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熱火
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ねつくわ
然れども
別に
社界の
大弊根の
長く
存するありて、
壯年有爲の
士をして
徃々にして
熱火を
踏み
焔柱を
抱くの
苦慘を
快とせしむる
事あり。
他の
村落の
人々が
聞き
傳へて
田圃や
林を
越えて、
其の
間に
各自の
體力を
消耗しつゝ
驅けつけるまでには
大きな
棟は
熱火を四
方に
煽つて
落ちた。
彼はそれをそつと
大事に
傍へ
聚めた。
茶碗や
皿や
凡ての
陶磁器は
熱火に
割ねて
畢つて一つでも
役に
立つものはなかつた。
彼の
熱火に
燒かれて
獨で
冷めた
鉈も
鎌も
凡ての
刄物はもう
役には
立たなかつた。
彼の
手に
完全に
保たれたものは
彼が
自分の
手を
恃んで
居る
唐鍬のみである。