むかひ)” の例文
やがて、小供こども明日あした下読したよみをする時間だと云ふので、はゝから注意を受けて、自分の部屋へやへ引きつたので、あとは差しむかひになつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
乞としばしえんもとやすらひぬ餠屋もちやの店には亭主ていしゆと思しき男の居たりしかば寶澤其男にむかひ申けるは私しは腹痛ふくつう致し甚だ難澁なんじふ致せばくすり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三四年前反対派の大騒ぎがあつて改葬されたゾラのくわんはユウゴオと同じがんの中にむかひ合せに据ゑられて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
木立こだちひ繁る阜は岸までつづく。むかひの岸の野原には今一面の花ざかり、中空なかぞらの雲一ぱいに白い光がかすめゆく……ああ、またべつの影が來て、うつるかと見て消えるのか。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
地中ちちゆうふかければかならず温気あたゝかなるきあり、あたゝかなるをはき、天にむかひ上騰のぼる事人の気息いきのごとく、昼夜ちうや片時かたときたゆる事なし。天も又気をはきて地にくだす、これ天地の呼吸こきふなり。人のでるいきひくいきとのごとし。
アロナ附近でベツクリンの絵の「死の島」はこれつたのだらうと想はれる湖上の島を眺めなが昼食ちうじきを取つて居ると、同じ卓へむかひ合せに着いた姉妹きやうだいの英国婦人の
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
見て水主等かこらに此處は何所いづこおきなるやと尋けるに水主等はしかとは分らねど多分たぶん兵庫ひやうごおきなるべしと答けるにぞ杢右衞門もくゑもんは吉兵衞にむかひ番頭樣貴所あなたの御運のよきゆゑにたつた二日二夜で海路かいろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
開き見るに古金こきん許多そくばくあり兵助大いに喜び縁者えんじや又はしたしき者へも深くかくおきけるが如何して此事のもれたりけん隣家りんか山口やまぐち郎右衞門ろゑもんが或日原田兵助方へ來りやゝ時候の挨拶あいさつをはりて四方山よもやまはなしうつりし時六郎右衞門兵助にむかひて貴殿には先達せんだつて古金のいりかめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)