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ふりがな文庫
“
啀
(
いが
)” の例文
「その男が見えなくなると、半次さんと助七さんが裏表から入って、いきなり
啀
(
いが
)
み合いを始めましたよ。あれは大笑いで、へッへッ」
銭形平次捕物控:143 仏喜三郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
このネオン横丁で、毎日のように
啀
(
いが
)
み合っているのは、うちの人と女坂の旦那なんです。いつだかも、脅迫状なんかよこしましてね
ネオン横丁殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
風が波に
打
(
ぶ
)
っつかり、マストに突き当たり、リギンに切られて、泣きわめいた。海はその知らぬ底で大きく低く、長く
啀
(
いが
)
んでいた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
自分との
啀
(
いが
)
み合ひが無かつたのならば當然彼は土地の尋常科補習部を卒業したままで、靜かにその山村生活に入るべきであつたのである。
古い村
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
歳太郎は黙っていたが、さすが子供のときからの友だちの前で
啀
(
いが
)
み合っている仲間を見られた極まり悪さに陰気になって考え込んでいた。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
そのことでは「
蠢
(
うごめ
)
くもの」時分よりもいっそう険悪な
啀
(
いが
)
み合いを、毎晩のように自分は繰返した。彼女の顔にも頭にも
生疵
(
なまきず
)
が絶えなかった。
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
従って彼等は機会さえあると、公然と
啀
(
いが
)
み合う事を
憚
(
はばか
)
らなかった。彼は勿論出来るだけ、こう云う争いを起させまいとした。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「なあーんだ! ハッハッ愚にもつかないことでいい年をしながら
啀
(
いが
)
み合っているんだな——それにしても、君んところ、狭いのに大変ですね」
街
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しかし、男にとって何が辛いと云って、
阿母
(
おふくろ
)
と細君とに
啀
(
いが
)
み合われるほど辛いことはないものだ。あれは鋸の歯の間で寝ているようなものだよ。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
女のかりそめの娯楽をも
邪慳
(
じやけん
)
に罪するやうな態度に出て、二人は絶間なく野獣同士のごと
啀
(
いが
)
み合つた。凡てが悔恨といふのも言ひ足りなかつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
だからその智謀の将たる点では、非常に相似ているものを持ちあいながら、この二人が、功名や地位を争って
啀
(
いが
)
みあうようなことは少しもない。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女の市場商人が
啀
(
いが
)
みあひながら、罵る相手に
蝲蛄
(
ざりがに
)
をつかんで投げつけてゐるのや、
大露西亜人
(
モスカーリ
)
が片手で自分の山羊髯をしごきながら、片手で……。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:03 ソロチンツイの定期市
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
お島は父親が内へ入ってからも、暫く裏の植木畑のあたりを
逍遥
(
ぶらつ
)
いていた。どうせここにいても、母親と毎日々々
啀
(
いが
)
みあっていなければならない。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「お重、お前とは好く
喧嘩
(
けんか
)
ばかりしたが、もう今まで通り
啀
(
いが
)
み合う機会も
滅多
(
めった
)
にあるまい。さあ仲直りだ。握手しよう」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
世間には
啀
(
いが
)
み合う
鑼
(
どら
)
、
捩
(
ねじ
)
り合う
銅鈸
(
にょうばち
)
のような騒々しいものを混えることに於て、
却
(
かえ
)
って知音や友情が通じられる支那楽のような交際も無いことはない。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
酔いたいと思う私と酔うまいとする私とが、火と水とが叫ぶように、また神と悪魔とが戦うように、私の腹のどん底で噛み合い押し合い
啀
(
いが
)
み合うている。
赤い壺
(新字新仮名)
/
種田山頭火
(著)
おまけに
唸
(
うな
)
り合ひ、
啀
(
いが
)
み合ふ声は、山々谷々をゆり動かし、足踏み鳴らすその響は地震と雷とを一緒くたにしたやうで、その恐ろしさといつたらありません。
悪魔の尾
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
先刻
(
さっき
)
精霊と
啀
(
いが
)
み合っていた際、彼は頻りに啜り泣きをしていた。そのために彼の顔は今も涙で濡れていた。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
そこから、殆んどまるで犬がかみ合つてゐるやうな
啀
(
いが
)
むやうな
掴
(
つか
)
みかゝるやうな物音が聞えて來た。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それから両家がことごとに
啀
(
いが
)
みあって、とんだ三面種を拵えるなんてことは今でも珍しくない。
寛永相合傘
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
私は私の内部に絶えず
鬩
(
せめ
)
ぎ合い、
啀
(
いが
)
み合い、相反対し、相矛盾する多くの心を
見出
(
みいだ
)
すのである。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
しかし、女一人を中心に、男と男が
啀
(
いが
)
み合ひをするなんてことは、実にみつともないからな。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
それらが互いに
対峙
(
たいじ
)
し
啀
(
いが
)
み合って世界人類の平和と個人の平和とを破ることになります。
三面一体の生活へ
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
長州人と我々とは、元治以来、犬と猿のように
啀
(
いが
)
み合っているからな。長州征伐の時、幕府の軍勢が浪花を発向の節、軍陣の血祭に、七人の長州人を斬ったことがござるじゃろう。
乱世
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「宅へ
往
(
ゆ
)
きませう。宅の庭なら、幾ら貴方と
啀
(
いが
)
み合つたつて構はないんですからね。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
罵
(
ののし
)
り、
喚
(
わめ
)
き、
啀
(
いが
)
み、
嘲
(
あざけ
)
るのが、———太兵衛の如きは大声を上げてわいわいと泣いたりするのが、———みんな一人の小春を中心にしているところに、その女の美しさが異様に高められていた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
学校という一つの古臭いいじけた陰険な小さい争闘や
啀
(
いが
)
み合いの絶えない木造の大きな箱。その箱の中へ毎日自分達は通わなくてはならないのだ。随分やりきれない。ぐず/\してはいられない。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
むやみに
啀
(
いが
)
み合い、ケチをつけたがる風習の土地柄がある、たとえば、水戸の如きは、あれだけの家格と人物を持ちながら、到底一致することができない、
奸党
(
かんとう
)
だ、正義派だ、
結城
(
ゆうき
)
だ、藤田だと
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
くろ潮とおや潮、そのしおが
啀
(
いが
)
みあう大洋には濃い霧が乳色の層をつくっていた。蒸気船でさえ航行し兼ねると云う季節であった。そしてアメリカ人の無理に抵抗出来ず、彼らはムロランで下船した。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
私達は詩と小説の食ひ違ひで会へば必ず
啀
(
いが
)
みあつた。
牧野さんの死
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
すぐ
啀
(
いが
)
み合つたり、惡口をつき合つたりします。
津軽地方とチエホフ
(旧字旧仮名)
/
太宰治
(著)
啀
(
いが
)
みあいが始まる。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「その男が見えなくなると、半次さんと助七さんが裏表から入つて、いきなり
啀
(
いが
)
み合ひを始めましたよ。あれは大笑ひで、へツ/\」
銭形平次捕物控:143 仏喜三郎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
子を造るまいと思ってきたのに——自然には
敵
(
かな
)
わないなあ!——ちょうど一年前「
蠢
(
うごめ
)
くもの」という題でおせいとの
醜
(
みにく
)
い
啀
(
いが
)
み合いを書いたが
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
今日にかぎらず、この種の
啀
(
いが
)
みあいとなると、いつも血をみるまでは
熄
(
や
)
まなかった。だから近国の地頭や六波羅でさえ
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
網には
蝲蛄
(
ざりがに
)
が二匹ひっかかっていたし、鯉も一尾網の中で光っていた。女たちは、どうやら喧嘩でもしているらしく、何かしきりに
啀
(
いが
)
みあっている。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「三田先生を惜しがるのがいけないんなら、もっとどしどしほかに新鮮な先生を入れてくれればいいじゃないの。お祈りしちゃ
啀
(
いが
)
み合っているなんて、それこそ
矛盾
(
ムジン
)
してる!」
海流
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
といふ皮肉な解釈を下したが、例の高木兼寛博士の説によると、日本人は英蘭の馬ではないが、麦飯さへ食つて
居
(
を
)
れば、哲学を考へたり、女房と
啀
(
いが
)
み合つたりするのに少しの不足も無いさうだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そして萬事につけ
敵愾心
(
てきがいしん
)
を揷むに至つた。小さな村のことではあり、このことは
延
(
ひ
)
いて一村内の平和にも關係を及ぼさうかといふ勢になつた。で、當の
兩個
(
ふたり
)
は全く夢中になつて
啀
(
いが
)
み合はざるを得ない。
古い村
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
啀
(
いが
)
んでいた。そしてそのからだをやけに揺すぶっていた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
元はと言えば門弟共の
啀
(
いが
)
み合いからであったが、互に若気の至り、引くに引かれぬ意地ずくになって、出逢い
頭
(
がしら
)
に果し合いをしてしまったものだ。
禁断の死針
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
危急を感じると、
啀
(
いが
)
み合っていたこの
母子
(
おやこ
)
は、忽ち一体となって、又八は
急々
(
せかせか
)
と、
老母
(
はは
)
の落着いているのを案じた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朝の間だけは亭主とよく
啀
(
いが
)
みあひをやつた、といふのは、朝だけは
教父
(
クーム
)
と顔をあはせることが間々あつたからで。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:02 降誕祭の前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
奥さんと、女中が
啀
(
いが
)
み合いの最中なのであった。
二十三番地
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
答「いや、何よりは足利自体の
内訌
(
ないこう
)
です。
股肱
(
ここう
)
の臣と臣とが
啀
(
いが
)
みあい、骨肉の
弟御
(
おととご
)
や
異母子
(
いぼし
)
までが、みな主体に
叛
(
そむ
)
いてわが身をわが歯で
啖
(
く
)
いはじめました」
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
八五郎とは同年輩ですが、顏を合せると競爭意識が燃え上がるらしく、番毎犬と猿のやうに
啀
(
いが
)
み合ひますが、平次が側にゐるとさすがに端たなくも振舞へません。
銭形平次捕物控:232 青葉の寮
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
塀隣のくせに、年中
啀
(
いが
)
み合いの喧嘩でさ、もっとも巴屋さんが金に飽かして桶甚の家屋敷を買おうとしても、
旋毛
(
つむじ
)
を曲げて動かないのが喧嘩の
因
(
もと
)
なんだそうで——
銭形平次捕物控:029 江戸阿呆宮
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
従って、上野介も、この夫人に対しては、猫のように頭が上がらないのである。——この三月以前迄は、少くも、夫人と
啀
(
いが
)
み合う事などはなかったと云ってよい。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いや、平野屋の若旦那を
奪
(
と
)
り合って、事毎に
啀
(
いが
)
み合って居たことは、町内で知らない者は無いぜ」
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ぼくらに国境感はなく、めったに
啀
(
いが
)
み合いはしなかった。けれど、小うるさいからかい方をしたり、小国的な
悪戯
(
いたずら
)
をよろこぶ風は、どうもぼくらの方にあったらしい。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
啀
漢検1級
部首:⼝
11画