつける日の光に、町中はどこも彼処かしこも焼跡のようなごみだらけで、歩道のほとりの並木は大分枯れかかっている。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
竹の打ち付け窓にすゝだらけの障子を建て、脇にけやきの板に人相墨色白翁堂勇齋と記して有りますが、家の前などは掃除などした事はないと見え、ごみだらけゆえ、孝助は足を爪立つまだてながらうち
乾燥はくの禁物で乾燥すると細菌が空気中へ舞い上って外の人の鼻や口へ入ります。それさえ既に気味が悪くなって溜まらん処へボーイがほうきを持って来て床のごみや細菌をパッパッと掃き立てます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
店では夕方の取片づけにせわしく、一日のごみを掃き出し打水を撒き、八けんに灯を入れなどしている最中
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)