白金プラチナ)” の例文
それを武器として大詐欺師に対向あたり、大詐欺師をして屈伏せしめ、白金プラチナ三十枚を詐欺師の手から、巻き上げようとしたのであった。
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……時計の鎖かて、東京あたりから來やはる人見なはれ、白味の勝つた金の細い粹なのをしてはりまんがな。……そやなけれや白金プラチナだす。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しかもこの、白金プラチナの神経を持った女を、一目見た時から妖しく胸をたれた自分自身に、私は狼狽に似た驚きを覚えたのである。
白金神経の少女 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
たとひ、青年からあゝした依託を受けたとしても、たゞ黙つて、此の高価な白金プラチナの時計を、死屍から持ち去つてもいゝだらうか。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
溺死体できしたいが高価な衣類を着用していたなら(六郎氏はあの夜大島おおしまの袷に鹽瀬の羽織を重ね、白金プラチナの懐中時計を所持して居りました)
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
例之、艶なる女優が瀧に臨んで、白金プラチナの釵を投げうつところ、其處には作者が常に好んで描く人間の意氣が爽かに動いてゐる。
「指環は、ごらんの通り、婦人の小型、金剛石いしは一・半カラット、白金プラチナだい、時価二千円ならば当店でも買えるという品物なんですよ、諸君」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見るかぎり白一色に結晶し、白金プラチナよりも堅く厳めしい大氷原のただなかで、眼をくすぐるような都雅な色彩に接しようなどとは思っていなかった。
南極記 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
指環をめた白い指をツト挙げて、びん後毛おくれげを掻いた次手ついでに、白金プラチナ高彫たかぼりの、翼に金剛石ダイヤちりばめ、目には血膸玉スルウドストンくちばしと爪に緑宝玉エメラルド象嵌ぞうがんした
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その黄色の漣が幽かな陰影の刺戟を顫はせて白金プラチナの微光に投げかくるとき封じられたすべての哀傷が恰も冷たい鍼医はりゐの銀針のやうに、或は黄緑、青紅
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして、その上に、一つには紅玉ルビー一つにはアレキサンドライトが、それぞれ白金プラチナの台の上で、百二、三十カラットもあろうと思われる、マーキーズ形の凸刻面を輝かしていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
四十四五の新調モーニングの白金プラチナ鎖だ。新聞で知っている電力重役、安島二郎氏だ。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
白金プラチナ鍍金めっきした石英糸に通過せしめ、糸の両側に電磁石を置くと、糸を通過する電流の多寡によって、その糸が左右に振れるから、その糸をアーク燈で照すと、糸の影が左右に大きく振れ
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
鋼線はりがねが焼き切れるやうな、輝やきと光沢を帯びて、燃え栄つてゐたのも、是等の山々であつた、その山の白い頭を、いや白くして、白金プラチナの輝やきを帯びてゐた氷雪が、日の光と、生命の歓楽に
天竜川 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
白金プラチナ色の月死せる如く頭の真上に懸り
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
たとい、青年からあゝした依託を受けたとしても、たゞ黙って、の高価な白金プラチナの時計を、死屍から持ち去ってもいゝだろうか。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それは被害者の左の薬指にはめられた高価な宝石入りの白金プラチナの指環がそのまま残っていた事によっても明かであった。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たまさかに鶸茶の刈田、小豆いろ、温かきいろ、うち湿しめる珈琲のつち下田しもだにはいくつ稲村白金プラチナの笠めきなごめ、上畑は緑の縞目、わづかにも麦ぞ萠えたる。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「君、あいつは詐欺師なんだ。あいつは白金プラチナを詐欺したんだ。……勿論君も知ってるだろう、大詐欺師の佐伯準一郎ね、ありゃアあいつの片割れなんだ」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「へーえ……では、左ききというのはどうしたわけなんですか、白金プラチナ線を入れても、それはそれで神経が自然に、又伸びてきてつながったのじゃないですか」
白金神経の少女 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
その指には、白金プラチナ小蛇こへびの目に、小さな黒金剛石くろダイヤ象嵌ぞうがんしたのが、影の白魚のごとくまつわっていたのである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みづからを白金プラチナしつと知りながら……
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
金や白金プラチナや宝石の装身具を身体のあらゆる部分に、燦かしてゐるやうな人達が、乗り合はしてゐないことは信一郎にとつて結局気楽だつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
神経を白金プラチナと取りかえたり、脳髄との連絡を逆にされたりした為めであろうとは、想像もつかぬことであった。
白金神経の少女 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
三十枚の白金プラチナ貨幣、その紋章のどの辺りかに、巧妙な図案式文字をもって彫み込んであるのだということです。
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
下田しもだにはいくつ稲村白金プラチナの笠めきなごめ、上畑かみばたは緑の縞目、わづかにも麦ぞ萠えたる。その畑に動く群禽むらどり、つくづくと尾羽根振りては、また空へ飛び立ちかける。
婀娜あだな声、暗中やみ留南奇とめきがはっと立つ。衣摺きぬずれの音するすると、しばらくして、隔てのふすまと手を掛けた、ひらめく稲妻、輝く白金プラチナ、きらりと指環の小蛇を射る。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
薄く削つた白金プラチナ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
其処そこ白金プラチナの時計のことが、書いてあるでしょう。お兄さんは、死なれる間際まぎわに、その時計を返してれと云われたのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これだけは工夫した女優の所作で、手には白金プラチナ匕首あいくちのごとく輝いて、凄艶せいえん比類なき風情であった。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おまへがしみじみと思ひ知りえた時、微かな夏と心との感覚をわれとわが指さきによせあつめて浮彫の寂しい小さな白金プラチナの函のなかに入れ、而してふたをかたく閉して、幽かな薄明の中にさし置けよ。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
而も池の中の蛙が、子供が戯れに投げた石に当つて死んだやうに、貴女が戯れに与へた白金プラチナの時計に依つて死んだのです。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
此だけは工夫した女優の所作しょさで、手には白金プラチナ匕首あいくちの如く輝いて、凄艶せいえん比類なき風情ふぜいであつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
藍をいぶして、虫のごと白金プラチナのごと閃めけり。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかも池の中の蛙が、子供が戯れに投げた石に当って死んだように、貴女が戯れに与えた白金プラチナの時計に依って死んだのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と仰山に二人がおびえた。女弟子の驚いたのなぞは構わないが、読者をおびやかしては不可いけない。滝壷へ投沈めた同じ白金プラチナの釵が、その日のうちに再び紫玉の黒髪に戻った仔細しさいを言おう。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くさい栗の花の白金プラチナを腐らし
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
仰山ぎょうさんに二人がおびえた。女弟子の驚いたのなぞは構はないが、読者をおびやかしては不可いけない。滝壺たきつぼ投沈なげしずめた同じ白金プラチナの釵が、其の日のうちに再び紫玉の黒髪に戻つた仔細を言はう。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白金プラチナの羽の散るさまに、ちらちらと映ると、釵は滝壺に真蒼まっさおな水に沈んでく。……あわれ、のろわれたる仙禽せんきんよ。おんみは熱帯の鬱林うつりんに放たれずして、山地の碧潭へきたんたくされたのである。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
意気地いきじも張も葉がくれのやみに、男を思うあわれさよ。鶴を折る手と、中指に、白金プラチナ白蛇はくだ輝く手と、合せた膝に、三筋五筋観世捻かんぜより、柳の糸に、もつれもつるる、鼓の緒にも染めてまし。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、松葉が光る、白金プラチナに相違ない。」
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)