磔刑はりつけ)” の例文
そんな事を言つたつて、あれだけの好い娘を、親殺しの罪で磔刑はりつけにあげちや、天道樣——なに、神農樣に濟まないぢやありませんか。
詐欺師いかさましの卑劣漢の裏切り者の磔刑はりつけやろうの獄門ども、日ごろの恩を仇にしてこのどたん場におれの首を絞めるとはうぬどうしてくれよう
父の伊志田氏の方は、ゆうべ、まったく知らぬまに、地下室へつれこまれ、ふと気がつくと、いつの間にか磔刑はりつけの形で壁に縛られていた。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは当主光長みつながの母堂(忠直ただなおの奥方にして、二代将軍秀忠ひでただ愛女あいじょ)の寝室近くであった。その為に罪最も重く磔刑はりつけに処せられたのであった。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
もっと分りよく云やあ、磔刑はりつけや縛り首になっちゃたまらねえから、涙をのんで、食えねえ中を、一揆いっきも起こさずにやって来たんだ
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
奥州のある城下町で切支丹宗門の者十一人が磔刑はりつけにかかったという噂を聴いた時に、彼はすぐに伝兵衛父子おやこの名を思い出した。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さて其のち、程もなく初花楼の初花太夫が稲佐の浜にて磔刑はりつけになるとの噂、高まりければ、流石さすがの鬼畜の道に陥りたるわれも、余りの事に心動きつ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ほいと非人の階級は、頼まれれば生きた人間の磔刑はりつけをさえ請負うけおうのであるから、犬なんぞは朝飯前のものであります。
れはかね/″\書物しよもつんで、磔刑はりつけ獄門ごくもん打首うちくび、それらの死刑しけいけつして、刑罰けいばつでないといふことをかんがへてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そして自ら朝鮮を侵略して行つた此猿英雄は一度でそれがらし得るつもりで、先づ廿六人の「侵略者」を長崎の立山で磔刑はりつけにし、虐殺の先鞭をつけた。
昔、磔刑はりつけになる人間は、十字架じかの上へ乗せられると、すでに半分正気しょうきを失って居たと云うが、己は椅子にこしをかけたとたんにもう、催眠術にかゝッて居た。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
間もなく浅草鳥越において勾坂甚内は磔刑はりつけに処せられ無残の最後をとげたそうであるが、庄司、富沢の二甚内はめでたく天寿を全うし畳の上で往生をとげ
三甚内 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あのクリストの磔刑はりつけの像よりも更に血の汗を浴びて、まるで首をめられている人のように感じました。
生き磔刑はりつけより死んだ後塩漬の上磔刑になるような目にあってはならぬ、初めは我もこれほどに深くも思い寄らなんだが、汝が我の対面むこうにたったその意気張りから
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
早く其の刀を取返し、あだを討って御帰参になるようにして下せえ、今お前がいう通り、主人と知って刃向はむけだてをした丈助だから、磔刑はりつけに上っても飽き足らねえ奴だが
壁の一角に磔刑はりつけられて、そのまんま年老いたマリイ・マグダレン。そして、その肩さきの、雪。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
たゞこの平凡な一句でも自分には百万の火箭を放つべき堅固なゆみづるだ。昔希臘ギリシヤといふ国があつた。基督キリスト磔刑はりつけにされた。人は生れた時何物をも持つて居ないが精神だけは持つて居る。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
つまりその結果、前方にある聖母マリアが十字架と重なるので、ちょうど聖母マリア磔刑はりつけになったような仮像が起る訳でしょう。云うまでもなく、その置き換えた人物と云うのは、婦人なのです。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
『あれはね、宗五郎松って、佐倉宗五郎が、磔刑はりつけになった松なんですよ。』
青白き夢 (新字旧仮名) / 素木しづ(著)
その麦畑の畦に、ところどころに鄙びた基督キリスト磔刑はりつけの石像が立っていまして、それに士地の農夫達の手作りの花環などが供えられてあります。ちょうど日本の田舎道に在る石地蔵の感じです。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
例の宗吾一家が磔刑はりつけになった後の幕で、堀田家ほったけの奥殿に宗吾親子の幽霊が出て堀田侯を悩ますところ、あんな芝居はここ二三十年来どこの田舎へ行っても上演されたという事を聞いた事もないが
怪談 (新字新仮名) / 平山蘆江(著)
阿倍野の墓地で賀川豊彦はいよいよ磔刑はりつけにされることになった。
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
耶蘇ヤソ磔刑はりつけだから怖いよ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「錢形の親分さん、九百九十兩盜つた野郎を搜し出して、磔刑はりつけにするなり、八つざきにするなり、思ひ知らせてやつて下さい、お願ひ」
贋金づかいの同類と見なされて、この鈴ヶ森で磔刑はりつけになりてえのか。女にばかり義理を立てて、病人の親に泣きを見せるな。この親不孝野郎め
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
白洲で、二番目の時、其方ども五人、当月二十七日、磔刑はりつけを命じる——と、それだけのいい渡しをうけたに過ぎなかった。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこしばかりの賄賂まひなひしみし御蔭にて憐れなる初花太夫は磔刑はりつけ火焙ひあぶりか。音に名高き初花楼も取潰しのほか候まじ
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから二人が召捕られて、とうとうあの通り磔刑はりつけにかかって、穴の掘り手のない非業ひごう最期さいごを遂げました——
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
究竟くっきょう捕虜とりこがしはせぬ! 引っ捕えてさか磔刑はりつけ、その覚悟あって参ったか? 返答致せ、えい、どうじゃ⁉
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして自ら朝鮮を侵略して行ったこのさる英雄は一度でそれが懲らしうるつもりで、まず二十六人の「侵略者」を長崎の立山たてやま磔刑はりつけにし、虐殺の先鞭せんべんをつけた。
それは併し磔刑はりつけにして、現世このよに有るべき理が無いのに、その時の若衆そっくりのが、他の土民等と道端に土下座しながら、面を上げてこちらを見詰めていた。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
ただこの平凡な一句でも自分には百萬の火箭を放つべき堅固なつるだ。昔希臘ギリシヤといふ國があつた。基督が磔刑はりつけにされた。人は生れた時何物をも持つて居ないが精神だけは持つて居る。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
親に不孝をする奴は磔刑はりつけに上げるてえじゃアねえか、其の親孝行の者を牢ん中へ押込んで、腰の抜けた親父一人残して置くてえ家主いえぬしの根性が分らねえ、お救米すくいまいでも願って遣るが宜いんだ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……幹部役人と旦那衆の懇談は終わった、すなわち、主食副食をはじめ日用雑貨の割当を削減し、価格を倍に値上げする、そしてぬけ買いを厳重に取り締まる、犯した者は逆さ磔刑はりつけにする。
そこに十字架上のキリストのように、磔刑はりつけになっている人の姿があった。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
小三郎さんはあの通りの人ですから、自分が磔刑はりつけになるまでも、養ひ親の浪五郎の首に繩のつくやうなことは口へ出せなかつたのです
白洲の吟味ぶりも、蔵六の話も、月半ば過ぎだろうという事だのに、どうして磔刑はりつけの日がそんなに急になったのだろうか。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あいつとても引き廻しや磔刑はりつけになるよりも、いっそ一と思いに自滅した方がましだろうと思いましたので、わざとああ云っておどかしてやったんです。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大恩ある母上様を初め、御いつくしみ深い御楼主様、鴇母様おばしやま新造様あねしやままでも皆、お役人衆のお憎しみの為めに、かやうに磔刑はりつけにされるので御座りまする。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お銀様は、土器野かわらけのにて行われた味鋺あじまの子鉄の磔刑はりつけの場面の最初から最後までを、すべて見届けた一人には相違ありませんでしたが、唯一人とは言えませんでした。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「その口さえも八つ裂きに、逆さ磔刑はりつけ轆轤ろくろ引き、燔刑ひあぶり梟首ごくもん、承知の上でか?」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
最早のがれる道はない、毒薬を盛ったに相違ないと云う事がすみやかに分りましたから、此の者はしゅう殺しに当りますから、磔刑はりつけになるべき処を、吉田監物の家が断絶になるから家事不取締りで
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの恐ろしい磔刑はりつけの姿で、壁に縛りつけられたというのである。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「もし誰かにきかれたら答えろ、当市の生活は安穏であり満足である、衣食住はすべて潤沢であり、政治は公明である、いささかも不平はない、——誰にきかれてもこう答えろ、もしこれにそむく奴があれば逆さ磔刑はりつけにしてのこぎりびきだぞ」
小三郎さんはあの通りの人ですから、自分が磔刑はりつけになるまでも、養い親の浪五郎の首に縄のつくようなことは口へ出せなかったのです
ついでに申し上げますが、御金蔵やぶりの藤十郎と富蔵は、安政四年二月二十六日に召し捕られ、五月十三日に千住の小塚ッ原で磔刑はりつけになりました。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「きょう三木川に引き出し、父の中村忠滋や城兵の遠見しているまえで、磔刑はりつけにしてくるる所存しょぞんです」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死罪にしてもね、首を斬ったり磔刑はりつけにしたりして、血を見せることはできねえ規則なんだ、不浄を見せては神様へ恐れ多いというんで、死罪の仕方が変ってるんだよ。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
汝をおっ殺すべえと思ってるところへ、汝が来るてえのはばちだ、只た一人の忰を親の身として殺したんだぞ野郎、御主人さまへ刃向はむけだてをしたんだから、汝は磔刑はりつけにあがる程の悪党だが
今の未決監みけつや監獄なぞには。影も見せない道具の数々。鉄の鎖に袖無し襯衣シャツだよ。手枷てかせ、足枷。磔刑はりつけ寝台じゃ。小窓開いた石箱なんぞが。ズラリズラット並んだ光景ありさま。どんな極重悪人とても。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)