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かず/\
車の
左右に
手の
届く、
数々の
瀧の
面も、
裏見る
姿も、
燈籠の
灯に
見て、
釣舟草は
浮いて
行く。
あらゆる記憶の
数々が電光のやうに
閃く。最初
地方町の小学校へ行く
頃は毎日のやうに
喧嘩して遊んだ。やがては
皆なから近所の
板塀や
土蔵の壁に
相々傘をかゝれて
囃された。
云ひも
得せずひねる
畳の
塵よりぞ
山ともつもる
思ひの
数々逢ひたし
見たしなど
陽はに
云ひし
昨日の
心は
浅かりける
我が
心我と
咎むればお
隣とも
云はず
良様とも
云はず
云はねばこそくるしけれ
涙しなくばと
云ひけんから
衣胸のあたりの
燃ゆべく
覚えて
夜は
五
彩の
漣は
鴛鴦を
浮べ、
沖の
巌は
羽音とゝもに
鵜を
放ち、千
仭の
断崖の
帳は、
藍瓶の
淵に
染まつて、
黒き
蠑螈の
其の
丈大蛇の
如きを
沈めて
暗い。
数々の
深秘と、
凄麗と、
荘厳とを
想はれよ。
と
前へ
行く
案山子どもを、
横に
掠めて、
一息に
駆け
着けて、いきなり
階に
飛附いて、
唯見ると、
扨も、
寄つたわ、
来たわ。
僧形に
見えた
有りたけの
人数は、
其も
是も
同じやうな
案山子の
数々。