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傷々
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いたいた
ふりがな文庫
“
傷々
(
いたいた
)” の例文
そして、生きながらの鬼を自分の心に思う女が、夜半、どんな幻覚を夢うつつに抱くだろうか。
傷々
(
いたいた
)
しくもあり、恐ろしくもある。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こんな小さな
痩
(
や
)
せっぽちな伯父がこれから一人ぼっちで棺の中に入らなければならないのかと思って、ひどく
傷々
(
いたいた
)
しい気がした。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
あまり
爪尖
(
つまさき
)
に響いたので、はっと思って浮足で飛び
退
(
すさ
)
った。その時は、
雛
(
ひな
)
の
鶯
(
うぐいす
)
を
蹂
(
ふ
)
み
躙
(
にじ
)
ったようにも思った、
傷々
(
いたいた
)
しいばかり
可憐
(
かれん
)
な声かな。
海の使者
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
声を殺してしゃくり上げるたびごとに、
咽喉
(
のど
)
の骨が皮膚の下から
傷々
(
いたいた
)
しく現れて、息が詰まりはしないかと思われる程切なげにびくびくと
凹
(
へこ
)
んでいる。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その文句は、いきなりに育って来たお増などには、
傷々
(
いたいた
)
しく思われるくらい、
幼々
(
ういうい
)
しさと優しさとをもっていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
頬
(
ほお
)
の
傷々
(
いたいた
)
しくこけたために、葉子の顔にいうべからざる暖かみを与える
笑
(
え
)
くぼを失おうとしてはいたが、その代わりにそこには悩ましく物思わしい張りを加えていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
女の身で兎も角も密旨の為に働き「何の様な目に逢って此の世を去るかも知れぬ」とまで覚悟して居るとは
傷々
(
いたいた
)
しいと云っても好い、助けられる者なら助けて遣り度い、と云って事情も知らず
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
軒かたむいた
戸
(
こ
)
ごとから逃げ惑って行ったらしい
嬰児
(
あかご
)
のボロ
布
(
き
)
れやら食器の破片などが、そこらに落ちているのも
傷々
(
いたいた
)
しく目に
沁
(
し
)
みて
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人の患者が死に
瀕
(
ひん
)
している。一人は腹部をやられた者。顔をゆがめつつ、しかし沈黙せる・
傷々
(
いたいた
)
しき人事不省。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
雪まぶれの外套を脱いだ寒そうで
傷々
(
いたいた
)
しい、
背
(
うしろ
)
から苦もなくすらりと
被
(
かぶ
)
せたので、洋服の上にこの
広袖
(
どてら
)
で、長火鉢の前に
胡坐
(
あぐら
)
したが、大黒屋
惣六
(
そうろく
)
に
肖
(
に
)
て
否
(
ひ
)
なるもの
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、寒さにいじめつけられて赤くふやけている
傷々
(
いたいた
)
しいその指にも、日増しに
伸
(
の
)
びる歳頃の発育の力を
抑
(
おさ
)
えきれないものがあって、一種いじらしい美しさが感じられた。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あの
傷々
(
いたいた
)
しい失意の
眸
(
ひとみ
)
が涙でいっぱいになって物も得いわずに打ち伏すかと思うと、万野は帰るにも帰れない心地がするのだった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
よじって伸ばす白い
咽喉
(
のど
)
が、
傷々
(
いたいた
)
しく伸びて、
蒼褪
(
あおざ
)
める頬の色が見る見るうちに、その咽喉へ
隈
(
くま
)
を薄く
浸
(
にじ
)
ませて、
身悶
(
みもだえ
)
をするたびに、
踏処
(
ふみどころ
)
のない、つぼまった
蹴出
(
けだし
)
が乱れました。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
濃い紺色のジョウゼットの下に
肩胛骨
(
けんこうこつ
)
の透いている、
傷々
(
いたいた
)
しいほど
痩
(
や
)
せた、骨細な肩や腕の、ぞうっと寒気を催させる
肌
(
はだ
)
の色の白さを見ると、
俄
(
にわか
)
に汗が引っ込むような心地もして
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それが
誤解
(
ごかい
)
とわかりきった今なるにせよ、信長自身の口からゆるされるまでは、
傷々
(
いたいた
)
しくとも戸板のまま地上に寝かしておくしかなかった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
京女と云っても雪子のように骨細な
傷々
(
いたいた
)
しい感じはなかった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
やがて
賜酒
(
ししゅ
)
が終ると、正行はすぐ退がった。しかしその後ろ姿もどこか弱々と見えて、みかどは
密
(
ひそ
)
かに、
顕家
(
あきいえ
)
には似ぬ者と、
傷々
(
いたいた
)
しく思われた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、嘆願の事はいくたびも頼朝に通じてあったし、
傷々
(
いたいた
)
しい姿を見、泣きじゃくる声を聞いただけでも、十分、老母の心は、頼朝には分っていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、母は
傷々
(
いたいた
)
しくながめたが、
生
(
なま
)
なか
庇
(
かば
)
い立てすると、かえって、筑阿弥の荒い手や言葉が、日吉へ
苛酷
(
かこく
)
に当るので、見て見ぬ振りをしているのだった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして余りに
傷々
(
いたいた
)
しい瞼をちらと見たので、彼はあとへ
惹
(
ひ
)
かれる心と反対に、馬腹へ軽い鞭を当ててしまった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
じっと見れば、それなん
宋江
(
そうこう
)
その人にちがいない。ここ久しく日の目も見ず、蒼白の
面
(
おもて
)
に
鬂
(
びん
)
のほつれ毛も
傷々
(
いたいた
)
しく、暗闇の中でも肩の
窶
(
やつ
)
れがわかるほどだった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
余りにも、
傷々
(
いたいた
)
しく思われるのは、玉日であった。
被衣
(
かずき
)
してさえ若い新妻は昼間の陽の下を歩み得ないほどなのが、そのころの深窓に育った佳人の慣わしであるものを。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十川村の郷士の息子だという安太郎が、いつも彼女を
傷々
(
いたいた
)
しがって、
湯沸
(
わか
)
し
場
(
ば
)
へ慰めに来た。
鬼
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その中に、馬良の弟、
馬謖
(
ばしょく
)
もいた。瞼を紅く泣きはらした馬謖のすがたは
傷々
(
いたいた
)
しく見えた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それに、御車は捨ててもうないので、帝は
裸足
(
はだし
)
のままお歩きになるしかなかった。馴れないお
徒歩
(
ひろい
)
なので、たちまち足の皮膚はやぶれて血をにじませ、見るだに
傷々
(
いたいた
)
しいお姿である。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのほかは旗本から
平侍
(
ひらざむらい
)
や足軽までを合わせても、千人には足りなかった。しかも
夥
(
おびただ
)
しい数は、簾中以下
上﨟
(
じょうろう
)
たちの
塗駕
(
ぬりかご
)
や
輿
(
こし
)
や、
被衣姿
(
かずきすがた
)
や
徒歩
(
かち
)
、駒の背などの
傷々
(
いたいた
)
しいものの数であった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
内匠頭の死後から今日迄、およそ二十一ヵ月——その間にこの人の
面
(
おもて
)
からは、あらゆる希望が消えていた。水々しかったあの頃の
麗姿
(
れいし
)
から思うと、頬や肩の肉さえ
傷々
(
いたいた
)
しいほど
削
(
そ
)
ぎとられていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
春の
樹洩
(
こも
)
れ
陽
(
び
)
は
衣
(
きぬ
)
を洗う彼女の白い手に
傷々
(
いたいた
)
しくなくこぼれている。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あの細いお体に、具足を着けるだけでも、
傷々
(
いたいた
)
しい程なのに」
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
傷々
(
いたいた
)
しげに、眉をしかめて、武蔵の肌の奥を
覗
(
のぞ
)
こうとすると
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
傷
常用漢字
小6
部首:⼈
13画
々
3画
“傷”で始まる語句
傷
傷痕
傷手
傷負
傷口
傷寒
傷心
傷痍
傷所
傷寒論