書斎しょさい)” の例文
旧字:書齋
書斎しょさいに仕事をしている時のヘルンは、周囲のちょっとした物音にも、すぐ『私の考え破れました』といって、腹立しくペンを投げた。
書斎しょさいのドアは、ほんのすこしひらいている。まっさおな顔でついてきた夫人ふじんをうしろにかばいながら、牧師ぼくしは、そっとのぞきこんだ。
通常つうじょう人間にんげんは、いいことも、わるいこともみな身外しんがいからもとめます。すなわ馬車ばしゃだとか、書斎しょさいだとかと、しかし思想家しそうか自身じしんもとめるのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
空林庵の朝倉先生の書斎しょさいは、深くがさしこんで温室のようにあたたかだった。二人がはいって来ると、先生はすぐ言った。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
妻の登子とうこ、そう三名の分骨がおさまっている山陰やまかげの位牌堂へ行く——一けん、健吉さんが「書斎しょさいにいいなあ」と感嘆したほど、閑素で清潔な小堂だった。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光一の家へゆくとすでに五、六人の友達がきていた、その中には医者の子の手塚もいた、光一の家は雑貨店であるが光一の書斎しょさいははなれの六じょうであった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
すぐお父さんの書斎しょさいからおおきな本をもってきて、ぎんがというところをひろげ、まっ黒なページいっぱいに白い点々のある美しい写真を二人でいつまでも見たのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わすれられたように、ちち書斎しょさいで、しょだなのうえにのせられたまま、ほこりをあびていました。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうしておいて、神谷は心覚えの廊下伝い、老人の書斎しょさいを通って、玄関を飛び出した。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
水気の少い野の住居は、一甕ひとかめの水も琵琶びわ洞庭どうていである。太平洋大西洋である。書斎しょさいから見ると、甕の水に青空が落ちて、其処に水中の天がある。時々は白雲しらくもが浮く。空を飛ぶ五位鷺ごいさぎの影もぎる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私は胸をかれる思いで書斎しょさいへひっかえしてきたが、今夜ひと晩というかんじにりたてられると、もう、じっとしてはいられなくなってきた。そのまま、音のしないように表の戸をあけて外へ出た。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
彼も書斎しょさいにいてそれを聞いてひとりで笑った。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
かれ生活せいかつはかくのごとくにしていた。あさは八き、ふく着換きかえてちゃみ、それから書斎しょさいはいるか、あるい病院びょういんくかである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
博士はくし全身ぜんしんが、さっとひいていくようだった。かれの頭には、その時、夕方書斎しょさいできいたピストルの音が、ありありとかんでいた。
秀吉ひできちは、ケーきゃくという資格しかくで、案内あんないされるまま、おくにあるケー書斎しょさいへみちびかれました。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
今夜は八風斎はっぷうさいの鼻かけ卜斎ぼくさいも、家にかえって落ちつくようすもなく、書斎しょさいをかきまわして、だいじな書類だけを、一包ひとつつみにからげ、それを蛾次郎にしょわせて、夜逃げのように
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その雑誌ざっしを読むと、すぐお父さんの書斎しょさいからおおきな本をもってきて、ぎんがというところをひろげ、まっ黒なページいっぱいに白に点々てんてんのあるうつくしい写真しゃしんを二人でいつまでも見たのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ある晩、南田収一は自分の書斎しょさいのドアに中からカギをかけて、小型のピストルで自殺してしまいました。わたしはその知らせをうけて、すぐに同僚といっしょに、S町の南田家へかけつけました。
妻に失恋した男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
先生の書斎しょさいからは、にぎやかな話し声がきこえていた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
書斎しょさいにかけこむと、庭にめんした三つの窓のうち二つが、めちゃくちゃにガラスをたたきられていて、ゆかいちめんに、ガラスの破片はへんがちらばっていた。
ジオゲンは勿論もちろん書斎しょさいだとか、あたたか住居すまいだとかには頓着とんじゃくしませんでした。これはあたたかいからです。たるうち寐転ねころがって蜜柑みかんや、橄欖かんらんべていればそれですごされる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ここは卜斎ぼくさい書斎しょさいとみえて、兵書、武器、種々なやじり型図面かたずめんなどがざったにちらかっており、なかにも一ちょう種子島たねがしまが、いま使ったばかりのように、火縄ひなわをそえて、かれのそばにおいてあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あなたのお書斎しょさい、まあどんなに立派でしょうね。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「わたしの書斎しょさいの金庫の中です」
怪人と少年探偵 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「お、おいね様か。……若旦那はそこのお書斎しょさいにいらっしゃいますよ」