酒精アルコール)” の例文
酒精アルコールを五二ないし七五の割合に交ぜたものたい、そして脳の大きいほど水を少なく酒精の方を割合に多くするがよいという事である。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのうちには此激烈な酒精アルコールなきだに弱りはてた僕の心臓を次第に破って、ついには首尾よく僕も自滅するだろうと思って居ます。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
酒精アルコール消費量からいったら、皆日本などよりも、もっとたくさん飲んでいる。ただそれは家庭内で飲むので、外では飲まない。
知られざるアメリカ (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ただ、眼だけは誰が見ても酒精アルコール中毒で、白眼が黄色く濁って、暴風雨ののちの海を見るような気味のわるい光りを放っている。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
で、軍医はこつそり羊の心の臓を切り取つて、それを酒精アルコールづけにして銀の壺に密封したまゝ、棺のなかに納めたのださうだ。
それから始まった闇黒の中で、吾々は、眼が醒めると絶えず酒精アルコールんで、うつらうつらと死に向って歩みはじめました。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
隣室からは、四壁あたりを驚ろかす上ずった笑い声、それに続いて、佐良井と女共の、酒精アルコール臭い淫靡いんびな声が筒抜けに聴えます。
死の舞踏 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
だが老いて既に耄碌もうろくし、その上酒精アルコール中毒にかかった頭脳は、もはや記憶への把持はじを失い、やつれたルンペンの肩の上で、むなしく漂泊さまようばかりであった。
酒精アルコールの切れた時の私の心臓は非常に刺戟に弱いのでありまして、男の子が一人あると聞いた瞬間はドクドクと物凄い速力で暫しの間鳴って居りました。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
たとえば酒精アルコールを含んだ飲料を用いると知、情、意ともにたちまち調子が変わって、つねに静かな人も盛んに騒ぎ出し、無口の人も急にしゃべるようになり
脳髄の進化 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
そういう症状にかかった老婦人は嫁のする事なら針ほどの事も憎くなったり、嫁が好意でした事も反対にひがんで解釈したり、酒精アルコール中毒者が杯を放さないように
姑と嫁について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
関内の花街かがいから送りこまれて、夜をくだつ器楽や強烈な酒精アルコールの騒音と共に、毎夜毎夜、けるのを知らない。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世の中には、役にも立たない人の死骸を保存するために、酒精アルコールだの朱につける事もあるのに、死骸の腐るまで検視が来ないのは、随分馬鹿げたことだと思った。
恨なき殺人 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
組込くみこみの三きやくすゞくわんに、結晶けつしやうした酒精アルコールまつたのがつて、これ普通ふつう汽車中きしやちうかすうつわである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今日きょうはまだ一しづくもやらねえんでね。あの医者は馬鹿だよ、ほんとに。もしラムを少しも飲まなけれぁ、ジム、己は酒精アルコール中毒が起るよ。もう少しは起ってるのだ。
われは手をべて身下の碧氣を探りしに、こは冷なる波なりき。されどその我手に觸れて火花を散らすさまは、酒精アルコールの火に殊ならず。我側には怪しき大圓柱あり。
ひっぱずされて(酒精アルコールたたりもあって)身体が宙にクルリと一回転した揚句あげく、イヤというほど腰骨こしぼねをうちつけた。じっと地面にのびているよりほかに仕方がなかった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
百年のよわいは目出度めでたく難有ありがたい。然しちと退屈じゃ。たのしみも多かろうが憂も長かろう。水臭い麦酒ビールを日毎に浴びるより、舌を焼く酒精アルコールを半滴味わう方が手間がかからぬ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だが、短時間の間に人夫二人が、どうにかこうにか掃除をした。そこで卓一脚、椅子数脚をはこび込み、我々は曳網、壺、酒精アルコールその他を入れた箱二個の荷を解いた。
父親というのがひどい酒精アルコール中毒で、村へ来ると間もなくほとんどのたれ死のようにして死んだのち、そのころ村長をしていた佐野源七さのげんしちという旧家に引取られて育った。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼女は、一郎を抱き上げて家の中へせこんだ。竹三郎は磨いた煙槍エンチャンをくわえて、赤毛布の上に横たわり、酒精アルコールランプを眺めながら、恍惚状態に這入ろうとしていた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
そして一寸からだをひるがえしましたのではねうらが桃色にひらめいてあるいはほんとうの火がそこに燃えているのかと思われました。若い木霊の胸は酒精アルコールで一ぱいのようになりました。
若い木霊 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
やはり各国船員の上陸行列に酒精アルコールが参加し・林立するマストに汽笛がころがり・眠る倉庫のあいだに男女一対ずつの影がうろうろし・悪罵と喧嘩用具が素早く飛び交し・ふるいINKの海を
東京近郊でも甘柿をキザワシ、すなわち樹上でサワシた柿という名をもって呼んでいるが、サワスというのは元来はたるなどに入れまたは酒精アルコールを注射して、渋柿を甘くする技術のことであった。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
酒精アルコール中毒らしい舌は何時でもまわらなかった
炭坑長屋物語 (新字新仮名) / 猪狩満直(著)
酒精アルコールのとばりの中に
測量船拾遺 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
やうやく田町を流してゐるのを突き留めて、蕎麥そば屋へ入つて一杯呑ませながら聽くと、十手より酒精アルコールの方が利いて、思ひの外スラスラと話してくれました。
此処ここへ身を横たえて酒精アルコールの力に身をたくし高い大空を仰いで居る間は、僕の心が幾何いくらか自由を得る時です。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
さいしょ、口腔くちに固形酒精アルコールをいれて、それに火をつけた。まもなく火が脳のほうへまわって眼球が燃えだした。ごうっと、二つのあながオレンジ色の火を吹きはじめた。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
岡田は今までに所用で時々出京した。ところが自分はいつもかけ違って会う事ができなかった。したがって強く酒精アルコールに染められたかれの四角な顔も見る機会を奪われていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
標本というのは、大きな帆立貝の殻百個、曳網で採集した材料を酒精アルコール漬にした大きな石油鑵一個、貝塚からひろった古代陶器その他である。馬は宿屋の前まで引いて来られた。
この紳士が、ずっと以前に人気の荒い南部加州あたりで労働をしていたらしい事と、その趣味が余り高くない事は、その風采と、所持品と、強い酒精アルコール中毒であろうと推定される。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
酒精アルコールで沈澱させたツベルクリンの一プロセント溶液を眼に点ずると、健康体ならば何の異状も起らぬが、少しでも結核のあるものならば、二十四時間内に充血して紅くなるという事である。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼は、煙槍エンジャンと、酒精アルコールランプと、第三号がなければ生きて行かれなかった。彼は、一日に一度は必ず麻酔薬を吸わずにはいられなかった。体内から薬のが切れると、うずくような唸きにのた打った。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
今こいつに酒精アルコール分を許しては大へんだからだ。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
ようやく田町を流しているのを突き止めて、蕎麦屋そばやへ入って一杯呑ませながら聴くと、十手より酒精アルコールの方が利いて、思いの外スラスラと話してくれました。
所で君は、酒精アルコール寒暖計を知っているかね——細い管中の酒精アルコールが熱で膨脹すると云うのを。つまり犯人は、笙の吹き口に酒精アルコールを詰めて、それを縦にした根元を日光へ曝したのだ。
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
これを圧搾して酒精アルコールかたまらせると二分の一プロセントくらいのゴムが取れる。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
実験所のために、ガラス瓶、酒精アルコール、その他を集める日が、いく日も続いた。
医師は、酒精アルコール中毒から来た突発性の精神病だろうと診断し、その日居合せた大勢の人達も、ピアノの音につれて踊り狂ったという以上には何んにも知りませんでした。
死の舞踏 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
寒さに耐えられずんだ酒精アルコールというのが木精メチールまじりだったのですから、せっかく引き揚げられたにもかかわらずあの暗黒を最後に、吾々は光の恵みから永遠に遠ざけられてしまったのでした。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
六人乘りの傳馬てんま呑手のみてが揃つてゐるらしく、近寄るとプンと酒精アルコールが匂ひさうな中に、二十一、二の半元服の若い女が、單衣ひとへの肩を紅に染めて、しうとめらしい老女の介抱を受け