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朱鞘
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しゅざや
ふりがな文庫
“
朱鞘
(
しゅざや
)” の例文
裾縁
(
すそべり
)
をとった野袴のひざをひらき、
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小をぶッちがえて、かますの煙草入れを指に挾んでいる四十がらみの総髪の武家。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貧窮組はこのくらい、無邪気といえば無邪気なものだけれど、合点のゆかないのは
朱鞘
(
しゅざや
)
を横たえた小倉袴の覆面の大の男。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
現われた武士は浪人らしくて、
尾羽
(
おは
)
打ち枯らした
扮装
(
みなり
)
であって、
月代
(
さかやき
)
なども伸びていた。
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小は差していたが、鞘などはげちょろけているらしい。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そこで利家が見ると、政宗は
肩衣
(
かたぎぬ
)
でいる、それは
可
(
よ
)
い、脇指をさして居る、それも可いが、其の脇指が
朱鞘
(
しゅざや
)
の大脇指も大脇指、長さが壱尺八九寸もあった。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
蕪村の句が金ぴかの
上下
(
かみしも
)
を
著
(
き
)
、長い
朱鞘
(
しゅざや
)
をぼっこんだような趣きとすると、召波の句は
麻上下
(
あさがみしも
)
を著て、寸の短い大小を腰にしたような趣きがあるといってよかろう。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
▼ もっと見る
背後
(
うしろ
)
をのさのさと
跟
(
つ
)
けて来て、阿爺どの。——呼声は
朱鞘
(
しゅざや
)
の
大刀
(
だんびら
)
、黒羽二重、
五分月代
(
ごぶさかやき
)
に似ているが、すでにのさのさである程なれば、そうした
凄味
(
すごみ
)
な仲蔵ではない。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
だいぶ
佩
(
は
)
き古した
朱鞘
(
しゅざや
)
ごしらえの父の大刀を持って来て、はしご段のなかほどに待っていた法外に渡すと、老人は
其刀
(
それ
)
を、肩越しに、二、三段下の大次郎へ差し出して
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
白頭の
総髪
(
そうがみ
)
、
髯
(
ひげ
)
も白く、眼中するどくして、衣類は絹太織、浅黄小紋の
単物
(
ひとえもの
)
、
縮緬
(
ちりめん
)
の羽織を着し、
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小を横たえきたり、「珍客の
御入来
(
ごじゅらい
)
とて、招きに応じ参りたり」
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
三人はいずれも若く、先頭の一人は
髭
(
ひげ
)
だらけで、
朱鞘
(
しゅざや
)
の三尺に余りそうな大刀を差していた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
こういう叔父はこの時にも相手によって売られた喧嘩を買う位の勇気は持っていたであろう。が、相手は誰かと思うと、
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小をかんぬき差しに差した身の
丈
(
たけ
)
抜群の
侍
(
さむらい
)
だった。
本所両国
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
こう考えた時、自分の手はまた思わず
布団
(
ふとん
)
の下へ
這入
(
はい
)
った。そうして
朱鞘
(
しゅざや
)
の短刀を
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
り出した。ぐっと
束
(
つか
)
を握って、赤い鞘を向へ払ったら、冷たい
刃
(
は
)
が一度に暗い部屋で光った。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
講武所風の
髷
(
まげ
)
に結って、黒木綿の紋附、小倉の
馬乗袴
(
うまのりばかま
)
、
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小の長いのをぶっ込んで、
朴歯
(
ほおば
)
の高い下駄をがら付かせた
若侍
(
わかざむらい
)
が、大手を振って這入って来た。彼は
鉄扇
(
てっせん
)
を持っていた。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
中にも土佐の若武者などは長い
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小を
挟
(
さ
)
して、鉄砲こそ持たないが今にも
斬
(
きっ
)
て
掛
(
かか
)
ろうと云うような恐ろしい
顔色
(
がんしょく
)
をして居る。
爾
(
そ
)
うかと思うとその若武者が
紅
(
あか
)
い女の着物を着て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
朱鞘
(
しゅざや
)
さす人物すごしんめの花 一庸
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小で飛びだした人。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
いかにも武蔵野育ちらしい野性と
精悍
(
せいかん
)
さをその顔骨にあらわして、長い
朱鞘
(
しゅざや
)
と何流とかの剣法は彼の得意としているところ。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが着物は引裂け、
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小をだらしなく差したまま、顔面にも、身体にも、多少の負傷をしながら、高手小手にいましめられて、引き立てられて来るのです。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
講武所
(
こうぶしょ
)
ふうの
髷
(
まげ
)
に
結
(
ゆ
)
って、黒
木綿
(
もめん
)
の紋付、
小倉
(
こくら
)
の馬乗り
袴
(
ばかま
)
、
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小の長いのをぶっ込んで、
朴歯
(
ほおば
)
の高い下駄をがらつかせた若侍が、大手を振ってはいって来た。彼は
鉄扇
(
てっせん
)
を持っていた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そして山門を出てゆくと、彼方からただ一人で、弓のような腰には似合わない
朱鞘
(
しゅざや
)
の大きな刀を横たえて、せかせかと、息を
喘
(
き
)
って来る老武士があった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この大の男は、貧窮組とは非常に趣を異にして、その骨格の
逞
(
たくま
)
しいところに、
小倉
(
こくら
)
の袴に
朱鞘
(
しゅざや
)
を横たえた風采が、不得要領の貧窮組に見らるべき
人体
(
にんてい
)
ではありません。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
奥へはいって行ったかと思うと、やがて、裾べりの着いた
野袴
(
のばかま
)
に、
海老巻
(
えびまき
)
の
朱鞘
(
しゅざや
)
をぼっ込みながら戻って来て
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ガラリと腰高障子を引きあけた木口勘兵衛尉源丁馬は、
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小の、ことにイカついのを差しおろし、高山彦九郎もどきの大きな包を背負い込んで、割鍋を叩くような大昔を振立て
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
朱鞘
(
しゅざや
)
で、
白絣
(
しろがすり
)
の着ながしだった。
青額
(
あおびたい
)
に、講武所風の
髷先
(
まげさき
)
が、散らばって、少し角ばった
苦
(
にが
)
みのある顔へ、酒のいろを、ぱっと発している。三十前後の男である。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ちょん
髷
(
まげ
)
を切ったのが開化の風と好かれている世間に、見ると健吉は、
剥
(
は
)
げてはいるが、昔ながらの
朱鞘
(
しゅざや
)
を一腰差し、髪は総髪にたばね、洗いざらした
袷
(
あわせ
)
を着て、
埃
(
ほこり
)
でよごれた
脂足
(
あぶらあし
)
に
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十七歳の右衛門七は、体もまた
蒲柳
(
ほりゅう
)
の質であった。男はそれに反して彼の倍もある
恰幅
(
かっぷく
)
で、年頃も三十前後かと見える。太やかな
朱鞘
(
しゅざや
)
を差し、角ばった顔に
硬
(
こわ
)
そうな
髯
(
ひげ
)
がまばらに生えていて
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朱鞘
(
しゅざや
)
をぶち込んでいる勤番侍まるだしのような男が、気負って、答えた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その朱門の中からワラワラとあふれだしたおびただしい
浪人武者
(
ろうにんむしゃ
)
!
黒装束
(
くろしょうぞく
)
へ
小具足
(
こぐそく
)
をつけたるもの、
鎖襦袢
(
くさりじゅばん
)
をガッシリと
着
(
き
)
こんだもの、わらじ
野袴
(
のばかま
)
に
朱鞘
(
しゅざや
)
のもの、
異風
(
いふう
)
さまざまないでたちで
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そういわれてみると、江戸には見かけぬ珍しい
朱鞘
(
しゅざや
)
を差している」
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朱
常用漢字
中学
部首:⽊
6画
鞘
漢検準1級
部首:⾰
16画
“朱”で始まる語句
朱
朱塗
朱雀
朱鷺色
朱実
朱欒
朱羅宇
朱総
朱泥
朱鷺