腰骨こしぼね)” の例文
赤い佐渡牛は引割と言つて、腰骨こしぼねを左右に切開かれ、其骨と骨との間へ横木を入れられて、逆方さかさまに高く釣るし上げられることになつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なにやらかたいものに、いやというほど腰骨こしぼねをぶっつけた。手さぐりで、そこに、いすがひっくりかえっていたことが、やっとのみこめた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おび一重ひとへひだり腰骨こしぼねところでだらりとむすんであつた。兩方りやうはうはしあかきれふちをとつてある。あら棒縞ぼうじま染拔そめぬきでそれはうまかざりの鉢卷はちまきもちひる布片きれであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たけ網代あじろにあんだ駕籠かごである。山をとばすにはかるくってくっきょうな品物。それへ、さいぜん、忍剣にんけん鉄杖てつじょう腰骨こしぼねをドンとやられた、蚕婆かいこばばあっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老人は、自分の夢を語るのに一生懸命で、キャラコさんの腰骨こしぼねのあたりからソッとのぞきだしている、目のつんだきれいな人参の葉っぱに気がつかなかった。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
あさひさす一人ひとり老爺ぢゞい腰骨こしぼねんで、ものをさがふうして歩行あるいたが、少時しばらくして引返ひきかへした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「はい。」と床屋は腰骨こしぼねを蹴飛ばされたやうに、飛上つて帰つて来た。可哀かあいさうに床屋の耳には世界中が仙台平の袴になつたやうに、其辺そこらがきゆう/\やかましく鳴り出した。
腰骨こしぼねにも横骨よこぼねにもこれまた異状はない、右の方のすねの骨が折れている」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
をられ或は腰骨こしぼね腋腹骨あばらぼね皆打折れて即死せしもあり適々たま/\未だしなざるも然も哀れ氣にうめさま心地こゝちよくこそ見えたりけれ後藤は是をかへりみてヤレ/\たはいもなき弱虫よわむしめら只一打にて逃散にげちつたりシテまだ死切しにきら奴輩やつばら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たまひ、なんちこれもつ桃奴もゝめ腰骨こしぼね微塵みぢんくたけよとありければ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
丘署長は、リューマチの気味で痛い腰骨こしぼねを押えながら、空気工場の門をくぐった。それは何という不気味な建物だったろう。
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
神経の鋭いものだけに、主人を懐しむことも恐れることもはげしいものと見え、すこし主人に残酷な様子が顕れると、もう腰骨こしぼねたかくして前へ進みかねる。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それほど腰骨こしぼねの強い、黙って下の方に働いているような男が、街道に横行する雲助くもすけ仲間と衝突したのは、彼として決して偶然な出来事とも思われなかった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ひっぱずされて(酒精アルコールたたりもあって)身体が宙にクルリと一回転した揚句あげく、イヤというほど腰骨こしぼねをうちつけた。じっと地面にのびているよりほかに仕方がなかった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
正太も帆村も、とびこんだとたんに腰骨こしぼねをいやというほどうち、石牢の底で、死んだようになってぐったりところがっているばかり、ものをいう元気さえなかった。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして腰骨こしぼねをしたたか打って、ながいあいだ呻吟しんぎんしていたメリー号の老船長のただふたりが、船橋に近い一室に連絡のためとめおかれたままで、他は全部、船底にぎゅうぎゅうづめであった。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、靴の先で、五郎造の腰骨こしぼねをいやというほど蹴上げた。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)