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狐格子
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きつねがうし
壇を
落ちるやうに
下りた
時、
黒い
狐格子を
背後にして、
婦は
斜違に
其處に
立つたが、
呀、
足許に、
早やあの
毛むくぢやらの
三俵法師だ。
庭園の隅の休憩所に擬した物に壁へ鍵の手に
狐格子を
廻らし
其上に
刷硝子の
角行灯を掛けて中に電灯を
点け、
其前に一脚の長椅子を据ゑて周囲に
紅い小菊を植ゑたのなどが其れだ。
やがて
二人は、並んで
拜殿の前まで行つて、
狐格子の間から内部を
覗いた。
成程、
狐格子に
釣つて
置いた
提灯は
何時までも
蝋燭が
消たずには
居らぬ。……
気が
着くと
板椽に
腰を
落し、
段に
脚を
投げてぐつたりして
居た。
はつと
思へば、
烏ほどの
真黒な
鳥が
一羽虫蝕だらけの
格天井を
颯と
掠めて
狐格子をばさりと
飛出す……
横へ
切れて
田畝道を、
向ふへ、
一方が
山の
裙、
片傍を
一叢の
森で
仕切つた
真中が、
茫と
展けて、
草の
生が
朧月に、
雲の
簇がるやうな
奥に、
祠の
狐格子を
洩れる
灯が
(
又……
遣直しぢや。)と
呟きながら、
其の
蚤の
巣をぶら
下げると、
私が
茫然とした
間に、のそのそ、と
越中褌の
灸のあとの
有る
尻を
見せて、そして、やがて、
及腰の
祠の
狐格子を
覗くのが
見えた。
早く
申しませう。……
其の
狐格子を
開けますとね、
何うです……