山刀やまがたな)” の例文
鍛冶倉は上から押しつぶそうとのしかかる、金蔵は跳ね起きようともがく途端に、手に触れたのは鍛冶倉の腰にさしていた山刀やまがたな
だが急に私の眼を射たものがある。念のため駆ける車を戻して店に寄った。何たるさいわいなことか、私は間違わなかった。それは美しい山刀やまがたなである。
思い出す職人 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
蛾次郎がじろうはうしろからって、あけびまき山刀やまがたな、ザラザラと引っこ抜いて、スパーッと竹童のすじをったつもり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弥ざゑもんはよきものをみつけたりと大によろこび、かはきももとらんとおもひしが、日も西にかたぶきたれば明日あすきたらんとて人の見つけざるやうに山刀やまがたなにて熊を雪にうづめかくし
りょうしは何事なにごとこったのかとおもって、山刀やまがたなってして、そこらを見回みまわりました。けれども、なにもそこにはほえてるようなあやしいものの、かげかたちえませんでした。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
立處たちどころ手足てあしあぶるべく、炎々えん/\たる炭火すみびおこして、やがて、猛獸まうじうふせ用意よういの、山刀やまがたなをのふるつて、あはや、そのむねひらかむとなしたるところへ、かみ御手みてつばさひろげて、そのひざそのそのかたそのはぎ
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
山刀やまがたなして片手に鉄砲をげ、忍足しのびあしで来て破れ障子に手を掛けまして、そうっと明けて永禪和尚とお梅の居ります所の部屋へ参って、これから掛合かけあいに成りますところ、一寸一息つきまして。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
取に左仲は最早もはや生懸命しやうけんめいこしの一たうき放しきつて懸ればソリヤぬいたぞと兩方より手に/\きらめ山刀やまがたなうけつ流しつ切結きりむすぶ左仲は茲ぞ死物狂ひと働け共二人の賊は事ともせず斬立々々きりたて/\切捲きりまくれば終に左仲は斬立られかなはじとにげ行を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
念を押しながら飛びこんで、蛾次郎がじろうれ木の火をちらし、山刀やまがたなをぬいて半助の縄目なわめをぶっつり切った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弥ざゑもんはよきものをみつけたりと大によろこび、かはきももとらんとおもひしが、日も西にかたぶきたれば明日あすきたらんとて人の見つけざるやうに山刀やまがたなにて熊を雪にうづめかくし
鉄道の敷かれるのがおそかったせいか、まだ郷土の香りの濃い町であります。店々を訪ねますと色々の品が現れます。山刀やまがたなさやの美しいのがあって桜皮で編んだりまた浮彫をこれに施したりします。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
どれもこれも山男のようなたくましい筋肉きんにくと、獰猛どうもう形相ぎょうそうをもっていて、尻切襦袢しりきりじゅばんへむすんだ三じゃくおびこしには、一本ずつの山刀やまがたなと、一本ずつの鉱石槌かなづちをはさんでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
熊の穴居こもりたる所をみつくれ目幟めじるしをのこして小屋にかへり、一れんの力をあはせてこれをる。その道具だうぐの長さ四尺斗りの手槍てやりあるひ山刀やまがたな薙刀なぎなたのごとくに作りたるもの、銕炮てつはう山刀をのるゐ也。
それはすばらしい迅さと鋭さを持った一本の山刀やまがたなだった。いきなり、横合から斬ッてかかって、その人影の誰なるかを問わず、滅茶滅茶に、振ッて振って、振り廻すのであった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)