ヴェニスに死す (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
私が自身の弛緩を警戒する敏感さ、あなたの知ることの出来ない部分にゴミをつけまいとする心くばりは、随分神経質でした。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉―― (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ウォーソン夫人の黒猫 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それをする代わりに「私」という人間の道徳的自責などをしまいに書いたのでは、せっかく興奮し緊張していた読者の心は、すっかり、冷却し、弛緩してしまう。
弛緩した精神は張りつめた生活を保つことができない。そういう生活態度のうちには、善と悪とが混在している。柔弱は有害であるとしても寛大は健やかで有益だからである。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
そこで、この絵像の与うるところの印象は、全体に於てノッペラボーで、部分に於て呪いで、嫉みで、嘲笑で、弛緩で、倦怠で、やがて醜悪なる悪徳のほかに何物も無いらしい
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
病気の元を思い出させるような、短い間の呼吸困難が折々あるが、それが過ぎ去ると、一種の弛緩状態になる。そしてもう自分で、なぜそんな状態になるかを考えて見るほどの力もない。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
この倦怠は何人にも知られてはならぬものだったし、どうあっても、不随意と弛緩のどんな兆候によってでも、作品の上に現われてはならぬものだった。
ヴェニスに死す (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
この意味に於いて政治的意識の弛緩は、マルクス主義文學作家にとつては致命的である。
政治的価値と芸術的価値:マルクス主義文学理論の再吟味 (旧字旧仮名) / 平林初之輔(著)
その満潮がようやく引き始める時期をここに正確に指定することはできないが、弛緩の傾向はすでに天平の前半から始まり、後半に至っていよいよ著しくなったと見てよかろう。
たいていそういう発作は、突然の精神弛緩に終ることが多かった。彼は涙を流し、地上に身を投出し、大地に抱きついた。それにかじりつき、しがみつき、それを食いたかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)