祖母ばば)” の例文
祖母ばば谷、餓鬼谷、後立山谷、栂谷及針木谷という順になって、後立山谷は東谷に、栂谷は棒小屋沢にそれぞれ相当するらしく思える。
……兄が台治荘たいじそう滕県城とうけんじょうで戦死してから、祖父じじ祖母ばばがあまり淋しがるので、こちらへ帰って来ましたの……もう二年になりますわ。
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この時はもう祖母ばばも母も死んでしまい、私は叔母の家の厄介やっかいになりながら、村の小学校に出してもらって月五円の給料を受けていました。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あづけ置て立出たちいでしが其後一向に歸り來らず然に昨年祖母ばば病死びやうしし殘るは私し一人と成りせめては今一度對面たいめんし度と存ず夫故に伊勢參宮より故郷こきやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大きな松が枝を広げて居る下に、次郎さんの祖母ばばさんや伯母おばさんの墓がある。其の祖母さんの墓と向き合いに、次郎さんの棺はめられた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
祖母ばばさまになにか話しがあるような口ぶりでした」そして帯刀は祖母に魚籠を示した、「いい形のおち鮎がだいぶありますが、ごらんになりますか」
「何の、お賑やかで何よりでございます。私共ももう直ぐお祖父じじさま、お祖母ばばさまでございますが、お宅では?」
伊太利亜の古陶 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
祖母ばばさまがあちらへ来いと言うからおいで、と言ッていろいろ勧めた,自分の本心は往きたかッたので渡りに舟という姉の言葉、すぐ往けばよかッたが
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
「何私から云うと、実はあの文庫の方がむしろ大切な品でしてね。祖母ばばが昔し御殿へ勤めていた時分、いただいたんだとか云って、まあ記念かたみのようなものですから」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしおさな時分じぶんには祖父ぢぢ祖母ばばもまだ存命ぞんめいで、それはそれはにもれたいほどわたくし寵愛ちょうあいしてくれました。
誰様どなたも又のちほど遊ばせて下され、これは御世話と筆やの妻にも挨拶あいさつして、祖母ばばが自からの迎ひに正太いやが言はれず、そのまま連れて帰らるるあとはにはかにさびしく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「さアさあそこに見えられる、そなたの祖父じじさまお祖母ばばさま、お船に乗って、ようこそはるばる、そら見えた、まだ見えぬ、——おう、おう、そなたは目をつぶっているのか」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
『わからない児だの。そちの祖父じじ様や祖母ばば様の御命日でも、精進しょうじんをするではないか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに奥平の屋敷が汐留しおどめにあって、彼処あすこに居る(別室に居る年寄を指して)一太郎いちたろうのお祖母ばばさんがその屋敷に居るので、五歳いつつばかりの一太郎が前夜からお祖母さんの処にとまって居た所が
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
はあ、いつも私のおふくろ——この子供の祖母ばばですな、それが守してるんすが、その今年八つになる私の娘が、おぶいたがつて泣くもんだから、ちよつくら背負しよはせてやつたんだつていひやす。
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
お前の母はわしの娘だから、わしはお前の祖母ばばだ。
遺伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
祖母ばばは眼鏡エかけ
蓮華岳から越中沢岳(又は栂山)に至る迄の立山山脈との間に発源する祖父じじ谷・祖母ばば谷・五郎沢・薬師沢・岩苔いわごけ谷等を合せたものである。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「あたしがここに居てやりますと、祖父じじ祖母ばばもたいへんに嬉しがるので、それを振りすててまで東京へ出たいとは思いません」
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
うた敏速さそくの寶澤は空泣そらなきしてさても私しの親父おや養子やうしにて母は私しが二ツの年病死びやうしし夫より祖母ばば養育やういく成長ひとゝなりしが十一歳の年に親父ちち故郷こきやうの熊本へ行とて祖母ばばに私しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは正太がうまの日の買物と見えぬ、理由わけしらぬ人は小首やかたぶけん町内一の財産家ものもちといふに、家内は祖母ばば此子これ二人、よろづかぎに下腹冷えて留守は見渡しの総長屋
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それからこちらの世界せかいからの見舞者みまいては、だい一が、ははよりもきへ歿なくなったちち、つづいて祖父じじ祖母ばば肉身にくしん親類しんるい縁者えんじゃしたしいお友達ともだち、それからはは守護霊しゅごれい司配霊しはいれい産土うぶすな御神使おつかい
父には五つの歳に別れまして、母と祖母ばばとの手で育てられ、一反ばかりの広い屋敷に、山茶花さざんかもあり百日紅さるすべりもあり、黄金色の茘枝れいしの実が袖垣そでがきに下っていたのは今も眼の先にちらつきます。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
(いや、祖母ばばさまは、いなくはない……。たしかにいる)
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祖父じじ谷、祖母ばば谷の上流は五指を開いたように小谷が岐れて、悽愴な光を放つ赭色のガレが、酷たらしく山の肌に喰い込んでいる。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「……関原弥之助。祖父じじ祖母ばばがあなたをお見かけしたら、きっと泣き出してしまったでしょう、兄だと思って」
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
これが昔気質の祖母ばばの気に入りません、ややともすると母に向いまして
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
桑崎山の東にあたる辺には、大滝や深淀などという徒渉としょうに困難な場所があって、谷の中を遡ることは相当に骨が折れる。殊に北俣川の合流点は黒部の祖母ばば谷に似て恐ろしく谷が深い。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
其間黒部川の一部に触れたことは、記録に存しているし、又天保頃の作と想われる絵図にれば、祖母ばば谷以下はながれに沿うて道が開け、中流はだいらより御前ごぜん谷の下手に至る路ありしものの如く
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)