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ふりがな文庫
“
無間
(
むげん
)” の例文
「ねえ、あなた、どうかまあ、落着いてくださいよ。霊のいられるところと現世との間に、
無間
(
むげん
)
のへだたりがあるということをですなあ……」
雲の小径
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
帆綱を握つて身を支へ、
眦
(
まなじり
)
を決して
顧睥
(
こへい
)
するに、万畳の
波丘
(
はきう
)
突如として
無間
(
むげん
)
の
淵谷
(
えんこく
)
と成り、船
幽界
(
いうかい
)
に入らむとして又
忽
(
たちま
)
ちに
雲濤
(
うんたう
)
に乗ぜんとす。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「現世のみならず、永劫の争いじゃぞ。共に、
無間
(
むげん
)
地獄に墜ちて、悪鬼と化しても、争うぞ。一旦の勝を、勝と思うな。三界、三世に
亙
(
わた
)
って争うぞ」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
長順 え、ままよ、さうなりや人をも殺し、われも死に、
無間
(
むげん
)
地獄に落ちば落ちと、
暗夜
(
やみよ
)
の辻にもさまよひしが……
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
この部屋で正気を回復すると同時に、ホッとする間もなく、襲いかかって来た自己忘却の
無間
(
むげん
)
地獄……何の反響も無い……聞ゆるものは時計の音ばかり……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
右の
眼
(
まなこ
)
は「いんへるの」の
無間
(
むげん
)
の暗を見るとも云えど、左の眼は今もなお、「はらいそ」の光を
麗
(
うるわ
)
しと、常に天上を眺むるなり。さればこそ悪において全からず。
るしへる
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「数々の悪業により、
無間
(
むげん
)
地獄に落すつもりで、無間と書くはずでしたが、間の字を書き忘れたままで」
現代語訳 平家物語:06 第六巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
私は叫喚地獄の前に立ち、
無間
(
むげん
)
地獄の前に立った。いや、地獄の名などはどうでもいい。すさまじい
囂音
(
ごうおん
)
が、大地の底からうなりを立てて耳も
聾
(
ろう
)
するばかりに響く。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
而も二人の首の中に『一足
無間
(
むげん
)
』と云う、誓文を含んでいたと云う。さてさて思い切った、豪の者なり
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それで来世は
無間
(
むげん
)
地獄へ真っ倒まに落されて、無量劫の苦しみを忍ぶがよい。その折にこそ自分は西方浄土へ行って、高い所から彼の泣き喚く姿を瞰おろしてやろう。
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
佐良井の
身体
(
からだ
)
は、もんどり打って下へ、
無間
(
むげん
)
地獄へ
堕
(
お
)
ち行く
怨鬼
(
おんき
)
のように落ちて「
死の舞踏
(
ダンスマカブル
)
」の最後の一弾を終った私は、そのままピアノの上へ失神してしまいました。
死の舞踏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それは誰ですか」と尋ねると「それはレブンのシャーゴよ。彼は
無間
(
むげん
)
地獄で一番えらい苦しみを ...
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
誰
(
た
)
れ
白鬼
(
しろおに
)
とは名をつけし、
無間
(
むげん
)
地獄のそこはかとなく景色づくり、何処にからくりのあるとも見えねど、逆さ落しの血の池、借金の針の山に追ひのぼすも手の物ときくに
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
大名などの通り道だからというのでかたわらへ除けてみるが、石自身で元へ帰って来るとの話であった。この峠から遥に粟ヶ岳というが見えたが、そこにはかの
無間
(
むげん
)
の鐘がある。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
大仏殿の二階の上には、千余人昇り上り、
敵
(
かたき
)
の続くを
上
(
のぼ
)
せじと
階
(
はし
)
をば
引
(
ひい
)
てけり。
猛火
(
みやうくわ
)
は
正
(
まさし
)
う
押懸
(
おしかけ
)
たり。
喚叫
(
をめきさけ
)
ぶ声、焦熱、大焦熱、
無間
(
むげん
)
阿鼻
(
あび
)
の
焔
(
ほのほ
)
の底の罪人も、是には過じとぞ見えし。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
死後のことはいざ知らず、現世においては永劫浮かぶ瀬のない
無間
(
むげん
)
地獄というものはないはずです。したがってそれから出世して、社会に立派な地位を占め得たものも少くありません。
融和問題に関する歴史的考察
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
大岩を畳んで築かれた幅三間の階段が
無間
(
むげん
)
地獄の地の底眼掛け、
螺旋形
(
らせんけい
)
に
蜒
(
うね
)
っていたが、四人の者は一歩一歩それを下へ下へ下って行く。行くに従い様々の音が地の底から聞こえて来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それから彼は再び山へ戻つて
出家
(
しゅっけ
)
になつた。その寺には彼の
無間
(
むげん
)
の鐘がある。
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と
無間
(
むげん
)
の
鐘
(
かね
)
のめりやすを、どこで聞きかじってか中音に
唸
(
うな
)
り出す。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
仏典にも『
阿毘達磨大毘婆沙
(
あびだつまだいびばしゃ
)
論』一一九に、人が父母を殺さば
無間
(
むげん
)
地獄に落ちるが、畜生が双親を殺さばどうだと問うに答えて、聡慧なるものは落ちれどしからざるものは落ちずとありて、その釈に
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
無間
(
むげん
)
の地獄が覗いているような気がいたしました。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
親み難き
炎上
(
えんじやう
)
の
無間
(
むげん
)
に沈め、なが思
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
無間
(
むげん
)
のおそれ。
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
たがいをへだてる
無間
(
むげん
)
の距離が鬱陶しくなり、自殺という簡単な方法で、一挙に霊の世界へ飛びこんでやろうというような気も起るのかもしれないが、右から左へ
雲の小径
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
或は風のために無辺際の虚空に吹き散らされ、又は雨のために
無間
(
むげん
)
の
奈落
(
ならく
)
に打落される。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
地獄の沿道には
三途
(
さんず
)
の川、
剣
(
つるぎ
)
の山、
死出
(
しで
)
の山、
老
(
おい
)
の
阪
(
さか
)
、
賽河原
(
さいのかわら
)
などがあり、地獄には
叫喚
(
きょうかん
)
地獄、難産地獄、
無間
(
むげん
)
地獄、妄語地獄、
殺生
(
せっしょう
)
地獄、
八万
(
はちまん
)
地獄、お糸地獄、清七地獄等々があって
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
親み難き
炎上
(
えんじよう
)
の
無間
(
むげん
)
に沈め、なが思
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
「
無間
(
むげん
)
地獄! 浮かぶ
期
(
ご
)
あるまい!」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は沈みぬ、
無間
(
むげん
)
の海の底。
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
伴
(
ともな
)
ひ山中さして
至
(
いた
)
る事凡一
里
(
り
)
許
(
ばかり
)
なり
爰
(
こゝ
)
は名に
負
(
おふ
)
地獄谷
(
ぢごくだに
)
とて
巖石
(
がんせき
)
恰も劔の如きは劔の山に
髣髴
(
さもに
)
たり樹木生茂りて
底
(
そこ
)
も見え分ぬ數千丈の谷は
無間
(
むげん
)
地獄とも云なるべし何心なき二人の
小姓
(
こしやう
)
は
師匠
(
ししやう
)
の
詞
(
ことば
)
に從がひ爰こそ名に高き地獄谷なり能々
御覽
(
ごらん
)
あれと
巖尖
(
いはかど
)
に進て差示せば三人は
時分
(
じぶん
)
は
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
極のほうへ涯てもなくつづく山々の間は、ぞっとするような海緑色の氷床と
無間
(
むげん
)
の闇をひそめた底知れぬ氷河の亀裂で、寂莫たる空間と、黒金のような沈黙がその上にひろがっている。
南極記
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
無間
(
むげん
)
地獄の底に堕ちながら死のうとして死に得ぬ魂魄のなげき……八万奈落の涯をさまよいつつ浮ぼうとして浮び得ぬ幽鬼の声……これが恋に破れたものの呪いの声でなくて何であろう。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
あわれ落ち行く
無間
(
むげん
)
の地獄じゃ……チャカポコチャカポコ……
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“無間”の意味
《名詞》
絶え間のないこと。ひっきりなしであること。
無限地獄の略。
無間の鐘の略。
(出典:Wiktionary)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
間
常用漢字
小2
部首:⾨
12画
“無間”で始まる語句
無間地獄
無間断
無間勝間
無間山
無間奈落