収入みいり)” の例文
旧字:收入
ようやく収入みいりがよくなってきた。小遣いも豊富に遣えれば、それでもなおかつ翌月へのこるまとまったものがあるようになってきた。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
今年は豆類其他で千円も収入みいりがあろうと云うことであった。細君の阿爺ちゃん遙々はるばる讃岐さぬきから遊びに来て居る。宮崎君の案内で畑を見る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お給金もたくさんだし領地からあが収入みいりも大したものでしたが、彼はそれを、うまくしめくくっていくことが出来ませんでした。
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
一日でも長く釣りよせて置く方が収入みいりの上には都合がいいのであるが、式部はもうそんなふところ勘定をしていられなくなった。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
収入みいりの多寡によって、月給の多少によって、その人の人格までも、批判してもよいものでしょうか。人格は果たして金銭以下でしょうか。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
で、その後おかはりはありませんの? あなたのお父さんはこの頃ぢゆう随分たくさん、いろいろと収入みいりがおありなさるつてことですわねえ!
それァいいかんがえだ。おいら達もはじめは乞食か何かになった気でやり始めたんだがね。やって見ると思ったより収入みいりはあるしね。なかなか面白いんだ。
「でも、人助けのために思い切って申上げましょう。私はもう此処から引揚げて、もう少し収入みいりのある四宿の何処かへ行き度いと思っておりますから」
それは、他人のねたみだろう。何しろ、広大な田領だから、官へ租税を納めても、余る収入みいりは、莫大なものだからな。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女三人の手で裁縫物したてものなど引受けて遣つてもゐたが、それとても狭い村だから、月に一円五十銭の収入みいりは覚束ない。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それはちょうど収穫とりいれなどのすんで、田舎に収入みいりのある秋のころであった。どこかとそんな契約が成り立ったと見えて、お雪は身装みなりなども比較的綺麗であった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
赤い封蝋ふうろうと青い封蝋をちゃんと見分けられるしね。僕が空樽あきだるを売ると、そいつは僕の収入みいりになるんだぜ。兎の皮だってそうだよ。おかねはおかあさんに預けとくんだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
こんなわけで、誰人もついにお君に指一本加えることができない上に、相当の収入みいりがあって、お君は旅に不自由することなくして東へ下って行くことができました。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
収入みいり減少したために、手入れをすること出来ないからか、襖は破れ畳は古び、荒涼の体を見せていた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人気の外には収入みいりも無い映画女優などは後足で砂を掛け、土橋に近い銀座裏のある町角に「巴里パリー」という、秘密めかしいバーを出させてその女将おかみにおさまり、この二
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
たまには場末の色町らしい処で笠の中を覗き込んで馬糞まぐそ女郎や安芸妓げいしゃたちにムゴがられて、思わず収入みいりに有付いたり、そんな女どもの取なしで田舎大尽いなかだいじんに酒肴を御馳走され
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
... そのせゐで自然収入みいりがあるやうにと思つて見物にびる事になります。」と言つて、白粉刷毛おしろいばけで鼻先をぞんざいに塗りたくつた。「好きな茶器も、つい買ひ度くなりますね。」
その間、としに風雨あり。あしたに霜あり。ゆうべに雪あり。世の中とかく騒がしかりければ、興行の収入みいり思うままならで、今年この地にきたりしにも、小親は大方ならず人に金借りたるなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
も少し収入みいりのよさそうな家を物色している。
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さあ、こうなれば諸人の信仰は愈々増して、弁天様の霊験あらたかであるという評判がいよいよ高くなる。信者が俄かにふえる。収入みいりも多くなる。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
収入みいりどころか、牛も馬もすきくわもありません。何よりも先にそれを手に入れなくちゃいけません。そうすりゃ、やがてお金も入って来るでしょう。」
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
御贔屓ごひいきの御座敷や何かで、不時の収入みいりがありますと、内所ないしょで処かまわず安い芸者を買い散らしたもんで御在ます。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何処までも利口に立ちまわったため、彼の収入みいりは前任者に比べたら二倍にものぼっていたが、それでいて、おまけに全市民の愛を贏ち得ていたのである。
天龍寺船の交易物こうえきもつのさばきは彼の手にまかされている。これは大きい。そのほかの収入みいり博奕ばくちのハネだろう。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仕掛けますと、女子供までのぼるのが楽になりますからな、そうなるとお山も繁昌致します、お寺も収入みいりが多くなるというわけで、トカク、近頃は金でございますね
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
掃溜も毎日のように漁りますが、何と申しましても縁談の取持が一番、収入みいりが多う御座います。
健でないにしたところが、必ず、何かもつと収入みいりの多い職業を見付けねばならなかつたのだ。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それにせわしいには忙しいが芸者なども上って、収入みいりも多いということであった。体が大きいから、年などはどうにもごまかせると言って、お鳥は女文字のその葉書を見せた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
出る席はせいぜい一軒か二軒で、それも半チクな寄席ばかり、従って収入みいりはない。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
可哀かわいそうに、お千世は御飯炊から拭掃除、阿婆が寝酒の酌までして、ちびりちびりといじめられる上、収入みいりと云っては自分一人の足りない勝で、すぐにお孝の病気の手当に差響くのに気をんで
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
流しの強盗おしこみが、前の晩入って収入みいりが少なかったために、あくる日は下女一人のところを狙って、また入ったのであろう、——利助の子分も、近所の衆も、そういったことで片付けてしまったものです。
そこで兵隊のシモンは自分の領地へ出かけて行って収入みいりをあつめようとしました。すると執事は言いました。
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
それが幸いに図にあたりまして、三、四年のあいだはなかなかの繁昌で、賽銭そのほか収入みいりもござりました
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あのうたって歩くようになってから、毎晩あふれる心配はなし、収入みいりはならし倍になっているからね。
「米一升に、銭百文あれば、その方たちの暮しでは、ふだんの収入みいりよりもはるかによいはずではないか」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日数ひかずいくつか重ねて駿府すんぷの町へ入りました。お君は駿府の二丁目を流して歩くと案外にも多くの収入みいりがありましたから、これから二三日はかせがなくてもよいと思いました。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私が幸ひ独身者には少し余る位収入みいりがあるので、先方むかうの路を乗越して先へ出て見たのだ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
肩書の分限ぶげんに依って職を求むれば、すみやかに玄関を構えて、新夫人にかしずかるべき処を、へきして作家を志し、名は早く聞えはするが、名実あいかなわず、砕いて言えば収入みいりが少いから、かくの始末。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は銀子との結婚について父の諒解りょうかいを得たいと思い、遊びすぎて金にもつまっていたので、手術料などで相当の収入みいりがありそうに見えても、いざ結婚となると少しまとまった金も必要なのだったが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「念のために言って置くが、江戸は諸国の猿曳が集まるから、まさしく猿の多いところだ。一つは猿曳というものは、昔からのならわしで、高貴の家にも出入し、まことに収入みいりの多い稼業だからであろう」
賄賂わいろは彼ら役人の端公には、日ごろも収入みいりに数えている常習のものだが、こんどのことは相手も違うし、ケタも違う。一生涯の運のつかみどころかとも思われた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たのみに来るものも随分あるようですから、困るようなことはありますまい。いい弟子や、いい出入り先もありますから、内職のほうでも又相当の収入みいりがあるようです
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「会津様から出るのでございます。そのほかにもだいぶ収入みいりがおありなさるようで、茶屋や揚屋で、あのお仲間がお使いなさるのは大したもの、景気が素敵すてきによいのでございます」
その時代ころは又、村に相応な旅籠屋はたごやも三四軒あり、俥も十輛近くあつた。荷馬車と駄馬は家毎の様に置かれ、畑仕事は女の内職の様に閑却されて、旅人対手あひての渡世だけに収入みいりも多く人気も立つてゐた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
零細れいさいな利殖まで心がけて、収入みいりに汲々たるものはあるが、ひとたび自分が、領主として、その知行所たる郷里の三州横須賀や吉良地方などへ臨むときは、よく領民を愛し
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄関が繁昌する割合に大きな収入みいりもなかったが、死んだ妻がなかなか経済家であった為に遠い以前から相当の財産を作って、商売の傍らには小金を貸しているという噂もあった。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ほんとうにつたなわざでございますから、収入みいりも至って少のうございます、それでも皆様のお情けで、どうやらその日の暮しに差支えないだけは御報謝をいただきますんでございます。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宋江はよく郊外の仏寺や盛り場などを見物に出歩いたが、花栄がつけてよこす従者たちには、酒食その他、びた一文も支払わせたことがなく、それが彼らの収入みいりにもなったから
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
月琴げっきんかかえたる法界節の二人づれがきょうの収入みいりを占いつつ急ぎ来て、北へくも南へ向うも、朝の人はすべて希望と活気を帯びて動ける中に、小さき弁当箱携えて小走りに行く十七、八の娘
銀座の朝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
で、その収入みいりは莫大なもの。少ない月でも、銀子ぎんすで二、三百両のあがりは欠かさない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)