宇内うだい)” の例文
謹慎中も同志うち寄って盛んに宇内うだいの形勢を論じて、酒をんで時には夜を徹したものであるけれども、母は少しもいとわれなかった。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
いずくんぞ宇内うだいの形勢を洞察して武備主義を一変して生産主義となし、貴族社会を一変して平民社会となすの端緒をひらくを要せんや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
しかし、その隙だらけの新九郎へ、戒刀をとっては宇内うだいの山伏の中でも音に聞えた河内房が、なかなかたやすくは打ち込んで行かれなかった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
亢奮するばかりが能ではない。宇内うだいの大勢も心得ず、人斬包丁ばかり振り廻すのは人間の屑と云わなければならない。……いい音締だな小気味のよい音色だ
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
宇内うだい睥睨へいげいし、日月を叱咜しつたせし、古来の英雄何すれぞ墳墓の前に弱兎じやくとの如くなる。誰か不朽といふ字を字書の中に置きて、しかして世の俗眼者流をしてほしいまゝに流用せしめたる。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
広く宇内うだいの大勢を察し、つまびらかに古今の沿革に徴し、いやしくも天意の存するところ、万生の望むところ、早晩平民主義をもって世界を一統すべくこれに抗するものは亡び
将来の日本:01 三版序 (新字新仮名) / 新島襄(著)
來りてうする宇内うだいの群山に接するの光景は、いかにわがあくがれ易き心を動かしたりけむ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
特に『宇内うだい混同秘策』なる論説の如きは、日本が世界を経綸すべき方策を論じたるものにして、その論旨としては第一の順序として日本は北樺太カラフトと黒竜洲を有として満洲に南下し
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
豈料あたはからんや藤原実美さねとみ等、鄙野匹夫ひやひっぷの暴説を信用し、宇内うだいの形勢を察せず国家の危殆きたいを思はず、ちんが命をためて軽率に攘夷の令を布告し、みだりに討幕のいくさおこさんとし、長門宰相の暴臣のごと
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
以上八策は、方今天下の形勢を察し、之を宇内うだい万国に徴するに、之を捨てて他に済時の急務あるべし。いやしくも此数策を断行せば、皇運を挽回し、国勢を拡張し、万国と並立するも亦敢てかたしとせず。
船中八策 (新字旧仮名) / 坂本竜馬(著)
誠に宜しく宇内うだいに照臨し、皇化のおよぶ所、遠邇ゑんじあることなかるべし。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
いや文句以上、筆以上の壮観で、烈々宇内うだいを焼きつくす概があった。頭山が遣るというなら俺も遣ろう。奈良原が死ぬというなら俺も死のう。要らぬ生命いのちならイクラでも在る。貴様も来い。お前も来い。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
宇内うだい睥睨にらむ。 一大いちだいしう
宇内うだいの大勢を揣摩しまし、欧洲の活局を洞観するの烱眼けいがんに到りては、その同時の諸家、彼に及ぶものすくなし、いわんや松陰においてをや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
大国今川の大規模な軍備とそのさかんな行装は、宇内うだいの眼をみはらせた。また、その宣言は、弱小国のきもをすくませるものだった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
およそ一国の政治を革新して国威を宇内うだいに発揚するには、うえから来るものと下から来るものとの二途がある。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
信淵の如きは宇内うだい呑吐どんとするの見識あり、小生偶然同行の雲井なにがしの如きは、白面の一書生には候へ共、気概勃々として、上杉謙信の再来を思はしむるものあり、快心の至りと存じ居り申候。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また曰く、「近日の事、名は親切なれども、実は人を陥阱かんせいおとしいるるなり。もし貴国引き去らずんば、名を正し罪を責め宇内うだいに暴白せん」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
、一日もお早く、宇内うだいしかとお示しください。そのほうが余り遅れますと、てまえもそうそうお待ちしきれないかも知れません
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藩主に対しても、宇内うだいの大勢を論じて一挙中原の覇をてんことを建言した。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
(信長の統業は、帰して、一天の君にあり、信長は叡慮えいりょによって、ただ宇内うだい騒乱そうらんをしずめ、陛下の民を安んじたてまつるための一朝臣である)
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんとなれば今日宇内うだいの経済世界の現象は実にこの言の空望にあらざることを吾人に向かって保証すればなり。それ近世の歴史は兵と富との戦争史なり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
離れかねまする。……いずれ右府様にも、宇内うだいのことが、ひとまず御決着の日には、ぜひ宗湛とてまえとが、御案内に立ちまして、御一巡あそばしませ
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実に今日の世界はスコットランド山中二寒儒の手により作為せられたるの世界なり。二氏のごときは実に宇内うだいの大恩人にして無冠の皇帝といわざるべからず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
新羅しんら三郎以来の名族、また余りに宇内うだい耀かがやきすぎた信玄の名にたいしても、勝頼たるものが甘んじて今さら、信長の膝下しっかに、降を乞えるものではない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松陰に語りて曰く、「男子よろしく海外に遊び、宇内うだいの形勢に通じ、以て緩急の用に資せざるべからず」と。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
信長公をいて誰か時代の混乱をここまで統率して来ることができましょう。……さはいえ、それをもって宇内うだいのすべてがあらたまるとはいえないでしょう。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また周防国山口すおうのくにやまぐちには、大内義興よしおきの四層閣が城廓の中心として築かれ、おそらくその壮大は宇内うだい第一かもしれません
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
討たば、その軍功は当然、宇内うだい随一の勲功いさお。——いやでもこの全九州は菊池家の下風かふうに服せざるをえまい
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも義元は、駿遠三だけの義元であったが、太原雪斎の道風は宇内うだいに振い、天下の太原雪斎であった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宇内うだい随一といっても、二とは下るまいと思われるほどな一刀斎にも、起居同床、何年も側にいてみると、性格的にまったく短所も欠点もないというような人ではない、否
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そのうつわならざる者が天下をうごかすの座にあるときは、天下の乱れはいうまでもなく、天下をも失い、家をもほろぼし、宇内うだいの不幸は一毛利家の滅亡には止まりますまい」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宇内うだいいたる所の国々に割拠かっきょする大名豪傑のともがらが、みな理想としていることではあったが、単身、京都へのぼって、将来の計をなそうとするような——そんな身軽な豪胆さは
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義を宇内うだいに唱え、仁を布き、四百余年のもといを建てられしも、末世現代にいたり、中央は逆臣の府、地方は乱賊の巣と化し、みだれに紊れ、百姓の塗炭は連年まざる状態にある。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま宇内うだい二分して、呉は南に覇をとなえ、魏は北に雄飛し、また君のご威徳によって、西蜀漢中の分野ここに定まるとはいえ、なお前途の大統一を思う同気のともがらは、我が君が
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
士馬精鋭に鳴る甲山の猛将勇卒だ、また宇内うだい幾人のうちにかぞえられる名将武田信玄だ。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一日も早く、宇内うだいに大志をべられるよう、陰ながら祈っています。四民のために」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は河東かとうにおける開国ごろの名将呼延賛こえんさん末裔まつえいで、兵略に通じ、よく二本の赤銅あかがねむちをつかい、宇内うだいの地理にもあかるく、梁山泊征討の任には、打ってつけな武人かとおもわれます
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まげられたら、これまた朝廷のみならず宇内うだいの大事といわねばならん。そこで忠顕がたれのおさしずというでもなけれど、ま、とくとお胸をうかがってみたいと存じてまいったわけだが
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
跼蹐かがまりこんでおったわしたちに、さらに眼界を宇内うだいにひろくし、そして、赴く所に、仏果の樹を植えよ、念仏の華を咲かせよ、浄土をたがやせという御仏のお心でのうてなんとしよう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今までのいかなる年よりも急激に天下の相貌そうぼうは一変し、宇内うだいの文化もうつってゆこう。どう遷ってゆくかといえば、旧態の破壊撃砕もほぼ一段落をつけ、なお戦いつつも建設期へ入ってゆく。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
、まったく計算違いしていたところにある。まさか織田家に、五千ちょうの銃があろうとは、想像もしていなかったに違いない。新しい武器装備においては宇内うだい第一の織田家を見損なっていたものだ
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現住持の覚禅法師胤栄かくぜんほうしいんえいの槍も共に宇内うだいに鳴っている。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)