トップ
>
衣紋竹
>
えもんだけ
ふりがな文庫
“
衣紋竹
(
えもんだけ
)” の例文
省作は出してもらった着物を引っ掛け、
兵児帯
(
へこおび
)
のぐるぐる巻きで、そこへそのまま
寝転
(
ねころ
)
ぶ。母は省作の脱いだやつを
衣紋竹
(
えもんだけ
)
にかける。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「變なものがありますよ、——お勝手口に立てかけてあつたんですが、
古箒
(
ふるぼうき
)
に
衣紋竹
(
えもんだけ
)
を結へて、單衣を着せたのは、何んの
禁呪
(
まじなひ
)
でせう」
銭形平次捕物控:170 百足屋殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
雪子は姉が脱ぎ捨てて行った不断着を
衣紋竹
(
えもんだけ
)
にかけ、帯や帯締を一と纏めにして片寄せてから、なお暫くは手すりに
靠
(
もた
)
れて庭を見ていた。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
壁
(
かべ
)
の
衣紋竹
(
えもんだけ
)
には、紫紺がかった派手な色の新調の
絽
(
ろ
)
の羽織がかかっている。それが明日の晩着て出る羽織だ。そして幸福な帰郷を飾る羽織だ。
遁走
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
壁に垂れた
鬱金
(
うこん
)
木綿の三味線胴や、
衣紋竹
(
えもんだけ
)
にお鳥のぬけ出した不斷着などが見えるのがいやさに、堅く目をつぶつてその目を枕に押し伏せた。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
▼ もっと見る
母親はその間に、
結城縞
(
ゆうきじま
)
の綿入れと、自分の
紬
(
つむぎ
)
の
衣服
(
きもの
)
を縫い直した羽織とをそろえてそこに出して、脱いだ羽織と
袴
(
はかま
)
とを手ばしこく
衣紋竹
(
えもんだけ
)
にかける。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
お島は脱ぎすてた晴衣や、汗ばんだ
襦袢
(
じゅばん
)
などを、風通しのいい座敷の方で、
衣紋竹
(
えもんだけ
)
にかけたり、茶をいれたりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
艶
(
つや
)
の無い、くすぶった
燭台
(
しょくだい
)
の用意はしてあったが、わざと消したくらいで、
蝋燭
(
ろうそく
)
にも及ぶまい、と
形
(
かた
)
だけも持出さず——所帯構わぬのが、
衣紋竹
(
えもんだけ
)
の替りにして
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
家人の緊張は、その日より今にいたるまで、なかなか解止せず、いつの間にやら
衣紋竹
(
えもんだけ
)
を全廃していた。
二十世紀旗手
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「紙芝居の真似もいいけれど、
衣紋竹
(
えもんだけ
)
や物差を振り廻して、唐紙や
障子
(
しょうじ
)
に穴をあけるのは御免だよ。」
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
その他、しじみ屋、下駄の歯入れ、灰買い、あんま師、
衣紋竹
(
えもんだけ
)
売り、
説経祭文
(
せっきょうさいもん
)
、物真似、たどん作り……そういった人たちが、この
竜泉寺
(
りゅうせんじ
)
名物、とんがり長屋の住人なので。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
衣紋竹
(
えもんだけ
)
に掛けてある着物ばかりは、室内の
光景
(
さま
)
に不似合なものであった……お種は、
何処
(
どこ
)
へ行っても、
真実
(
ほんとう
)
に
倚凭
(
よりかか
)
れるという柱も無く、真実に眠られるという枕も無くなった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この
室
(
へや
)
は女の衣装を着替える所になっていたので、四面にずらりと
衣桁
(
いこう
)
を並ベ、
衣紋竹
(
えもんだけ
)
を掛けつらねて、派手なやら、地味なやらいろんな着物が、虫干しの時のように並んでいる。
竜舌蘭
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その外坐舗一杯に敷詰めた
毛団
(
ケット
)
、
衣紋竹
(
えもんだけ
)
に釣るした
袷衣
(
あわせ
)
、柱の
釘
(
くぎ
)
に懸けた
手拭
(
てぬぐい
)
、いずれを見ても皆年数物、その証拠には
手擦
(
てず
)
れていて古色
蒼然
(
そうぜん
)
たり。だが
自
(
おのずか
)
ら秩然と
取旁付
(
とりかたづい
)
ている。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
衣紋竹
(
えもんだけ
)
に掛けた裾模様の
単衣物
(
ひとえ
)
に着かえ、赤い弁慶縞の
伊達締
(
だてじめ
)
を大きく前で結ぶ様子は、少し大き過る潰島田の銀糸とつりあって、わたくしの目にはどうやら明治年間の娼妓のように見えた。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
影の隣りに
糸織
(
いとおり
)
かとも思われる、女の
晴衣
(
はれぎ
)
が
衣紋竹
(
えもんだけ
)
につるしてかけてある。細君のものにしては少し
派出
(
はで
)
過ぎるが、これは多少景気のいい時、
田舎
(
いなか
)
で買ってやったものだと今だに記憶している。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まずきのう着た
派手
(
はで
)
な衣類がそのまま散らかっているのを畳んでトランクの中にしまいこんだ。
臥
(
ね
)
る時まで着ていた着物は、わざとはなやかな
長襦袢
(
ながじゅばん
)
や裏地が見えるように
衣紋竹
(
えもんだけ
)
に通して壁にかけた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
引明
(
ひきあけ
)
て金三四十兩
懷中
(
ふところ
)
に入れ
立上
(
たちあが
)
る處に
横面
(
よこつら
)
へ
冷
(
ひや
)
りと
觸
(
さは
)
る物あり何かと
疑
(
うたが
)
ひ見れば
縮緬
(
ちりめん
)
の
單物
(
ひとへもの
)
浴衣
(
ゆかた
)
二三枚と倶に
衣紋竹
(
えもんだけ
)
に掛てありしにぞ
毒
(
どく
)
喰
(
くは
)
ば
皿
(
さら
)
迄と是をも
引外
(
ひきはづ
)
して懷中へ
捻込
(
ねぢこみ
)
四邊
(
あたり
)
を
窺
(
うかゞ
)
ひ人足の
絶間
(
たえま
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
幻の民五郎は、
唐紙
(
からかみ
)
や
屏風
(
びょうぶ
)
の絵の中へも溶け込み、
衣桁
(
いこう
)
や
衣紋竹
(
えもんだけ
)
の着物の中へも消えて無くなると言われました。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
大礼服着たる
衣紋竹
(
えもんだけ
)
、すでに枯木、刺さば、あ、と一声の叫びも無く、そのままに、かさと倒れ、失せむ。空なる花。ゆるせよ、私はすすまなければいけないのだ。
HUMAN LOST
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
床脇
(
とこわき
)
の
棚
(
たな
)
のところに、加世子のスウツケースや
風呂敷包
(
ふろしきづつみ
)
があり、不断着が
衣紋竹
(
えもんだけ
)
にかかっており、荒く絵具をなすりつけた小さい絵も床脇の壁に立てかけてあった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
月出でたらば影動きて、
衣紋竹
(
えもんだけ
)
なる不断着の、
翁格子
(
おきなごうし
)
の
籬
(
まがき
)
をたよりに、羽織の袖に映るであろう。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは
衣紋竹
(
えもんだけ
)
に
箒
(
はうき
)
を結へ、
單衣
(
ひとへ
)
を着せて背負つて歩き、背の高い男と見せるやうにした爲だ。
銭形平次捕物控:170 百足屋殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
梁
(
はり
)
から
衣紋竹
(
えもんだけ
)
で釣って掛けてさぼしてある。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
衣
常用漢字
小4
部首:⾐
6画
紋
常用漢字
中学
部首:⽷
10画
竹
常用漢字
小1
部首:⽵
6画
“衣紋”で始まる語句
衣紋
衣紋坂
衣紋掛
衣紋着
衣紋竿
衣紋繕
衣紋架
衣紋附
衣紋裝束