せき)” の例文
妻はせきを抜いて実家に帰り、女の子は柳吉の妹の筆子が十八の年で母親代りに面倒めんどうみているが、その子供にも会わせてもらえなかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
学校の先生にはない。しかし、先生でなくてもいいわけだ。いや、先生でない方が却っていいんだよ。一つの学校にせき
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ちょうど維新いしん前後の変動に遭遇そうぐうしているのだから、母が身売りをした新町九軒の粉川と云う家も、輿入こしいれの前に一時せきを入れていた今橋の浦門と云う養家も
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
つまるところここまでが、真正ほんとう意味いみ神様かみさまなので、わたくしどものように帰幽後きゆうごかみとしてまつられるのは真正ほんとうかみではありませぬ。ただ神界しんかいせきいているというだけで……。
みちを学びしんを修めたから、その功が満ちぎょうって、照道大寿真しょうどうだいじゅしんと呼ばれるようになっておるが、近ぢかのうちに、地仙ちせんせきを脱して、天仙てんせんになることになっておる、この霊窟れいくつ
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかし、すでにあなたは朝廷からあずかった三軍を征途にうしない、また三千の連環馬軍れんかんばぐん殲滅せんめつされ、いわばせきなき敗軍の孤将にひとしい。どの顔さげおめおめ都へお帰りになれようか
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつ抉せられてかつ罵り、血を含んでただち御袍ぎょほうく。すなわち命じてその皮をぎ、長安門ちょうあんもんつなぎ、骨肉を砕磔さいたくす。清帝の夢に入って剣を執って追いて御座をめぐる。帝めて、清の族をせききょうせきす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それかとって、子供をかかえて死ぬには、世間に対してぶざまであったし、自分一人で死ぬのは安いことではあったけれども、まだせきもなく産院に放っておかれている子供が、不憫ふびんでもあった。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
かれ高野山かうやさんせきくものだといつた、年配ねんぱい四十五六しじふごろく柔和にうわな、何等なんらえぬ、可懐なつかしい、おとなしやかな風采とりなりで、羅紗らしや角袖かくそで外套ぐわいたうて、しろのふらんねるの襟巻えりまきめ、土耳古形とるこがたばうかむ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
人の運動のさまたげをする、ことにどこの烏だかせきもない分在ぶんざいで、人の塀へとまるという法があるもんかと思ったから、通るんだおいきたまえと声をかけた。真先の烏はこっちを見てにやにや笑っている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「氏は、帰化きか日本人です。その前は、印度インドせきがありました」
それに、上級学校にせきをおかなくても、それぐらいの知識が得られるということを一般いっぱんの勤労青年に知ってもらうこともたいせつではないでしょうか。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それからかれ以上いじょう仰天ぎょうてんしたのは、使者がもたらしてきたことによって、はじめてことの真相しんそうを知った大久保石見守おおくぼいわみのかみであり、和田呂宋兵衛わだるそんべえであり、そのほか徳川家とくがわけせきをおくものすべてであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは高野山こうやさんせきを置くものだといった、年配四十五六、柔和にゅうわななんらのも見えぬ、なつかしい、おとなしやかな風采とりなりで、羅紗らしゃ角袖かくそで外套がいとうを着て、白のふらんねるの襟巻えりまきをしめ、土耳古形トルコがたぼうかぶ
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
杉山は現在文部省の社会教育課にせきをおいて、主として青年教育の事務を担当している人だが、かつての朝倉先生の教え子で、田沼たぬま先生とも近づきがあり
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
聖護院にせきを持つ播磨房はりまぼう弁円である。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄の恭一きょういちは、現在東大文学部の三年にせきをおいている。道江は、女学校卒業後、しきりに女子大入学を希望していたが、何かの都合でそれが実現できなかったらしい。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
仲間なかませき
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)