出帆しゅっぱん)” の例文
町「藤原様え、明日みょうにち何時頃いつごろ出帆しゅっぱんいたすのでございましょう、たしか万年橋まんねんばしから船が出るとか承わりましたが左様でございますか」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
向岸むこうぎし晩香坡バンクーバから突然だしぬけに大至急云々うんぬんの電報が来て、二十四時間以内の出帆しゅっぱんという事になったので、その忙がしさといったら話にならない。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼は六時出帆しゅっぱんの船を待つ処をまだはっきりとめていなかったので、すぐどこかで一杯やりながらそれを待とうと思いだした。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
儂既に決心せし時なれば、直ちにこれを諾し、大井、小林と分袂ぶんべいし、新井と共に渡航のに就き、崎陽きように至り、仁川行じんせんこう出帆しゅっぱんを待ち合わせ居たり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
今から考えると、そのときどうして恐龍号にとびこんだか、どうして出帆しゅっぱんしたか、昇降口は誰がしめたのか、そんなことはすこしも記憶していない。
恐竜艇の冒険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
出帆しゅっぱん前からの神経異常が、あなたとのたのしい交わりに、まぎらわされてはいたが、こうした場合一度に出て来て、頭のしんは重だるく、気力もなくなり
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
わたくしが東京を去ったのは明治三十年の九月であったが、出帆しゅっぱんの日もまた乗込んだ汽船の名も今は覚えていない。
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
発育ざかりの弟や妹が次々に茶碗を突き出す様子は、出帆しゅっぱんの準備をする時よりもっとせわしなかった。一男はその中で父から母親の病気の様子をきいた。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
南部の才浦さいうらと云ふところで、七日なぬかばかり風待かざまちをして居た内に、長八ちょうはちと云ふ若い男が、船宿ふなやど小宿こやどの娘と馴染なじんで、明日あす出帆しゅっぱん、と云ふ前の晩、手に手を取つて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
横浜を出帆しゅっぱんすると、浅虫あさむしの海洋研究所を見るために青森まで行き、それからまたゆっくりと南へくだって来た。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
せっかちの夫妻は、足もとから鳥がたつようにいそいで旅装りょそうをととのえ、ケートをしたがえてサンフランシスコへきた。だが定期船は出帆しゅっぱんしたあとだった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
汽船は夜六時の出帆しゅっぱんである。山嵐もおれも疲れて、ぐうぐう寝込んで眼が覚めたら、午後二時であった。下女に巡査は来ないかと聞いたら参りませんと答えた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
中津なかつ出帆しゅっぱんの時から楽しんで居た処が、神戸に上陸して旅宿やどやついて見ると、東京の小幡篤次郎おばたとくじろうから手紙が来てあるその手紙に、昨今京阪の間はなはだ穏かならず、少々聞込ききこみし事もあれば
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「伯母さま。今、通って行きました、男衆に、お気づきになりましたか、あの人は、私たちが、出帆しゅっぱんいたします時、伯母さまと話していられた、ご親類の方に、そっくりでございます」
両面競牡丹 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
連合軍の食糧を満載して、前夜バルセロナの港を出帆しゅっぱんしたコロナ号は、燈火がれないように、窓という窓を毛布でおおって、木の葉のように揺れながら、けんめいに蒸気ステイムをあげていた。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
置去りにして出帆しゅっぱんしてしまうこともないでしょう。僕をその船へ案内して下さい
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
未明に出帆しゅっぱんしたのに、夕方になってもまだ津軽つがる海峡沖を抜け切らなかった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「エクリップス号は毎火曜日ここから出帆しゅっぱんするのだから、おぼえておいで」
沼崎氏の出帆しゅっぱんも三十日内外なり。何卒なにとぞそれまでに届けかしに御坐候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
翌年正月十九日の夕、とも咸臨丸かんりんまる乗組のりくみ浦賀湾うらがわん出帆しゅっぱんしたり。
『神戸出帆しゅっぱんです。』技師が答えた。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
出帆しゅっぱん前の船に、またハワイ生れのおじょうさん達が集まって、はなやかな、幾分エロチックな空気をふりまいていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それでは僕は今日四時には出帆しゅっぱんして洋航するからね、お前も無事で、身体を大切だいじに稼ぎなさい、これが別れとなるかも知れぬ、しかし無事に航海をおわって帰朝するときは
私はそのうち先生の留守に行って、奥さんと二人差向さしむかいで話をする機会に出合った。先生はその日横浜よこはま出帆しゅっぱんする汽船に乗って外国へ行くべき友人を新橋しんばしへ送りに行って留守であった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから毛唐けとうの嫌う金曜日金曜日に汽笛を鳴らして、到る処の港々を震駭しんがいさせながら出帆しゅっぱんする、倫敦ロンドンから一気に新嘉坡シンガポールまで、大手を振って帰って来る位の離れわざは平気の平左なんだから
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
有志家とは当時自由党の幹事たりし佐藤貞幹さとうていかん氏にてありければ、しょうはいよいよ安心して、翌日神戸出帆しゅっぱんの船に同乗し、船の初旅もつつがなくた横浜よりの汽車の初旅もさわりなく東京にちゃくして
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
謙作はその日の夕方出帆しゅっぱんした高雄丸たかおまると云う台湾航路の船に姿を見せていた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その翌未明、大阪の川口を出帆しゅっぱんした二百トンにも足らぬ小汽船があった。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
サンフランシスコを出帆しゅっぱんしてからかれらは、密々みつみつ悪い計画をこらした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
私が中津にいって、小幡篤次郎おばたとくじろう兄弟を始め同藩子弟七、八名に洋学修業を勧めて共に出府するときに、中津からず船にのっ出帆しゅっぱんすると、二、三日天気が悪くて、風次第で何処どこの港に入るか知れない
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
船の出帆しゅっぱん時刻は、確か、七時でしたが、ひとりぼっちで歩いていても、面白おもしろくなく、帰ったならば、案外また、あなたに逢えるかとも思うと、四時頃からもう帰船しました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
見ろ、船はもう出帆しゅっぱんしていたんだ
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)