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きちょうめん
ふりがな文庫
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几帳面
(
きちょうめん
)” の例文
私
几帳面
(
きちょうめん
)
なたちですから、
抽斗
(
ひきだし
)
の中でも文庫の中でも、キチンとして置くのに、それがよく乱れていますの。本当にあさましいと思うわ
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
あるものはただ新聞紙に包まれていたが、しかし
几帳面
(
きちょうめん
)
に綿密にしてあって、紙は二重になっており、くるくる紐がかけてあった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
これほど小ぢんまりと
几帳面
(
きちょうめん
)
に暮らして行く彼らは、おそらく食後に使う
楊枝
(
ようじ
)
の
削
(
けず
)
り
方
(
かた
)
まで気にかけているのではなかろうかと考える。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
場所は
柳橋
(
やなぎばし
)
、名前はない。——言葉は丁寧だが、四角
几帳面
(
きちょうめん
)
な文句の様子では、間違いもなく武家だ、——使いの者はどんな男だ
銭形平次捕物控:035 傀儡名臣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
襖
(
ふすま
)
、柱、廊下、その他片っ端から汚い汚いと言いながら、歯がゆいくらい
几帳面
(
きちょうめん
)
に拭いたり
掃
(
は
)
いたり磨いたりして一日が暮れるのである。
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
▼ もっと見る
晩飯には、青豆などの煮たのが、丼に盛られて
餉台
(
ちゃぶだい
)
のうえに置かれ、
几帳面
(
きちょうめん
)
に掃除されたランプの
灯
(
ひ
)
も、不断より明るいように思われた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼はコーンの
几帳面
(
きちょうめん
)
さを少しも疑わなかった。コーンが店へ出る前にこの宿へ寄るかもしれないと思って、一歩も外に踏み出さなかった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
毎日
几帳面
(
きちょうめん
)
に書く日記ででもあるように、天気を書くのも可笑しい。どうしても己には続いて日記を書くということが出来ない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その
小
(
ち
)
いっこい
女
(
ひと
)
は、
几帳面
(
きちょうめん
)
で几帳面で、譜をとるのに、これっぽっちの間違いもない。ありゃどうしたことじゃろうかね。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
几帳面
(
きちょうめん
)
にそんな日を選んだというだけの話で、実際は、二日つづきの休暇も三日つづきの休暇も、問題でなかったのである。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は毎日荻窪の下宿から銀座の或ビルディングの五階にあるその建築事務所へ通って来ては、
几帳面
(
きちょうめん
)
に病院や公会堂なぞの設計に向っていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼は学者で、潔癖で、
几帳面
(
きちょうめん
)
で、多芸で、勉強家で、また同時に、友人らのいわゆる「空想的なるまでに」思索的であった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
顔立ちの整った、ちょっと
小綺麗
(
こぎれい
)
な娘だった。気立てもやさしく、することなすことしっかりしていて、
几帳面
(
きちょうめん
)
で、てきぱきした性質であった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
電灯を
几帳面
(
きちょうめん
)
に
盡
(
ことごと
)
く消し去って、おそろしく大きなボール紙の函が落ちているとしか見えない某百貨店の横をすりぬけ
第四次元の男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
バスは、ときどき揺れて、
呟
(
つぶや
)
き声や、笑い声を乗客に立てさせながら、停留場毎に
几帳面
(
きちょうめん
)
に、客を乗り降りさせて行く。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
むろん、校則は、どんな些細なことでもよく守った。その点では、人一倍細心な恭一ですら、彼の
几帳面
(
きちょうめん
)
さをおりおり冷やかしたくらいであった。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
僕とは違ってなかなか
几帳面
(
きちょうめん
)
な生活でした。僕なんか面倒くさがり屋だから、自炊と外食をチャンポンにしていますが、野呂は自炊の一点ばりです。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
この若者の
人普外
(
ひとなみはず
)
れて
几帳面
(
きちょうめん
)
な
習癖
(
くせ
)
を識っている藤吉は、今その手拭いがいつになく皺だらけなのを見て取って、なぜかちょっと変に思ったのだった。
釘抜藤吉捕物覚書:10 宇治の茶箱
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「いつものとおり
胡坐
(
あぐら
)
をかきますよ。
敲
(
たた
)
き大工の息子ですから、
几帳面
(
きちょうめん
)
に長く坐っていると立てなくなりますよ」
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
わずか二十五文の汽車賃を手帳に書きつけておくのはいささか
几帳面
(
きちょうめん
)
にすぎるようだが、これは個人の趣味の問題で、他人がとやかくいう筋はないのである。
青髯二百八十三人の妻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
元来私は金銭上の事にかけてはなかなか
几帳面
(
きちょうめん
)
な方で、独身時代にはちゃんと毎月の小遣いを定め、残りはたとい
僅
(
わず
)
かでも貯金するようにしていましたから
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「まさか。僕もこれで学校の時間丈けは
几帳面
(
きちょうめん
)
だよ。ことによると電文が不明瞭だったのじゃなかろうか?」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
こんなことには極めて
几帳面
(
きちょうめん
)
である清吉が、今時分になって燈火をつけていないということは異例ですから、甚三郎は家の中へ入ると直ちに言葉をかけました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
富武五百之進とは、誰も知る、番町の旗本、四十四、五の年配で、見るからに、
几帳面
(
きちょうめん
)
そうな人物。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
勤勉な
紡綞
(
ぼうすい
)
の唸りのようだ。それにつれ、佐々の青鉛筆はほとんど自働機的敏活さでさっさっ、さっさと、細かく
几帳面
(
きちょうめん
)
に運動する。そこに自ら独特のリズムが生じた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼は恋人としてもっとも熱烈なものというのではなかったが、きわめて
几帳面
(
きちょうめん
)
な男で、この使命がいちはやく丁重にはたされることをしきりに望んでいるように見えた。
幽霊花婿:ある旅人の話
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
几帳面
(
きちょうめん
)
な、ガキガキと歩いて、一銭も人から借り倒さないで、
乞食
(
こじき
)
には、きっと一銭——一銭より少なくも多くもないことよ——それっぱかしだけやって、女といえば
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
軽業お初とも言われる女、シラ
几帳面
(
きちょうめん
)
のおしろうととは違うんだから、まあ
堪忍
(
かんにん
)
して頂戴な。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ねええ、はじめね、『
几帳面
(
きちょうめん
)
』といううちで飲んだのよ。そしてね、『ずぼら』って家へはしごしたの。男の人っておもしろいとこ知ってんのね。わたし、気に入っちゃった。
雑居家族
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
帯も
紐
(
ひも
)
も解かれないのだからね。私の所だけででも
几帳面
(
きちょうめん
)
にせずに気楽なふうになって、世間話でもしたらどうですか。何か珍しいことで
睡気
(
ねむけ
)
のさめるような話はありませんか。
源氏物語:26 常夏
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
父から
餞別
(
せんべつ
)
に貰った五六枚ほどの
短冊
(
たんざく
)
、上京後の座右の銘にするようにと言って父があの
几帳面
(
きちょうめん
)
な書体で書いてくれた文字、それを岸本はまだありありと眼に浮べることが出来た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
長年の馴染みであるから、勿論あらためて催促もしないが、今まで
晦日
(
みそか
)
には
几帳面
(
きちょうめん
)
に払っていた人が僅かばかりの宿賃をとどこおらせているようでは、その懐ろ都合も思いやられる。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
紙のきたなくなって裂けていることがD——の真の
几帳面
(
きちょうめん
)
な習慣と矛盾しているし、また、その書類をつまらないもののように、見る者をだまそうとする計画だなと思いつかせること。
盗まれた手紙
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
木谷は、
几帳面
(
きちょうめん
)
で、根気強い活溌な性質がとくをして、上等兵になっていた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
母さんは、ものを
几帳面
(
きちょうめん
)
にすることを教えようと思ったんだ。自分で
懲
(
こ
)
りるように自分で捜しなさいといったんだ。ところが、捜せばきっと見つかるっていうことが、やっぱりほんとだった。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
のみならずほんのちよつとしたメモのやうなものを見たことがありますが、その
筆蹟
(
ひっせき
)
もなかなか
几帳面
(
きちょうめん
)
で、これが小学も満足に出てゐない人の書いたものかと思はれるほど正しい字づかひでした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
几帳面
(
きちょうめん
)
な彼は中を片附けて、蓆の戸帳まで
叮嚀
(
ていねい
)
に
卸
(
おろ
)
してあるが、本人はどこにも見えない、自分を置去りにしたのではなかろうが、山路はこの辺の
諺
(
ことわざ
)
にも一分八間といって、足の爪先の向けようで
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
支店長はこのことを非常に奇妙に感じているらしく、——もちろんこれはまたいつもの彼の
几帳面
(
きちょうめん
)
さにふさわしいことだったが——教会の名をあげ、その泉の近くで二人に出会った、というのである。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
法水は
几帳面
(
きちょうめん
)
に自分の説を述べた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
大抵のイズムとか主義とかいうものは無数の事実を
几帳面
(
きちょうめん
)
な男が
束
(
たば
)
にして頭の
抽出
(
ひきだし
)
へ入れやすいように
拵
(
こしら
)
えてくれたものである。
イズムの功過
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
几帳面
(
きちょうめん
)
らしい年とったドイツ人の医者が、うさん臭そうな顔つきで、きょろきょろあたりを見回しながらはいって来た。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
然
(
しか
)
し町は気に入った。名も無いフロウナウの町は平凡そのもののようであった。
几帳面
(
きちょうめん
)
に道路に仕切られ、それに思い思いの住宅が構えられていた。
褐色の求道
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そうして毎朝、誰よりも先きに行って、まだ締まっている学校の門が小使の手で開かれるのを待っている、
几帳面
(
きちょうめん
)
な数名の生徒たちの一人になった。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
私は余り神経質でもなく
几帳面
(
きちょうめん
)
でもない
性質
(
たち
)
だったが、でもそんな紙には何となく気を入れて書く気がしなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
次にマンハイムは、なんらの私心なしにその騒動を愉快がっていた。
几帳面
(
きちょうめん
)
な同人どもの中にこの狂人を引き入れたのは、面白い狂言のように思われた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
野呂は毎日
几帳面
(
きちょうめん
)
に学校に通い、その余暇で事をはこぶわけですから、なかなか能率が上らないのでしょう。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
チーア卿は、
几帳面
(
きちょうめん
)
に精算をし、
小銭
(
こぜに
)
の釣銭までちゃんと取って、街を向うへふらふらと歩いていった。
共軛回転弾:――金博士シリーズ・11――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
馬鹿に
几帳面
(
きちょうめん
)
な男と見えて、部屋の中は、他のどの止宿人のそれにもまして、キチンと
整頓
(
せいとん
)
しています。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
几帳面
(
きちょうめん
)
な
藩邸
(
はんてい
)
の中に、たった一人、ひどく
目障
(
めざわ
)
りな男が、この頃、御用部屋にまごまごしている。
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
殊に安達君は
几帳面
(
きちょうめん
)
の方だ。学生時代にも伸びるから伸びるまでゝなく、月一回と規則正しく定めていた。それを今回少し早目にしたのは矢張り就職気分の刺戟だった。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
“几帳面”の意味
《名詞》
処理が正確できちんとされていること。また、そのようにする性格であること。
(出典:Wiktionary)
几
漢検1級
部首:⼏
2画
帳
常用漢字
小3
部首:⼱
11画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“几帳”で始まる語句
几帳
几帳窓
几帳御厨子