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ふりがな文庫
“
千々
(
ちぢ
)” の例文
彼は古ぼけたぺしゃんこになった枕に顔を埋めて、じっと考えた。長い間考えた。心臓は激しく鼓動し、思いは
千々
(
ちぢ
)
に乱れ騒いだ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
胸を打って、襟を
掴
(
つか
)
んで、
咽喉
(
のど
)
をせめて、思いを
一処
(
ひとところ
)
に凝らそうとすれば、なおぞ、
千々
(
ちぢ
)
に乱れる、砕ける。いっそ諸共に水底へ。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なんとかして瓦町へこの襲撃を先触れしなくては! と
千々
(
ちぢ
)
に思いめぐらしていると、何にも知らない鍛冶富はいい気なもので
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
書生と下女とに送られて新橋に至り、発車を待つ間にも児は
如何
(
いか
)
になしおるやらんと、心は
千々
(
ちぢ
)
に砕けて、血を吐く思いとはこれなるべし。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
しかし銀子は
千々
(
ちぢ
)
に思い惑い、ある時ぽつぽつした彼女一流の丸っこい字で、母へ手紙を書き、この結婚
談
(
ばなし
)
の成行きを占ってもらうことにした。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
他は皆、なんでも一切、
千々
(
ちぢ
)
にちぎれ飛ぶ雲の思いで、生きて居るのか死んで居るのか、それさえ分明しないのだ。よくも、よくも! 感想だなぞと。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は
已
(
すで
)
に予審判事の握っている証拠物件に気附いていたからだ。そののっぴきならぬ証拠を、如何に言い解くべきかと、心を
千々
(
ちぢ
)
に砕いていたからだ。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
今日青年たちの思いは
千々
(
ちぢ
)
であるのに、芸術への表現がおくれているのもそのせいであるし、婦人の文学的発言がためらいがちなのも、そのせいである。
婦人の生活と文学
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
どういおう! なんと名乗ろう!
千々
(
ちぢ
)
に乱れて涙ばかりを見あわすであろう! そんな想像だけでも涙がわく。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
序
(
ついで
)
に頭の
機能
(
はたらき
)
も
止
(
と
)
めて欲しいが、こればかりは
如何
(
どう
)
する事も出来ず、
千々
(
ちぢ
)
に思乱れ
種々
(
さまざま
)
に
思佗
(
おもいわび
)
て頭に
些
(
いささか
)
の隙も無いけれど、よしこれとても
些
(
ちッ
)
との
間
(
ま
)
の辛抱。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
『一
体
(
たい
)
これは
何誰
(
どなた
)
かしら……』
心
(
こころ
)
は
千々
(
ちぢ
)
に
乱
(
みだ
)
れながらも、
私
(
わたくし
)
は
多少
(
たしょう
)
の
好奇心
(
こうきしん
)
を
催
(
もよお
)
さずに
居
(
お
)
られませんでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
思い切って娘の選んだ道へこのまま赴かせようかと考えてみたり……さりげなく娘を抱いてはいましても、肚の中では
膏汗
(
あぶらあせ
)
を流さんばかりの気持で、
千々
(
ちぢ
)
に心が乱れておりました
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
うちの賢夫人(……というのは母のことだが)と長女の
千々
(
ちぢ
)
子さまは、葬式の手続きのため、匆々、東京へ転入したが、当主たる石田
九万
(
くま
)
吉氏は、現職のまま海軍民政部の嘱託にひっぱられ
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
側にありけるお登和嬢は一生懸命の場合なり。女ながらも
千々
(
ちぢ
)
に心を砕き
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
僕の心は
千々
(
ちぢ
)
に乱れた。愛する人たちの住んでいる海底都市を、トロ族の暴行より如何にして護ったらいいだろうか。また
大激昂
(
だいげきこう
)
のトロ族を何とか一度で
鎮
(
しず
)
まらせる方法はないものであろうかと。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
幻燈の
花輪車
(
かりんしゃ
)
のよう辮髪の先の灯は、
百千
(
ももち
)
に、
千々
(
ちぢ
)
に、躍って、おどって、果てしなかった。まさにまさしくこれだけは逸品だった。二十人あまりのお客たちが言いあわせたように拍手をおくった。
随筆 寄席囃子
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
思ひ草しげき夏野に置く露の
千々
(
ちぢ
)
にこころをくだくころかな
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
月見れば
千々
(
ちぢ
)
に物こそ悲しけれ我身一つの秋にはあらねど
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
みづからの姿を
千々
(
ちぢ
)
にうちくだく宮殿のごとく
生けるものと死せるものと
(旧字旧仮名)
/
アンナ・ド・ノアイユ
(著)
浮けよ、沈めよ、
千々
(
ちぢ
)
の なやみ
黒き素船
(新字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
ゆうべの心
千々
(
ちぢ
)
に何ぞ
遥
(
はる
)
かなる。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
わが胸の
千々
(
ちぢ
)
の切なさ
我が一九二二年:02 我が一九二二年
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
愛欲
(
あいよく
)
の
千々
(
ちぢ
)
のうれひを。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
言
(
こと
)
は簡なれども、事情の大方は
推
(
すい
)
せられつ。さて何とか救済の道もがなと
千々
(
ちぢ
)
に心を
砕
(
くだ
)
きけれども、その術なし。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
しかし、お綱の考えはどうであったろうか? すくなくも今のお綱の胸のうちは
千々
(
ちぢ
)
にみだれているに違いない。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
などとそれこそ思いが愚かしく
千々
(
ちぢ
)
に乱れ、上の女の子に桃の皮をむいてやったりしているうちに、そろそろ下の男の子が眼をさまし、むずかり出しました。
たずねびと
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ところが鍵を盗み出す前でしたか、それとも蔵の二階へ
上
(
あが
)
りながらでありましたか、
千々
(
ちぢ
)
に乱れる心の
中
(
うち
)
で、わたしはふと滑稽なことを考えたものでございます。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
お
爺
(
じい
)
さんは
眉
(
まゆ
)
一
(
ひと
)
つ
動
(
うご
)
かされず、
済
(
す
)
まし
切
(
き
)
って
先
(
さ
)
きに
立
(
た
)
たれますので、
私
(
わたくし
)
も
黙
(
だま
)
ってその
後
(
あと
)
について
出掛
(
でか
)
けましたが、しかし
私
(
わたくし
)
の
胸
(
むね
)
の
裡
(
うち
)
は
千々
(
ちぢ
)
に
砕
(
くだ
)
けて、
足
(
あし
)
の
運
(
はこ
)
びが
自然
(
しぜん
)
遅
(
おく
)
れ
勝
(
が
)
ちでございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
君あしたに去りぬ夕べの心
千々
(
ちぢ
)
に
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
月見れば
千々
(
ちぢ
)
に物こそ悲しけれ
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
或いは途中で明智の手にとらわれたか、ここの
匿
(
かく
)
れ家を探し当てないものか。朝夕を
千々
(
ちぢ
)
に思うのだった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何とか報恩の道もがなと、
千々
(
ちぢ
)
に心を
砕
(
くだ
)
きし
後
(
のち
)
、同女の次女を養い取りて
聊
(
いささ
)
か学芸を
授
(
さず
)
けやりぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
五円を懐中して下駄を買いに出掛けても、下駄屋の前を
徒
(
いたず
)
らに右往左往して思いが
千々
(
ちぢ
)
に乱れ、ついに意を決して下駄屋の隣りのビヤホオルに飛び込み、五円を全部費消してしまうのである。
服装に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
眼
(
ま
)
のあたりに拝して、この
爺
(
じじ
)
は、思いも
千々
(
ちぢ
)
に、むかし懐かしゅう存じあげておりますものを
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
思いは
千々
(
ちぢ
)
に乱れるばかりだ。どうも日記の文章が、いつもと違っているようだ。たしかに気持も、いや気持がちがうというのは、気違いの事だ。まさか、気違いではなかろうが、今夜は変だ。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あるいは、帝に
直諫
(
ちょっかん
)
申しあげたあとも、その絶望から将来の必然を
千々
(
ちぢ
)
に悩んで、もはや一個の力ではいかんともなしがたい苦悶の自己を、ここでしずかに処理しているのかともおもわれる。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
千
常用漢字
小1
部首:⼗
3画
々
3画
“千々”で始まる語句
千々岩
千々石
千々姫
千々岩灘
千々年
千々村
千々和灘
千々岩君
千々種々
千々岩安彦