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貪欲
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どんよく
ふりがな文庫
“
貪欲
(
どんよく
)” の例文
あの品の好い紳士は、あれで心は残酷で、
吝
(
けち
)
くさいのだろう。あの百姓は単純そうに見えて、本当に嫌にしつこくて
貪欲
(
どんよく
)
なのだろう。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
冲左衛門という、その人は、時流に乗って出世する人間に共通の、押しつけがましさと、厚顔と、そして
貪欲
(
どんよく
)
を兼ねそなえていた。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
やっと取り出した虫はかなり大きなものであった、紫黒色の肌がはち切れそうに
肥
(
ふと
)
っていて、大きな
貪欲
(
どんよく
)
そうな口ばしは
褐色
(
かっしょく
)
に光っていた。
簔虫と蜘蛛
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
エジプトのミイラは、キャンバイシーズ王も歳月も手をふれることを差しひかえたのに、今は
貪欲
(
どんよく
)
な人間がけずりとっている。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
それが一つずつ老婆の
貪欲
(
どんよく
)
の手に握りあげられてゆくとき、左膳と月輪の雑居した離室に、どッ! と
雪崩
(
なだれ
)
のような笑い声が湧いて消えた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
荊州の留守をしている
潘濬
(
はんしゅん
)
も、とかく
政事
(
まつりごと
)
にわたくしの
依怙
(
えこ
)
が多く、
貪欲
(
どんよく
)
だといううわさもあって、おもしろくありません。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただアルプス連山が鳥のために残っている。そこには、
貪欲
(
どんよく
)
なヨーロッパのまん中に、二十四連邦の小島が残存している。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この恨は富山に数倍せる富に
因
(
よ
)
りて始て償はるべきか、
或
(
あるひ
)
はその富を獲んとする
貪欲
(
どんよく
)
はこの恨を移すに足るか。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
小男須原は、この壮絶な風景に接して、悪心を忘れ、
貪欲
(
どんよく
)
を忘れ、ひたすら震えおののいているかに見えた。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この油断のない、
貪欲
(
どんよく
)
で
悪賢
(
わるがしこ
)
い鳥に対して、わたしはずっと前から
憎悪
(
ぞうお
)
をいだいていたのである。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
それだのに目の前に異国情調の豊かな
贅沢品
(
ぜいたくひん
)
を見ると、彼女の
貪欲
(
どんよく
)
は甘いものを見た子供のようになって、前後も忘れて懐中にありったけの買い物をしてしまったのだ。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ロイド・ジョージ思えらく、こは資本家の
貪欲
(
どんよく
)
を満たさんがために起こされたる無名の師である。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
吝嗇
(
りんしょく
)
の、
貪欲
(
どんよく
)
の、冷淡の、悪意の、残忍の、勝利の、歓喜の、極端な恐怖の、強烈な——無上の絶望の、広大な精神力の諸観念が、雑然とかつ逆説的に湧き上ったのである。
群集の人
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
「
貪欲
(
どんよく
)
永
(
なが
)
く尽き、
瞋恚
(
しんに
)
永く尽き、愚痴永く尽き、一切の
諸
(
もろもろ
)
の
煩悩
(
ぼんのう
)
永く尽くるを、涅槃という」
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
そこで、
貪欲
(
どんよく
)
の貪をとって貪魚という字があてはめられたのかも知れない。また、行動がすこぶる鈍重だから、一度見つけると、たいていは釣れる。ほとんど技術も入らない。
ゲテ魚好き
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
きっと
貪欲
(
どんよく
)
な天狗がやって来て、羽うちわであかりをあおぎ消して、人のこしらえたごちそうをさらって行ってるに違いありません。村の人達は天狗だときめてしまいました。
天狗の鼻
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
血をすする獣性、
餌物
(
えもの
)
をさがす飢えたる
貪欲
(
どんよく
)
、爪と
顎
(
あご
)
とをそなえ腹のみがその源であり目的である本能、それらのものは、平然たる幻の姿をおずおずとながめまたかぎまわす。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
外側は世をすてた形だが内は
貪欲
(
どんよく
)
と
淫欲
(
いんよく
)
に満つるもののあることは、周知の事実です。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
工場主としての自分のそういう気持ちを知らずに、なおこのうえに要求を重ねようとしている職工たちの
貪欲
(
どんよく
)
を思うと、賢三郎は意地でもその要求を退けてやりたい気がするのだった。
仮装観桜会
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
あのおとなしい静かな兄弟子が、世話人の話すやうな残忍無恥な、又は
貪欲
(
どんよく
)
な、又は無残な行為をして、あの老僧の経営した寺をかうした廃寺にして
了
(
しま
)
はうとはかれは夢にも思はなかつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
その猛鳥の加える残酷と、
貪欲
(
どんよく
)
と、征服とを、相当に心地よげに無抵抗に、むしろ、うっとりとしてなすがままに任せている、そのお銀様の態度に、お雪ちゃんが、あの猛鳥の為す業より
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
貪欲
(
どんよく
)
で冷酷で
狡猾
(
こうかつ
)
で、金の為なら人情は切れた
草鞋
(
わらじ
)
程にも思っていないのだ。それに反して彼の息子は多血質な感情家だった。だから無論合う
筈
(
はず
)
がない、友人はいつでも彼の父を
罵
(
ののし
)
っていた。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
そのうえに、
腫
(
は
)
れぼったい唇のあいだから、ほとんど腐ってしまった黒い歯のかけらをちらちら見せる
貪欲
(
どんよく
)
らしい長い口が付いているのである。彼は話をするたびに
唾
(
つば
)
をやたらに
跳
(
は
)
ね飛ばした。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
これは外面の差で性質上の差ではない。彼の表面倹約を装うてその実
卑吝
(
ひりん
)
貪欲
(
どんよく
)
の行為を成し、人の前では正直そうにして隠れた所で悪事を働くなどは、我輩も先生も断じて取らぬところの行動である。
福沢先生の処世主義と我輩の処世主義
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
だが彼の創造欲は二人の息子の飲酒博奕癖の増長と歩を並べ、資産の増大するにつれて増大し、今や
貪欲
(
どんよく
)
の聖者の観を呈しつつあったのである。
艶妖記:忍術千一夜 第一話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
なんとも
貪欲
(
どんよく
)
な人相だが、しかし毛虫眉をかぶッた切れ長な眼は細く針のような底光りをかくしていて、しじゅう意識でえびす顔を作っており
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして父の
貪欲
(
どんよく
)
を大声に罵倒してはいたけれど、心の中では、それをみずから笑いながら父の方が道理だと認めていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ここへ足踏みしなかったのは、それよりも、もっともっと
貪欲
(
どんよく
)
な陰謀を
企
(
たく
)
らんでいたからではないか。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そこにこそ女性の野心が絶対の支配権を得ようとし、そこにこそ女性の
貪欲
(
どんよく
)
が隠れた財宝を探しもとめるのだ。女は愛情を危険にさらす。心の
全
(
すべ
)
てをかけて愛の貿易をする。
傷心
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
パリでの私の
復讐
(
ふくしゅう
)
や、ナポリでの私の熱烈な恋や、さてはエジプトでの私の
貪欲
(
どんよく
)
と彼が誤って名づけたものなどを、妨害した男——この私の悪魔であり悪の本尊である男が
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
葉子の目から見た親類という
一群
(
ひとむ
)
れはただ
貪欲
(
どんよく
)
な
賤民
(
せんみん
)
としか思えなかった。父はあわれむべく影の薄い
一人
(
ひとり
)
の男性に過ぎなかった。母は——母はいちばん葉子の
身近
(
みぢか
)
にいたといっていい。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
もしもなまけていたり、思いあがっていたり、なおはなはだしきは
貪欲
(
どんよく
)
の果てに居眠りでもしていたら、四方八方から、あさましいやつどもがやって来て、羊の群れを奪って行くのですからの。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
これは
貪欲
(
どんよく
)
に加うるに偽善をもってし、罪を二重にするにすぎない。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
まあごらんなさい、火という大明王が、その小さな愛着と、未練と、
貪欲
(
どんよく
)
とを、木葉のように、広大なるつぼの中に投げ入れて、微塵の情け容赦もなく、滅除し、済度して行く、あの盛んな光景を——
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして一年間の
田舎
(
いなか
)
の生活をむしろ
貪欲
(
どんよく
)
に享楽していた。
球根
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
天の父よ、私は
貪欲
(
どんよく
)
でありましたことを自ら
咎
(
とが
)
めまする。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ふとすれば、舞ッた笠を追ッて、勢い、谷へも飛びこみかねなかった浅ましい息ギレが、われながら
貪欲
(
どんよく
)
なと、おかしくなって来たものらしい。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「人間ほど尊く美しく、清らかでたのもしいものはない」と去定は云った、「だがまた人間ほど卑しく汚らわしく、愚鈍で邪悪で
貪欲
(
どんよく
)
でいやらしいものもない」
赤ひげ診療譚:05 徒労に賭ける
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
エルンストはいつも
貪欲
(
どんよく
)
で、食事の初めからその馬鈴薯を横目で
窺
(
うかが
)
い、しまいにはねだり出した。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
貪欲
(
どんよく
)
なふかは
紺碧
(
こんぺき
)
の水のなかを
物
(
もの
)
の
怪
(
け
)
のようにさっと突っぱしる。眼下に横たわる水の世界について、今までに読んだり聞いたりしたことを、わたしは想像力
逞
(
たくま
)
しくすっかり思いおこす。
船旅
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
貪欲
(
どんよく
)
にも鼠どもはちょいちょい鋭い
牙
(
きば
)
を私の指につきたてた。
落穴と振子
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
が、ここには
貪欲
(
どんよく
)
な鼻を持った白髪まじりの老農夫が、
竈
(
かまど
)
のそばにうずくまって陶山、小見山らを待ちあわせていた。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
量さえ多ければ質のいかんをあまり気にしない趣味の
貪欲
(
どんよく
)
性をもそなえていた。そういう
健啖
(
けんたん
)
な食欲にとっては、実量が多ければ多いほどどんな音楽でも上等のものとなる。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
四五日の小遣い五千両と聞いて、出平はひそかに舌を巻き同時に
貪欲
(
どんよく
)
の知恵を巻いた。
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして
貪欲
(
どんよく
)
な自己を一そう赤裸にした。金蓮はそのせつなに初めて
武大
(
ぶだ
)
にあらざる男を体のおくに知って何かを生むような
呻
(
うめ
)
きにちかい絶叫を発した。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
フランスの古い中流社会が卑しい利害観念を結婚にもち出すことは、全世界によく知れ渡ってることである。ユダヤ人らは金銭にたいしてそれほど下劣な
貪欲
(
どんよく
)
をもってはいない。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「しかし人間となると東京よりひどい、
狡猾
(
こうかつ
)
で
貪欲
(
どんよく
)
で無恥なこと、まして宗教的な偏見の根強さとなると、
蒙昧
(
もうまい
)
そのものです、むしろ蒙昧であることにしがみついているようなものです」
おごそかな渇き
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その間に、偽宮の造営を計ったとか、
貪欲
(
どんよく
)
に人民の財物を集めたとか、兵馬の拡充を急いだらしい痕跡もない。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
臥床
(
ねどこ
)
に、その休息の生活に、これらの
溌剌
(
はつらつ
)
としたしかも疲れてる小さな身体を、鈍らず満ち足らずしかも生きることに活発
貪欲
(
どんよく
)
なこれらの魂を、置いてみたらと彼は考えた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ところで、そこへ、……あの
貪欲
(
どんよく
)
と無恥と酷薄のかたまりであるヒステリイ女の妻君が、ひきつったような灰青い顔でとんで来た。知れたこと、唇が捲れあがって歯が剥きだしになっていた。
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“貪欲(
貪
)”の解説
貪(とん、巴: sa: rāga、巴: sa: lobha)は、仏教における煩悩のひとつで、 貪り、欲深いことを意味する。別名を貪欲(とんよく)ともいい、五欲の対象である万の物を必要以上に求める心である。対義語は無貪(alobha)。
上座部仏教における不善心所のひとつ。
説一切有部の五位七十五法のうち、(心所法-)不定法のひとつ。
大乗仏教アビダルマにおける六つの根本煩悩のひとつ。
(出典:Wikipedia)
貪
常用漢字
中学
部首:⾙
11画
欲
常用漢字
小6
部首:⽋
11画
“貪欲”で始まる語句
貪欲心
貪欲界