トップ
>
夙
>
と
ふりがな文庫
“
夙
(
と
)” の例文
夙
(
と
)
くに気がつくべかりしことを、今になってやっと気がついたのであった。彼は思わず指の腹をこすって、ぱちんという音をたて
地軸作戦:――金博士シリーズ・9――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこで私はとうとう、二言、三言と話し合っているうちに、その青年を、
夙
(
と
)
くから知り合っている友達かなんかのように思い出してきた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
そんな三角関係などは二十余年も以前の事で、
上面
(
うわべ
)
は
夙
(
と
)
うに清算されているようだが、きっと何か残っていたに違いないのだ。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
三造は何かに追掛けられたように、あわてて、ぐいぐいと三、四杯立てつづけにあおった。すいっちょは
夙
(
と
)
うに何処かへいなくなっている。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
今朝は
夙
(
と
)
く起きて、供の少年を連れ、一山を
巡
(
めぐ
)
って
午
(
ひる
)
近くに帰って来たが、ここも上杉、武田、北条以後、戦乱に荒れ果てているのを見て
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
そしてはじめ心に決めていた都会へ帰る日取りは
夙
(
と
)
うの昔に過ぎ去ったまま、いまはその影も形もなくなっていたのである。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
姉たちは、気の毒ながら、まだ相変らず結婚してはいなかったが、しかしもう
夙
(
と
)
うにその分に安んずる年頃になっていた。
小フリイデマン氏
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
しかしながらこの点は西洋では実は
夙
(
と
)
うの昔に解決が出来て、今日はほとんど問題となってはいないのである。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
この人は
夙
(
と
)
くから書をかいたり、詩を
咏
(
よ
)
んだりして居たさうだが、
外
(
ほか
)
の方面にも
相応
(
かなり
)
早熟だつたものと見える。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
其處のまだ年若い局長であるM——君は
夙
(
と
)
うから我等の結社に加入して歌を作つた。その頃一年あまり私は父の病氣のために東京から郷里
日向
(
ひうが
)
の方に歸つてゐた。
樹木とその葉:03 島三題
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
こゝに在るは善き人々なるをば、客人も
夙
(
と
)
く悟り給ひしならん。されど此等の事思ひ定め給はんには、先づ快く一夜の勞を
醫
(
いや
)
し給ふに若かず。こゝに
佳
(
よ
)
き
牀
(
とこ
)
あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
吾輩はもう
夙
(
と
)
っくの昔の一箇月前に死んでいるものと、本当に思い込んでしまったろう……そうだろう
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その結果その子は
夙
(
と
)
くに堕落し切ってしまうはずのものがまだともかくそこまでの深淵に陥らずに踏み止まっておる。これは母の愛である。母の子に対する執着である。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
この事は兎が
殖
(
ふ
)
えやすい訳としてアリストテレスやヘロドツスやプリニウスが
夙
(
と
)
く述べた。
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
平生
(
いつも
)
の如く
夙
(
と
)
く起き出づればお浪驚いて急にとゞめ、まあ滅相な、
緩
(
ゆる
)
りと臥むでおいでなされおいでなされ、今日は取りわけ朝風の冷たいに破傷風にでもなつたら何となさる
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
これがそも/\の起源であつた。その信徳は
夙
(
と
)
うに卒業してしまつたが、
齢
(
とし
)
の大分違ふ弟の徳次郎が、丁度野田や和作と同じ級に入つて来たのである。そして卒業生の口から伝はつたのだらう。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
いいます。保平殿が北ノ方とねんごろにしていることは、
夙
(
と
)
くから気がついていた。北ノ方は毎日のように白女に文を持たしておよこしになり、また見事な手箱を保平殿へおつかわしになりました
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
片岡家の
別墅
(
べっしょ
)
にては、今日は
夙
(
と
)
く
来
(
く
)
べかりしに勤務上やみ難き要ありておくれし武男が、
夜
(
よ
)
に入りて、風雨の暗を
衝
(
つ
)
きつつ来たりしが、今はすでに
衣
(
い
)
をあらため、
晩餐
(
ばんさん
)
を終え、卓によりかかりて
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
それから時代が次第に浪漫派から人道主義に転々して行ったものだったな。それにいわゆる新感覚派の芸術といえそうな開放運動はあの以前木下杢太郎や私なぞが
夙
(
と
)
うに済まして来たものだったな。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
君来るといふに
夙
(
と
)
く起き
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
先に小舟を廻して、
雇人
(
やといにん
)
の佐助は、今朝
夙
(
と
)
くからそこに待っていた。武蔵の姿が今、その辺りまで近づいたかと思うと、誰か
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
堯が間借り二階の四畳半で床を離れる時分には、主婦の朝の洗濯は
夙
(
と
)
うに済んでいて、
漆喰
(
しっくい
)
は乾いてしまっている。その上へ落ちた痰は水をかけても離れない。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
もし、彼がもっと典雅で、慎しみ深くて、無慾
恬淡
(
てんたん
)
だったら、僕は
夙
(
と
)
うに彼に二川家を譲っていたかも知れぬ。何故なら彼こそ、二川家の正当の相続人なのだ。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
なんかと云って
筆者
(
わたくし
)
は、話の最初に於て、
安薬
(
やすぐすり
)
の
効能
(
こうのう
)
のような
台辞
(
せりふ
)
をあまりクドクドと述べたてている
厚顔
(
こうがん
)
さに、自分自身でも
夙
(
と
)
くに気付いているのではあるが
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
若し斯くの如き文学の流行するが故に青年の志気頽廃するといふならば、火元の西洋では
夙
(
と
)
うの昔に亡国となつて居なければならぬ筈だ。青年の志気頽廃の原因は必ずや外にある。
蘇峰先生の「大正の青年と帝国の前途」を読む
(新字旧仮名)
/
吉野作造
(著)
それは既に人々が
夙
(
と
)
うの昔に卒業してしまった事柄——あるいは余り馬鹿げ切っているので、てんで初めから相手にしない事柄の一つではないか? 少しは恥ずかしく思うがいい。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
平生
(
いつも
)
のごとく
夙
(
と
)
く起き出づればお浪驚いて急にとどめ、まあ滅相な、ゆるりと
臥
(
やす
)
んでおいでなされおいでなされ、今日は取りわけ朝風の冷たいに破傷風にでもなったら何となさる
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
十六年ほど前、和歌山なる舎弟方の倉に、大きな
黄頷蛇
(
あおだいしょう
)
の尾端
夙
(
と
)
く切れて、その
痕
(
あと
)
硬化せるを見出したが、ざっとこの図に似いた。余り不思議でもなきを、『奇集』に玉と誇称したのだ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「Cito et velociter!」(
夙
(
と
)
く早くくだり来よ)
神の剣
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
「何を隠そう。吾輩は
夙
(
と
)
うから覚悟を決めていたのだ。この調査書類の内容の全部が、吾輩をこの事件の犯人として指していることを、最初から明かに認めていながら、知らぬ顔をし通して来たのだ」
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
夙
(
と
)
く起きて籐椅子にあり他は知らず
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
この度の試合も
夙
(
と
)
く知れ渡り、武蔵に敗れては、岩国の恥辱ぞ、佐々木を名乗る一族の名折れぞと、たいそうな肩持ちじゃ。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女は、もはや
夙
(
と
)
うにこと
断
(
き
)
れていた。そして、左の頸と肩との
附根
(
つけね
)
の所に、鋭い
吹矢
(
ふきや
)
が深々と喰い込んで
刺
(
ささ
)
っている。
夥
(
おびただ
)
しい出血は、それがためのものであるらしい。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
夙
(
と
)
くくれし志やな
蕗
(
ふき
)
の
薹
(
とう
)
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
「調馬は
未
(
ま
)
だしもよ、朝
夙
(
と
)
く法華経二部を、腹のそこから声を出して
誦
(
よ
)
んでみい。五臓六腑、一物もなくなってしまう」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「わしはもう
夙
(
と
)
くの昔、君がこの工場の一隅で八人目の犠牲者になっとることと思って居ったわい」
人間灰
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
姫は——いや新妻は——朝は
夙
(
と
)
く小鳥と共に起きて、ただ一人の
侍女
(
かしずき
)
の
万野
(
までの
)
をあいてに、林の
薪木
(
たきぎ
)
をひろい、泉の水を汲み、朝の家事に余念がない。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
安兵衛は心のうちで、これは
迂
(
う
)
かつな談議はつつしまなければならないと思った。細井広沢は或る事情があって、
夙
(
と
)
くに一党の真意を知っている人なのだ。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
現在でも宮本武蔵はすでに
夙
(
と
)
く有名だが、一般民衆の中に持たれて来た宮本武蔵は、前にいった花筏の脚色と大阪本講談の脚色を一歩も出ないものであった。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
新院大納言が、
相国
(
しょうこく
)
に不満をいだいて、何やら密謀のあるらしい気配、
夙
(
と
)
く、それがしの主人成田兵衛が感づいて、あの衆の後を
尾行
(
つけ
)
よというおいいつけなのです。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「まあとは何だ。
夙
(
と
)
くに、石田の大叔父へも、ごあいさつに伺うのは当然だ。行って来たのか」
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その名は
夙
(
と
)
く知っていたように多くを問わない。黙々と馬の背に揺られながら脚下に近づいて来る四日市の宿場の屋根を眺め、やがて町に入ると屋台の端を借りて弁当をつかう。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
綽空や尋有が、こういう欣びの法境に到らないうちに、
夙
(
と
)
く他界の人になっていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「武家の妻として、
不埒
(
ふらち
)
であろうぞ。——今日までわしに黙っておるなぞ。木下殿と娘とは、
夙
(
と
)
くからお
交際
(
つきあい
)
をして戴いておるそうではないか。存じておりながら、なぜわしに黙っていたか」
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もちろん劉備が出かけた頃、彼の母も
夙
(
と
)
く起きていた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“夙”の解説
夙(しゅく、夙の者、宿の者)は、中世から近世にかけて近畿地方に多く住んでいた賎民。中世の非人身分が分解する際に生じ、被差別部落の起源の多くであったかわたよりも下位でありながら、その差別はそれほど強烈ではなかったといわれる。
(出典:Wikipedia)
夙
漢検準1級
部首:⼣
6画
“夙”を含む語句
夙夜
夙慧
夙川
夙縁
夙昔
夙人
夙起
夙志
夙懟
夙才
馬夙彩
臣夙夜
夙約
夙村
夙望
夙少
夙卒
夙分