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食膳
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しょくぜん
ふりがな文庫
“
食膳
(
しょくぜん
)” の例文
夜は
母屋
(
もや
)
の囲炉裏ばたをおのれの働く場所として、主人らの
食膳
(
しょくぜん
)
に上る野菜という野菜は皆この男の手造りにして来たものであった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
わざわざ一人前の
食膳
(
しょくぜん
)
をこしらえさせるのが気の毒なくらいであったが、しかし静かで落ち着いてたいへんに気持ちがよかった。
写生紀行
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と云い、新八が立ちあがると、女は乱暴に夜具をたたみ、隅のほうへつくね、そして、押しやってあった
食膳
(
しょくぜん
)
を、部屋のまん中へ据えた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
子路の
屍
(
しかばね
)
が
醢
(
ししびしお
)
にされたと聞くや、家中の
塩漬類
(
しおづけるい
)
をことごとく捨てさせ、
爾後
(
じご
)
、醢は一切
食膳
(
しょくぜん
)
に上さなかったということである。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
殿
(
との
)
さまは、
黙
(
だま
)
ってうなずかれました。そして、その
日
(
ひ
)
から、
殿
(
との
)
さまの
食膳
(
しょくぜん
)
には、その
茶
(
ちゃ
)
わんが
供
(
そな
)
えられたのであります。
殿さまの茶わん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
庸三が小さい時分食べて来た
田舎
(
いなか
)
の食べ物のことなどを話すと、すぐそれが工夫されて、間もなく
食膳
(
しょくぜん
)
に上るのだった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
貴人の
食膳
(
しょくぜん
)
にはインド料理、ペルシア料理、ローマ料理の類までも珍重せられる。士女はみな
競
(
きそ
)
うて西方の(恐らく準ギリシア風の)衣服をつけた。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
女房の不平を犯してまでも
食膳
(
しょくぜん
)
に
上
(
のぼ
)
せる程のものを、庄造は自分で食べることか、リリーにばかり与えている。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
食膳
(
しょくぜん
)
に向って皿の数を味い尽すどころか元来どんな
御馳走
(
ごちそう
)
が出たかハッキリと眼に映じない前にもう膳を引いて新らしいのを並べられたと同じ事であります。
現代日本の開化
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
食膳
(
しょくぜん
)
に着くのにさえ
掟
(
おきて
)
のある、堅苦しい家に帰るのが何だか心細く、遠ざかり行く子供の声をはかない別れのように聞きながら一人で坂を上って黒門をはいった。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
……今、朝の光線で見ると、昨夜
傷
(
きず
)
けた唇はひどく痛々しそうだった。やがて、母親が
食膳
(
しょくぜん
)
を運んでくると妻は普段のように
箸
(
はし
)
をとった。だが、
忽
(
たちま
)
ち悲しげに顔を
顰
(
しか
)
めた。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そういう日に限って、女中達の心づくしか、
食膳
(
しょくぜん
)
にはいつもより
御馳走
(
ごちそう
)
が並ぶのであった。でも格太郎はこの一月ばかりというもの、おいしい御飯をたべたことがなかった。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
すぐ近くの空地に見すぼらしい
庵
(
いおり
)
を作ってもらい、夫婦と猿の下僕はそこに住み、わずかな土地を耕して、
食膳
(
しょくぜん
)
に供するに足るくらいの野菜を作り、ひまひまに
亭主
(
ていしゅ
)
は
煙草
(
たばこ
)
を刻み
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
やがて
昼食
(
おひる
)
だったので、みんなと一緒に
食膳
(
しょくぜん
)
についた。貧しい食事であった、が私はそれを山海の珍味のように味わった。少くとも食物がすらすらと
喉
(
のど
)
もとを通るのを有難いと思った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
先ず店の間から順番に流し初めて最後が仏壇であった。仏間のお経の長さは格別だった。うんと省略してもらっても二十分はかかった。その間私たちや母は
食膳
(
しょくぜん
)
を見つめている訳だった。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
伺候した者の集まって来ていることが時々申し上げられても、疲れていて気分がよろしくないと仰せになって、夫人の
室
(
へや
)
から宮はお出にならなかった。お
食膳
(
しょくぜん
)
がこちらの室へ運ばれて来た。
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
食膳
(
しょくぜん
)
にでものせようとしていたらしくみえる、たべごろの焼きざかなでしたから、右門のまなこはらんらんと輝くと同時に、その口のあたりにはにたりと会心の
笑
(
え
)
みが浮かんで見られましたが、突然
右門捕物帖:08 卍のいれずみ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
もしも、これがなかったら、われわれは
食膳
(
しょくぜん
)
に向かって
箸
(
はし
)
を取り上げることもできないであろうし、門の敷居をまたぐこともできないであろう。
映画の世界像
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
若い家士が行燈に火をいれ、やがて
食膳
(
しょくぜん
)
を運んで来た。粗末なものですが箸をつけて下さい、と云った。干魚を焼いたものに菜汁一椀の膳だった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
風呂
(
ふろ
)
へ入るとか、
食膳
(
しょくぜん
)
に向かうとかいう場合に、どこにも妻の声も聞こえず、姿も見えないので、彼はふと片手が
毮
(
も
)
げたような心細さを感ずるのだったが
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
渇
(
かつ
)
はしだいに
歇
(
や
)
んだ。そうして渇よりも恐ろしい
餓
(
ひも
)
じさが腹の中を荒して歩くようになった。余は寝ながら美くしい
食膳
(
しょくぜん
)
を
何通
(
なんとお
)
りとなく想像で
拵
(
こし
)
らえて、それを眼の前に並べて楽んでいた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
幸子達の姉妹は母が早く
亡
(
な
)
くなった関係上、晩年の父の
食膳
(
しょくぜん
)
に
侍
(
はべ
)
りながら毎夜相手をさせられたものなので、本家の姉の鶴子を初め、皆少しずつは行ける口であるところから、———そして
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
食膳
(
しょくぜん
)
も質素ではあるが
朔日
(
ついたち
)
十五日には必ず赤の御飯をたいて出すほど家族同様な親切を見せ、かみさんのお
隅
(
すみ
)
がいったん引き受けた上は、どこまでも世話をするという顔つきでいてくれたが。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
魚貝のみならずいろいろな海草が国民日常の
食膳
(
しょくぜん
)
をにぎわす、これらは西洋人の夢想もしないようないろいろのビタミンを含有しているらしい。
日本人の自然観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
頭痛がするだけでたいしたことではないからと、寝床をとらせてすぐ横になったが、
夕餉
(
ゆうげ
)
のときには起きだして、金之助といっしょに
食膳
(
しょくぜん
)
に向った。
落ち梅記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
妻を失ってから、彼の
食膳
(
しょくぜん
)
は妻のやり方を長いあいだ見て来ただけの、年喰いのチビの女中のやってつけの仕事だったので、
箸
(
はし
)
を執るのがとかく
憂鬱
(
ゆううつ
)
でならなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そうして、今度ひとりで旅に出ると宿屋の
食膳
(
しょくぜん
)
のおかずの食い方がわからないといったような
風
(
ふう
)
があるのではないか。
さるかに合戦と桃太郎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
酒ぬきの、ごく質素な
食膳
(
しょくぜん
)
を見たとき、折岩半之助はいやな顔をした。それは
躾
(
しつ
)
けの悪い喰べざかりの子供が、嫌いな物を出されたときの表情によく似ていた。
半之助祝言
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
手捷
(
てばし
)
こくそこらを掃除したり、朝飯の支度に気を配ったりしたが、
寝恍
(
ねぼ
)
けた様な
締
(
しまり
)
のない笑顔をして、女が起出して来る頃には、職人たちはみんな
食膳
(
しょくぜん
)
を離れて、奥の工場で彼女の
噂
(
うわさ
)
などをしながら
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その声を聞くと、そこまで
食膳
(
しょくぜん
)
を運んで来た宿の女中が、その食膳を持ったまま逃げてしまうのであった。
ひとごろし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
われらの
食膳
(
しょくぜん
)
の一部を食っている、わが家族の一員であるはずのこの猫が、
蜥蜴
(
とかげ
)
などを食うのは他の家族の食膳全体を
冒涜
(
ぼうとく
)
するような気がするというのかもしれない。
ねずみと猫
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
魚類などが
食膳
(
しょくぜん
)
にのぼるのは、年に幾たびと数えるくらいのもので、それもたいてい自分で釣って来た。
雪と泥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
幾つもの
火桶
(
ひおけ
)
でうっとりするほど暖まった部屋、
贅沢
(
ぜいたく
)
といってもよいくらい品数の多い色とりどりの
食膳
(
しょくぜん
)
、そしてなんの苦労もなく憂いも悲しみも知らない親子兄弟の
日本婦道記:糸車
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
月見山の家に着いた夜、清三のために風呂が
焚
(
た
)
かれ、
食膳
(
しょくぜん
)
には康子の手料理が並べられた。
須磨寺附近
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そうしたある夜のこと、菊枝ははじめて唐苣を採って
食膳
(
しょくぜん
)
にのぼせてみた。
日本婦道記:不断草
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
食膳
(
しょくぜん
)
が片づくと、帯刀は少し酔が出たらしく、赤らんだ顔で茶を啜りながら、西沢はどうしているかと訊いた。べつにどういうこともない、無事にやっているがなぜだ、と隼人が問い返した。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その明くる朝、
食膳
(
しょくぜん
)
を運んでゆくと、主計が縁側に立って庭を見ていた。
晩秋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
食膳
(
しょくぜん
)
にむかった彼は、妻のようすが朝とはかくべつ
憔悴
(
しょうすい
)
しているのに気づいて、昨夜ねむっていないということを思いだした、夜を徹したからといって武家ではそうむざと昼寝をすることはできない
日本婦道記:梅咲きぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
食膳
(
しょくぜん
)
に向った時、源兵衛は婿の疲れた顔を見ながら訊いた
入婿十万両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
食膳
(
しょくぜん
)
はそのまま置いてあり、茶を持って来るようすもない。
日日平安
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それからまた顔を洗い、着替えをして
食膳
(
しょくぜん
)
に向った。
四日のあやめ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
加代が支度のできた
食膳
(
しょくぜん
)
を運んできた。
武道宵節句
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“食膳”の意味
《名詞》
料理をのせた膳。また、その料理。
(出典:Wiktionary)
食
常用漢字
小2
部首:⾷
9画
膳
常用漢字
中学
部首:⾁
16画
“食”で始まる語句
食
食物
食卓
食事
食客
食堂
食禄
食餌
食料
食指