一昨日おとゝひ)” の例文
わたくし默然もくねんとして、なほ其處そこ見詰みつめてると、暫時しばらくしてその不思議ふしぎなる岩陰いわかげから、昨日きのふ一昨日おとゝひいた、てつひゞきおこつてた。
いよ/\離縁りゑんするとでもはれてたのかとおちついてふに、良人おつと一昨日おとゝひよりうちへとてはかへられませぬ、五うちけるは平常つねこと
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
細い路次ろじを通つて、うちの前まで來ると、表の戸は一昨日おとゝひ締めて行つたまゝである。何處をほつき𢌞つてゐたのか、宛然まるで夢中で、自分にも明瞭はつきりおぼへがない。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
昨日きのふ一昨日おとゝひと三つゞけてつたですで、まんづ、今日けふ大丈夫だいぢやうぶでがせうかな。」一かうにんと、運転手うんてんしゆ助手じよしゆはせて八にんひしんでつた、真中まんなかちひさくなつた
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれども一方では、一昨日おとゝひつた麺麭パンを今かへせと強請ねだられる様な気がした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宛然まるで洋盃コツプ一昨日おとゝひ注いだビールの樣だ。仕樣のない顏だよ。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
が、今は淺草に住つてゐる友達と、一昨日おとゝひ一日公園をぶら/\遊んで、其晩其處そこで泊つたことは確である。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
師走しはすつき世間せけんたいものせわしきなかを、ことさららみて綾羅きらをかざり、一昨日おとゝひそろひしとそれ芝居しばゐ狂言けうげんをりから面白おもしろ新物しんものの、これをのがしてはと娘共むすめどもさわぐに、見物けんぶつは十五日
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こゝろつうずるのか、貴下あなた年月としつきち、つても、わたしことをおわすれなさらず、昨日きのふまでも一昨日おとゝひまでも、おもめてくださいましたが、奥様おくさま出来できたので、つひ余所事よそごとになさいました。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手撈てさぐりに、火鉢の抽斗ひきだしからマツチを取出すと、手捷てばしこすりつけて、一昨日おとゝひ投出ほうりだして行つたまゝのランプを、臺所だいどこの口から持つて來て、火をけたが、もう何をする勇氣もなく、取放とりツぱなしの蒲團の上に
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)