おっし)” の例文
やはり何んとしても私は「何を申そうにもまだ姫は大へんおさないので、そうおっしゃられるとまるで夢みたいな気がいたす程ですから——」
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
神様でも、鳥よ虫になれとはおっしゃる事が出来ますまい。先にその鳥の命をお断ちになってからでも、そう仰ゃる事は出来ますまい。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
何でも谷中やなかに御友達とかの御葬式があるんですって。それで急いで行かないと間に合わないから、上っていられないんだとおっしゃいました。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お前さん方がおっしゃるから、お玉も来年は二十はたちになるし、余りとうの立たないうちに、どうかして遣りたさに、とうとうわたしは折れ合ったのだ。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
なれども此の金は受けられませんから、どうかお持帰りを願います、それを貴方がいつまでも手を突いておっしゃれば致し方がないから切腹致します
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこで趙はこらえかねて笑い出して、「何とおっしあります、唐氏の定鼎は方鼎ではございませぬ、円鼎えんていで、足は三つで、方鼎とおっしあるが、それは何で」
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「こう云う落着のない子ですから、お骨も折れましょうが、やかましくおっしゃって、どうか駆使こきつかってやって下さい」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
わたくしは何とおっしゃっても彼奴あいつのいるそばへ出て行く事は出来ません。もしか明日あしたの朝起きて見まして彼奴あいつが消えて無くなっていれば天のたすけというものでございます。
女はかすかに微笑ほほえんだ。「なぜそんなにおっしゃいますの。出たくなけりゃあいじゃありませんか。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
おっしゃって神様は、そこへ、二つの大きなつぼと小さい壺とを、お出しになりました。
トシオの見たもの (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
(微笑む。)それでは旧思想の人は生活していないとおっしゃるのですか。
あとで部屋へ行って、どうして私のいった通りにしないのだ、と聞くと、実は烏帽子を被らずに出ようとしたら、久保田さんがどうしても被らなけれゃいけないとおっしゃるものですから、というのです。
久保田米斎君の思い出 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「そのうちに又——」などとおっしゃって出て往かれるのを、「又ね……又ね……」などと口真似をして歩きまわったりしているのだった。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「大そうお金持だったそうでございますね。あの時本の少しばかりでいから、お金が残して置いて貰われたらと、いつもそうおっしゃいます。」
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたしが行き合って止めでもしなかったらどんな事になったか知れやしない、思い出してもおそろしい事だとおっしゃったよ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「しかし今度こんだは何時もより重いんですって。ことによるとずかしいかも知れないから、健三に見舞に行くようにそういってくれっておっしゃいました」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
続いて「フェリックスさん」と呼んで見た。男は次第に泣きんだ。「どうしたのかおっしゃいよ。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
又「二十日……えー十九日の明方に川を渡って湯の谷泊りとおっしゃったが、ちょうど二十日が己の所へお泊りと……婆さん、あのお比丘さんの名はお梅という名じゃないか」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「たまに宅へお見えになるお客がございましても、わたくしがいないと御註文がないと云う始末でございますから。あれじゃお前が一人で切廻す訳だと、お客さまがおっしゃって下さいます」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
人間はよろこんでそこへ棲み始めた。そのうちに、だんだんお腹がすき出したので、男は早速、神様のおっしゃったことを思い出し、空を仰いでお祈りを始めた。女もまた、地の上に伏して、お祈りした。
トシオの見たもの (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その思いかけないとおっしゃるのは。
「何だかすっかり御気色をお悪くさせてしまいまして。もう何もおっしゃって下さらなければ、私は帰った方がよろしいのでしょう。——」
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「では何かい。何かこれまで檀那のおっしゃった事に、本当でなかった事でもあったのを、お前が気が附いたとでも云うのかい」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたくしの学生時代の談話をしろとおっしゃっても別にこれと云って申上げるようなことは何もございません。
学生時代 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「何でもうまく運転すると月に三、四十円の利子になるから、それを二人の小遣にして、これから先細く長く遣って行くつもりだって、御姉おあねえさんがそうおっしゃいましたよ」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
村「おや旦那旨いことばかりおっしゃって私などに冗談を仰ゃる気遣きづかいはありませんが、本当に旦那様の仰ゃることなら私は死んでも宜しい、有難いことだと思って居ります」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「もう大分好いでしょう。それ御覧なさいな。あなた何も言うのではありませんよ。物をおっしゃっては悪いのですから。あさってあたりはきっと庭に出て御覧なさる事が出来ますわ。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
或日私がそれをそれとなく殿におきすると、「そう、そんな事もあったかも知れんな」と殿はいかにも冷淡そうにおっしゃられたぎりだった。
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「いえ。どういたしまして。どうぞなんなりともおっしゃって下さいますように。」腰はまた落ち着けられた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
長「はア、本所業平橋の浪島文治郎とおっしゃるのか、亥太郎の親父おやじ長藏と申します、お心やすく」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おれは当人じゃなければ取計いかねるとおっしゃるならば其男そのおとこに逢いましょ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おっしゃい
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「かわいそうに」とあの方はおっしゃられながら「じゃ、とにかくお前がお母あ様に出ていただきたいと思われるなら、車をこちらへ寄こしてくれ」
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
五円に負けてくれと云うと、「先刻岡田さんが六円なら買うとおっしゃいましたが、おことわり申したのです」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
御当家さまへあがりまして、旦那さまは誠に何から何までお慈悲深く、何様どんな不調法が有りましても、お小言もおっしゃらず、斯ういう旦那さまは又とは有りません、手前が仕合しあわせ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
旅行に就いて何か経験上の談話をしろとおっしゃるのですか。
旅行の今昔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
見れば、まだ私があれからずっと山にこもっているものとばかりお思いになっていらしって、何くれと物哀れげにおっしゃって
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「そうじゃございません。お泊になってから少し立ちますと、今なら金があるからとおっしゃって、今月末までの勘定を済ませておしまいになった位でございます。」
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大阪あっち越佐えつささんと云っては大した御身代でいらっしゃるんだからね、土地で貰おうとおっしゃれば、網の目から手の出るほど呉れはあるがの、佐兵衞さんてえのは江戸の生れなんで
とご自分でおっしゃった事さえあるじゃあございませんか。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そんならその主のない家に持って行って置いて来いとおっしゃったのには、実に驚きましたのでござります。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
僕が君にあざむかれた訳ではあるまいが、これをこうすればあゝなる、この機械をうすれば斯ういう銭儲ぜにもうけがあると、貴君きくんおっしゃり方がまことしやかで、誠に智慧ちえのある方の云うことだから
「トはおっしあって下さりましても。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おっしゃるとおり、どこでお逢になるか知れませんのに、きっと江戸へお知らせになることが出来ましょうか。それに江戸から参るのを、きっとお待になることが出来ましょうか」
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
町「まア/\お二人ともお待ちなさい、今一言いちごんおっしゃった万年橋というのは」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「トおっしありまするのは。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし何ともおっしゃらない。僕にはその時のお母様の顔がいつまでも忘れられなかった。僕は只「お休なさい」と云って、自分の部屋に這入った。時計を見れば三時半であった。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
とにかく埴生と交際することは、これからはめねば行かぬとおっしゃるのである。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
丁度そこへ女中が来て、福住から来た使つかいの口上を取り次いだ。お暇ならお遊びにいらっしゃいと、坂井さんがおっしゃったと云うのである。純一は躊躇ちゅうちょせずに、只今伺いますと云えと答えた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そんな話のある時、聞耳を立てると、お母様が余所よその人に言うなとおっしゃる。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)