立戻たちもど)” の例文
取極とりきめて利兵衞は立戻たちもどり其段長八へ物語りしに夫婦は利兵衞のほねをりをねぎらひ厚く禮をぞのべたりけりさて翌日にもなりければ長八は娘お幸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うたがうて立戻たちもどり、わし所行しょぎゃううかゝひなどいたさうなら、てん照覽せうらんあれ、おのれが四たい寸々すん/″\切裂きりさき、くことをらぬこのはかこやすべくらさうぞよ。
しかし一年ばかりののち途中の光景にも少しきて来た頃私の家は再び小石川の旧宅に立戻たちもどる事になった。
(もとに立戻たちもどりて、又すすきの中より、此のたびは一領の天幕テントを引出し、卓子テエブルおおうて建廻たてまはす。三羽の烏、左右より此を手伝ふ。天幕テントうちは、けんぶつ席より見えざるあつらへ。)おたのしみだわね。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
みちあるくにもうへことなく、筋向すじむかふのふでやに子供こどもづれのこゑけばことそしらるゝかとなさけなく、そしらぬかほ鰻屋うなぎやかどぎては四邊あたり人目ひとめすきをうかゞひ、立戻たちもどつてとき心地こゝち
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
麹町三丁目庄兵衞地借瀬戸物渡世忠兵衞同人妻とみ 其方共八ヶ年以前平川天神裏門うらもん前にて町醫師村井長庵こと雨中うちうかさもた立戻たちもどり候を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その後を追いかけて行った時、ここにたちまち情交が結ばれ、涼しくなって東京に立戻たちもどると間もなく女は玉突場を売払う、重吉は下宿を引上げる。そして二人は一軒家を借りた。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
村中へ知らせず日暮ひぐれて立出させし所に猿島さるしま河原迄いた火打ひうち道具を失念しつねん致したるを心付昌次郎はとり立戻たちもどる時私しは又たくにて心付子供等があと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おもて窓際まどぎはまで立戻たちもどつて雨戸あまどの一枚をすこしばかり引きけて往来わうらいながめたけれど、向側むかうがは軒燈けんとうには酒屋らしい記号しるしのものは一ツも見えず、場末ばすゑまちよひながらにもう大方おほかたは戸をめてゐて
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)