)” の例文
くに気がつくべかりしことを、今になってやっと気がついたのであった。彼は思わず指の腹をこすって、ぱちんという音をたて
そこで私はとうとう、二言、三言と話し合っているうちに、その青年を、くから知り合っている友達かなんかのように思い出してきた。
そんな三角関係などは二十余年も以前の事で、上面うわべうに清算されているようだが、きっと何か残っていたに違いないのだ。
血液型殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
三造は何かに追掛けられたように、あわてて、ぐいぐいと三、四杯立てつづけにあおった。すいっちょはうに何処かへいなくなっている。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
今朝はく起きて、供の少年を連れ、一山をめぐってひる近くに帰って来たが、ここも上杉、武田、北条以後、戦乱に荒れ果てているのを見て
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてはじめ心に決めていた都会へ帰る日取りはうの昔に過ぎ去ったまま、いまはその影も形もなくなっていたのである。
冬の蠅 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
姉たちは、気の毒ながら、まだ相変らず結婚してはいなかったが、しかしもううにその分に安んずる年頃になっていた。
この人はくから書をかいたり、詩をんだりして居たさうだが、ほかの方面にも相応かなり早熟だつたものと見える。
其處のまだ年若い局長であるM——君はうから我等の結社に加入して歌を作つた。その頃一年あまり私は父の病氣のために東京から郷里日向ひうがの方に歸つてゐた。
樹木とその葉:03 島三題 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
こゝに在るは善き人々なるをば、客人もく悟り給ひしならん。されど此等の事思ひ定め給はんには、先づ快く一夜の勞をいやし給ふに若かず。こゝにとこあり。
吾輩はもうっくの昔の一箇月前に死んでいるものと、本当に思い込んでしまったろう……そうだろう
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その結果その子はくに堕落し切ってしまうはずのものがまだともかくそこまでの深淵に陥らずに踏み止まっておる。これは母の愛である。母の子に対する執着である。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
この事は兎がえやすい訳としてアリストテレスやヘロドツスやプリニウスがく述べた。
平生いつもの如くく起き出づればお浪驚いて急にとゞめ、まあ滅相な、ゆるりと臥むでおいでなされおいでなされ、今日は取りわけ朝風の冷たいに破傷風にでもなつたら何となさる
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
若し斯くの如き文学の流行するが故に青年の志気頽廃するといふならば、火元の西洋ではうの昔に亡国となつて居なければならぬ筈だ。青年の志気頽廃の原因は必ずや外にある。
これがそも/\の起源であつた。その信徳はうに卒業してしまつたが、としの大分違ふ弟の徳次郎が、丁度野田や和作と同じ級に入つて来たのである。そして卒業生の口から伝はつたのだらう。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
いいます。保平殿が北ノ方とねんごろにしていることは、くから気がついていた。北ノ方は毎日のように白女に文を持たしておよこしになり、また見事な手箱を保平殿へおつかわしになりました
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
片岡家の別墅べっしょにては、今日はべかりしに勤務上やみ難き要ありておくれし武男が、に入りて、風雨の暗をきつつ来たりしが、今はすでにをあらため、晩餐ばんさんを終え、卓によりかかりて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
それから時代が次第に浪漫派から人道主義に転々して行ったものだったな。それにいわゆる新感覚派の芸術といえそうな開放運動はあの以前木下杢太郎や私なぞがうに済まして来たものだったな。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
君来るといふにく起き
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
先に小舟を廻して、雇人やといにんの佐助は、今朝くからそこに待っていた。武蔵の姿が今、その辺りまで近づいたかと思うと、誰か
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堯が間借り二階の四畳半で床を離れる時分には、主婦の朝の洗濯はうに済んでいて、漆喰しっくいは乾いてしまっている。その上へ落ちた痰は水をかけても離れない。
冬の日 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
もし、彼がもっと典雅で、慎しみ深くて、無慾恬淡てんたんだったら、僕はうに彼に二川家を譲っていたかも知れぬ。何故なら彼こそ、二川家の正当の相続人なのだ。
なんかと云って筆者わたくしは、話の最初に於て、安薬やすぐすり効能こうのうのような台辞せりふをあまりクドクドと述べたてている厚顔こうがんさに、自分自身でもくに気付いているのではあるが
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それは既に人々がうの昔に卒業してしまった事柄——あるいは余り馬鹿げ切っているので、てんで初めから相手にしない事柄の一つではないか? 少しは恥ずかしく思うがいい。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
平生いつものごとくく起き出づればお浪驚いて急にとどめ、まあ滅相な、ゆるりとやすんでおいでなされおいでなされ、今日は取りわけ朝風の冷たいに破傷風にでもなったら何となさる
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
十六年ほど前、和歌山なる舎弟方の倉に、大きな黄頷蛇あおだいしょうの尾端く切れて、そのあと硬化せるを見出したが、ざっとこの図に似いた。余り不思議でもなきを、『奇集』に玉と誇称したのだ。
「Cito et velociter!」(く早くくだり来よ)
神の剣 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
「何を隠そう。吾輩はうから覚悟を決めていたのだ。この調査書類の内容の全部が、吾輩をこの事件の犯人として指していることを、最初から明かに認めていながら、知らぬ顔をし通して来たのだ」
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
くくれし志やなふきとう
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
この度の試合もく知れ渡り、武蔵に敗れては、岩国の恥辱ぞ、佐々木を名乗る一族の名折れぞと、たいそうな肩持ちじゃ。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女は、もはやうにことれていた。そして、左の頸と肩との附根つけねの所に、鋭い吹矢ふきやが深々と喰い込んでささっている。おびただしい出血は、それがためのものであるらしい。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「調馬はだしもよ、朝く法華経二部を、腹のそこから声を出してんでみい。五臓六腑、一物もなくなってしまう」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わしはもうくの昔、君がこの工場の一隅で八人目の犠牲者になっとることと思って居ったわい」
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
姫は——いや新妻は——朝はく小鳥と共に起きて、ただ一人の侍女かしずき万野までのをあいてに、林の薪木たきぎをひろい、泉の水を汲み、朝の家事に余念がない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安兵衛は心のうちで、これはかつな談議はつつしまなければならないと思った。細井広沢は或る事情があって、くに一党の真意を知っている人なのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現在でも宮本武蔵はすでにく有名だが、一般民衆の中に持たれて来た宮本武蔵は、前にいった花筏の脚色と大阪本講談の脚色を一歩も出ないものであった。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新院大納言が、相国しょうこくに不満をいだいて、何やら密謀のあるらしい気配、く、それがしの主人成田兵衛が感づいて、あの衆の後を尾行つけよというおいいつけなのです。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあとは何だ。くに、石田の大叔父へも、ごあいさつに伺うのは当然だ。行って来たのか」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その名はく知っていたように多くを問わない。黙々と馬の背に揺られながら脚下に近づいて来る四日市の宿場の屋根を眺め、やがて町に入ると屋台の端を借りて弁当をつかう。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
綽空や尋有が、こういう欣びの法境に到らないうちに、く他界の人になっていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「武家の妻として、不埒ふらちであろうぞ。——今日までわしに黙っておるなぞ。木下殿と娘とは、くからお交際つきあいをして戴いておるそうではないか。存じておりながら、なぜわしに黙っていたか」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん劉備が出かけた頃、彼の母もく起きていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)