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燗徳利
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かんどくり
ふりがな文庫
“
燗徳利
(
かんどくり
)” の例文
「旦那はこれから旅へいらっしゃるんですか」主人の与平が
燗徳利
(
かんどくり
)
を出しながら
訊
(
き
)
いた。「それとも旅からお帰りになったんですか」
夜の蝶
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ふた月も、稼ぎを忘れて、
燗徳利
(
かんどくり
)
みてえに、湯にばかりつかっていたせいか、俺も、すこし焼きが戻ったよ。……だが、驚くのも無理はねえ。
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『およしよ
嘘
(
うそ
)
だよ、ばかばかしい。』女房はしかるように言って、
燗徳利
(
かんどくり
)
をちょっと取って見て、『まだあるくせに。』
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ところへ細君は小形の
出雲焼
(
いずもやき
)
の
燗徳利
(
かんどくり
)
を持って来た。主人に
対
(
むか
)
って坐って、一つ
酌
(
しゃく
)
をしながら
微笑
(
えみ
)
を
浮
(
うか
)
べて
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そのうちに瀬戸物のカチ合う音や、
燗徳利
(
かんどくり
)
が風呂に入る音なんぞがしました。それでもって、お角とその絹商人とが差向いで飲みはじめていることがわかりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
裸なる卓に
倚
(
よ
)
れる客の前に据ゑたる土やきの
盃
(
さかずき
)
あり。盃は
円筒形
(
えんとうがた
)
にて、
燗徳利
(
かんどくり
)
四つ五つも併せたる
大
(
おおい
)
さなるに、弓なりのとり手つけて、
金蓋
(
かなふた
)
を
蝶番
(
ちょうつがい
)
に作りて
覆
(
おお
)
ひたり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そのつもりで、——
千破矢
(
ちはや
)
の
雨滴
(
あまだれ
)
という用意は無い——水の手の
燗徳利
(
かんどくり
)
も宵からは傾けず。追加の雪の題が、一つ増しただけ互選のおくれた初夜過ぎに、はじめて約束の酒となった。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのうち
燗徳利
(
かんどくり
)
が
頻繁
(
ひんぱん
)
に往来し始めたら、四方が急に
賑
(
にぎ
)
やかになった。野だ公は恭しく校長の前へ出て
盃
(
さかずき
)
を頂いてる。いやな奴だ。うらなり君は順々に
献酬
(
けんしゅう
)
をして、
一巡周
(
いちじゅんめぐ
)
るつもりとみえる。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは
燗徳利
(
かんどくり
)
を大きくした様な形で、
花瓶
(
かびん
)
を描いたものではないかと思われた。彼はその中へ、非常に
曖昧
(
あいまい
)
な書体で、「
七宝
(
しっぽう
)
」と書いた。それを見ると、私は好奇心にかられて、思わず質問した。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
貞子がつぎつぎと鍋の中を補充してゆく。あまりはずまぬので、肉や野菜が鍋の中に煮えくたびれていた。
銀杏
(
いちょう
)
の葉型の底の開いた
燗徳利
(
かんどくり
)
で、野村は馴れた手つきで
独酌
(
どくしゃく
)
していた。うれしそうだった。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
「あたしおつぎっていうの」女はにっと笑いかけながら
燗徳利
(
かんどくり
)
を持った、「あら、ちっとも減ってないじゃないの、お酌しましょう」
落葉の隣り
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
文身
(
ほりもの
)
の様に
雲竜
(
うんりゅう
)
などの
模様
(
もよう
)
がつぶつぶで記された型絵の
燗徳利
(
かんどくり
)
は女の左の手に、いずれ
内部
(
なか
)
は
磁器
(
せともの
)
ぐすりのかかっていようという
薄鍋
(
うすなべ
)
が
脆
(
もろ
)
げな
鉄線耳
(
はりがねみみ
)
を右の手につままれて出で来る。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
見ているまに、庄次郎は、そこらの
燗徳利
(
かんどくり
)
の酒をひとりで腹へ集めてしまった。またいくらでも入りそうな
恰幅
(
かっぷく
)
なのである。衆寡敵せずは、兵法の定石で、この場合の酒戦は、逆になった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三千代は
燗徳利
(
かんどくり
)
を持って次の間へ立った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
忠太はぶすっとした顔で、自分の盃を市三に差そうとし、気がついたのだろう、途中でやめて、こんどは
燗徳利
(
かんどくり
)
を渡そうとした。
源蔵ヶ原
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と小六は、ガブガブと左の手で、
燗徳利
(
かんどくり
)
からあおりながら、睨みつける。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「でも今日は召上って」おしのはすぐに
燗徳利
(
かんどくり
)
を持った、「ね、お願いですから、今日だけはあたしの
我儘
(
わがまま
)
をきいて下さいまし」
雪と泥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お蔦は、二本めの
燗徳利
(
かんどくり
)
を
銅壺
(
どうこ
)
から上げて、茶碗へ注いだ。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
丸行燈
(
まるあんどん
)
が一つ、赤あかと炭火のおこっている
手焙
(
てあぶ
)
りが二つ、さくらの脇に
燗鍋
(
かんなべ
)
をのせた火鉢があり、それには
燗徳利
(
かんどくり
)
が二本はいっていた。
醜聞
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
矢堂玄蕃はそのまま、居間へ戻ると誰もいなかったが、直衛が手酌で二つ飲むと、佳奈が
燗徳利
(
かんどくり
)
を盆にのせてはいって来た。
改訂御定法
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「今日はいそがしくって」と得石は
燗徳利
(
かんどくり
)
を持ちながら云った、「平松町のほうへ寄る暇がなかった、この次にはきっと持って来ますよ、まあ一つ」
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「いいね、うるさいの結構」源次郎は
燗徳利
(
かんどくり
)
を持った、「おまえが酔ってうるさくなったらさぞ色っぽいだろう、遠慮はいらないから一つあげよう」
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
二人が並んで坐り、貰ったばかりの箱膳を
三方
(
さんぼう
)
の代りに、三三九度の
盃
(
さかずき
)
を交わしただけである。盃は与平の持って来た土器で、酒は
燗徳利
(
かんどくり
)
を使った。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「あらそうじゃないわ、あたしから頼んだことなんですもの」おつるは
燗徳利
(
かんどくり
)
を持った、「ずいぶんいいお燗だこと、あなた熱いのお嫌いじゃなくって」
扇野
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お梅は二人に気づかれないように、そっと来て、
燗徳利
(
かんどくり
)
と小皿の載った盆をそこへ置き、いたずらっぽい眼で二人を眺めながら、にこりと笑って云った。
秋の駕籠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
むろん絵の完成を祝ったのであろう、膳の上にも祝いの肴が並んでいるし、酒も
燗徳利
(
かんどくり
)
ではなく
銚子
(
ちょうし
)
であった。
扇野
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は弥太という中年の船頭を相手に、もうかなり飲んだとみえ、膳の上に
燗徳利
(
かんどくり
)
は一本だが、首まで赤くなっているし、言葉の調子も平生とは違っていた。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして、斎藤夫人が去ってから、まもなくはいって来たあの方は、
燗徳利
(
かんどくり
)
を三本と、
肴
(
さかな
)
の小皿をのせた盆を持っていて、ふらふらしながら夜具の脇に坐った。
やぶからし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
小女
(
こおんな
)
が
燗徳利
(
かんどくり
)
を二本、盆にのせて持って来た。年上の男が
肴
(
さかな
)
を注文し、若いほうの男は酒を調合した。
あすなろう
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ほかの日ではないので、おせんも
燗徳利
(
かんどくり
)
を持って膳のそばに坐り、浮かない気持で二人に酌をした。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
女たちは呼ばれた
芸妓
(
げいぎ
)
というかたちであり、器物とは
燗徳利
(
かんどくり
)
とか
盃
(
さかずき
)
とか、椀や皿小鉢の類いである。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
女たちは呼ばれた
芸妓
(
げいぎ
)
というかたちであり、器物とは
燗徳利
(
かんどくり
)
とか
盃
(
さかずき
)
とか、
椀
(
わん
)
や皿
小鉢
(
こばち
)
の
類
(
たぐ
)
いである。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「げにもっとも」と云って房二郎は、からになった
燗徳利
(
かんどくり
)
を取って振った、「おやじ、酒だ」
へちまの木
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いま来たばかりらしい、二十四五になる芸妓が、
燗徳利
(
かんどくり
)
を持ってにっと頬笑みかけていた。上背のあるすらっとした躯つきで、色が白く、透きとおるように薄い肌をしていた。
扇野
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「お肴はいますぐよ」と酒だけ持って戻って来た女は、膳を一つ、二人のあいだに置いて
燗徳利
(
かんどくり
)
を取り、さぶに酌をしながら栄二を見た、「——まだあたしのこと思いださない」
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おすえは低くうなだれ、左手に
燗徳利
(
かんどくり
)
を持ったまま、右手の指で両の眼がしらを抑えた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
残り少くなった
燗徳利
(
かんどくり
)
をだいじそうに傾けながら、留さんは心から
溜息
(
ためいき
)
をつく。
留さんとその女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
客が混んでいるので、と詫びながら、女は
膳
(
ぜん
)
の上へ
燗徳利
(
かんどくり
)
を置き、酌をした。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
寒さで震えていた昌平は、われ知らず喉が鳴ったが、
燗徳利
(
かんどくり
)
のほかに、なにか肴を盛った小皿を二つ並べられたので、「またか」と思った。これまでの遍歴中、ゆく先ざきでこの手をくった。
七日七夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おわきは
燗徳利
(
かんどくり
)
へ手を伸ばしかけて、「え」とけげんそうに振り向いた。
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
燗徳利
(
かんどくり
)
を一本と、ウィスキー・グラスを二つ、彼の前に置いて自分も腰をかけ、二つのグラスに酒を注ぐと、一つを彼に渡し一つを自分で持って、よ、ろ、し、くと云いながら、例の微笑と凝視とを
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
空いた
燗徳利
(
かんどくり
)
が三四本、
肴
(
さかな
)
の鉢や洋食の皿もかなり並んでいたし、留さんは上機嫌で、陽気に笑ったり話したりしながら、「まあ飲みなせえな」とか、「もっと食いせえ、ま」などとせっついていた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
栄子は「
冷
(
ひや
)
のほうがあとまできいていい」と云い、一升壜からじかに
湯呑
(
ゆのみ
)
へ酒を注いだ。私はそれを見て、自分の
燗徳利
(
かんどくり
)
だけは確保しなければならないと決意し、それを自分の前へしっかりと
据
(
す
)
えた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
空いた
燗徳利
(
かんどくり
)
が三四本、
肴
(
さかな
)
の
鉢
(
はち
)
や洋食の
皿
(
さら
)
もかなり並んでいたし、留さんは
上機嫌
(
じょうきげん
)
で、陽気に笑ったり話したりしながら、「まあ飲みなせえな」とか、「もっと食いせえ、ま」などとせっついていた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おわきは安宅に一種の眼くばせをし、坐って
燗徳利
(
かんどくり
)
を取った。
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
燗
漢検1級
部首:⽕
16画
徳
常用漢字
小4
部首:⼻
14画
利
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
“燗”で始まる語句
燗
燗番
燗鍋
燗酒
燗瓶
燗銅壺
燗冷
燗場
燗部屋