くせ)” の例文
そんでまたでもはたけでもかぶつたとこみづてからくさつてるもんだからくせえことがまたはなしにやなんねえや、作物さくもつばかしこまんだとおもつたら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「ところが御めえいざってえ段になると奴め最後さいごをこきゃがった。くせえの臭くねえのってそれからってえものはいたちを見ると胸が悪くならあ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
徳「そりゃア必ず云いません、今こそ車夫しゃふだが大西徳藏、いさゝか徳川のくせい米を食って親を泣かした人間だから、云わんと云ったら口が腐っても云いはしない」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
挨拶あいさつだの、礼だの、誰方どなただのと、面倒くせえから、ちょうど可い、連立つれだたして、さっさと帰しちまった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ははあ! 三人ともこの屋敷へはいったな。裏はすぐ饗庭の庭につづいている。こいつあくせえぞ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「願いさげだな」男は眼の隅で、文次をぬすみ見ながら、云った、「おめえの酒は女っくせえ、しゃれて云えば女の涙で塩っかれえからな、——伴れがあるようだが友達か」
あすなろう (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
やつにいわせると、あのたまらなくくせにおい本当ほんとうおんなにおいだというんだ。うそだとおもったら、ろんより証拠しょうこ春重はるしげうちってねえ。って、いまうれしがりの最中さいちゅうだぜ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「ひどく酒くせえなあ。むむそうか。花嫁の部屋でも、身内のよい酒盛りとかやるのがならいだからそのせいだな。……これよ、娘、いや嫁御。なにもそうはずかしがるにはおよばぬよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おめえみてえな無学な奴が——と丸万は俺を軽蔑けいべつしたのである。と同時に研究会なんてもので啓蒙しようなどとは、しゃらくせえと、労働者出身の丸万はそのこと自体をも軽蔑したのである。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
「ウエッ、くせえ……」と言ふなり、その花を木の下の子供へ投げつけた。
しゃらくせえ野郎、そのだらしねえ様は何だ、乳くせえ小僧のくせに、宵の口から酒喰らいやがって、女とじゃれるなあ、みっともねえ、市廻りの恥さらしだ、それでいておいらの仲間だと言えるかよ。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)
「親分、上下かみしも雪隠せっちんを掻き廻しましたが、くせえの臭くねえの」
「抜きやがったな、しゃらくせえ」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ああ、くせえ、臭え。」
鰊漁場 (新字新仮名) / 島木健作(著)
「なぜこれこれだと云ってくれないんだ」栄二は大川端おおかわばたのほうへ向いながら独り言を云った、「子飼いからそこそこ十年にもなろうっていうのに、あんまり水くせえじゃあねえか」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
二十両に負けてくれべい、だがくせい荷を引張ひっぱってくのは難儀だアから、彼処あすこ沼辺ぬまべりよしかげで、火をけて此の死人しびとを火葬にしてはどうだ、そうして其の骨を沼の中へ打擲ぶっぽり込んでしまえば
「おっ、くせえ、ふわふわ湯具を蹴出すない。」と鼻をつまみて舌を吐きぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「しゃらくせえ、来いッ、爺奴」
くせえからいやなんだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「ウエツ、くせえ……」
フローラとフォーナ (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
長「魚が新らしいのに、船でくせえ飯を喰った挙句あげくだったからよ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
多助手前てめえを抱いて往ってくせい飯を喰わせるからそう思え
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)