稼業かげふ)” の例文
「元柳橋のところに、繋いである筈です。爲五郎が釣船に使つて居ましたが、近頃金が入つて、稼業かげふも投つたらかしのやうですから」
まであんずることはあるまい。交際つきあひのありがちな稼業かげふこと途中とちうともだちにさそはれて、新宿しんじゆくあたりへぐれたのだ、とおもへばむのであるから。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
室蘭線の停車場苫小牧とまこまいで料理店をやつてゐるかみさんだが、その稼業かげふでは儲けが少いので、人のやらない事業をと思つて、そこに考へがついたのださうだ。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
肝腎かんじん稼業かげふのお稽古もしないで、色情さかりのついた犬みたやうに、一體何處どこ彷徨うろついて歩いてゐるんだよ。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
何で乳くさい子供の顔見て発心ほつしんが出来ませう、遊んで遊んで遊び抜いて、んで呑んで呑み尽して、家も稼業かげふもそつちけにはし一本もたぬやうに成つたは一昨々年さきおととし
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
名誉とは何事です、誰の名誉に関はるのです、殺人と掠奪りやくだつ稼業かげふにする汝等なんぢらに、何で人間の名誉がありませうか、——女性によせい全体の権利と安寧との為めに、必ず之を公にして、社会の制裁力を
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
なぐるよ、八。金儲けが好きで、こんな稼業かげふが勤まるかよ。小泥棒を追ひ廻してるこちとらぢやないか、馬鹿々々しい」
なんちゝくさい子供こどもかほ發心ほつしん出來できませう、あそんであそんであそいて、んでんでつくして、いへ稼業かげふもそつちけにはしぽんもたぬやうにつたは一昨々年さきおとゝし
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なに稼業かげふならいではないか、天秤棒てんびんぼうかついだつて楫棒かぢぼうにぎつたつて、だれに、なにきまりがわるいね。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大違おほちげエよ、此夏脚気踏み出して稼業かげふは出来ねエ、かゝあ情夫をとこ逃走かけおちする、腰のたゝねエおやが、乳のい子を抱いて泣いてると云ふ世話場よ、そこで養育院へ送られて、当時すこぶる安泰だと云ふことだ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「あなたはいいか知れませんが、わたしの稼業かげふの爲めにはなりません。」
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「濟まなかつたな、朝つぱら飛込んで。稼業かげふが稼業だから、忙しくなると、遠慮ばかりもしてゐられないのだよ」
それよりは取直とりなほして稼業かげふせいしてすこしの元手もとでこしらへるやうにこゝろがけてくだされ、おまへよはられてはわたし此子このこうすることもならで、それこそ路頭ろたうまよはねばりませぬ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
勉強べんきやう出來できず、稼業かげふ仕事しごと捗取はかどらず、持餘もてあました身體からだ春寒はるさむ炬燵こたつはふんで、引被ひつかついでぞたりけるが、時々とき/″\掛蒲團かけぶとんえりからかほして、あゝ、うゝ、と歎息ためいきして、ふう
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
主人あるじと同年輩の四十五六、同じ稼業かげふには相違ありませんが、これは人に金を貸す方ではなく、始終借りて居る方で、酒も呑み、遊びも好き、身裝みなりも相當で
それよりは気を取直して稼業かげふに精を出して少しの元手もこしらへるやうに心がけて下され、お前に弱られては私もこの子もどうする事もならで、それこそ路頭に迷はねば成りませぬ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「久し振りだね、彦兄イ。眼と鼻の間に住んでゐても、稼業かげふが違ふと、斯うも逢はないものか」
「ところが、江戸の町の眞ん中を、存分に駈け出しても、一向人の驚かない稼業かげふがある」
「成程、それは大變だらう、——お前の父さんといふのは何だえ、稼業かげふは?」
「いろ/\見えましたよ。私はこんな稼業かげふをしてゐる位ですから、年にしちや眼の良いのが自慢で、師匠が毎日晝湯へ入つて來て、大肌脱で化粧する圖には當てられ續けて居りますが——」
「直助が承知でつたんだらう。——兎に角、あの男の稼業かげふをもつとよく知り度い。氣の毒だが下つ引を四五人り出して、直助の身許と身上と商賣のことを、もつとよく調べ拔いてくれ」
「永い間斯んな稼業かげふをして居るが、變死人を見るのはつく/″\厭だな」
「なアーにそれに及ぶのか、惡者を縛るのがこちとらの稼業かげふだ」