八百万やおよろず)” の例文
旧字:八百萬
八百万やおよろずの神々を念じながら、流るる汗を押し拭い、二度三度押せど引けど、動かぬ岩は動かばこそ、精さえ根さえ尽き果てた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
日本の神話には八百万やおよろずの神とか、千五百秋ちいほあきだのというような、数を形容詞に使ったものが多く、またそれが古今を通じて人口に膾炙している。
右の条々、つつしんで相守り申すべく候。もし違乱に及び候わば、八百万やおよろず天津神あまつかみ国津神くにつかみ、明らかに知ろしめすべきところなり。よって、誓詞如件くだんのごとし
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
八百万やおよろずの神々に念じながら、ズドンとばかりに打ち放すと、筒口からは末広形の猛烈な火炎が噴出し、その反動でコン吉は、うしろへでんぐり返り
ここには、人と人との血気、剣と剣との殺気、それが全くむきだしに、青天白日、八百万やおよろずの神の照覧ましますところにおいて行わるるのであります。
と、かなたでよろこぶ群集ぐんしゅうの声々、八百万やおよろず神々かみがみ神楽かぐらばやしのように、きょうたもうやと思われるばかりに聞える。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのふもとに展開する山川の実に美しい多様な変化を味わっていると、どうしても日本はやはり八百万やおよろずの神々の棲処すみかであり、英雄の国であり、哲人の国であり
札幌まで (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
小町 ああ、やっと助かった! これも日頃信心する神や仏のおはからいであろう。(手を合せる)八百万やおよろずの神々、十方じっぽう諸菩薩しょぼさつ、どうかこのうそげませぬように。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
曼荼羅には八百万やおよろずの仏がいるから、ここにも数を想うかも知れぬが、それは多仏なのではなく、一仏の無量な顕現で、丁度一つの太陽が十方に光を放つが如きものである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
私達わたくしたちとて矢張やは御神前ごしんぜん静座せいざして、こころ天照大御神様あまてらすおおみかみさま御名みなとなえ、また八百万やおよろず神々かみがみにおねがいして、できるだけきたないかんがえをはらいのけること精神こころむのでございます。
その寒い風が吹くにつけ自分の住居の破れ障子が今更のように目についてびしく、それから吹込む風も寒い、のみならず世上は八百万やおよろずの神々が出雲いずも大社たいしゃへ旅立をせられて
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
かかるタノモシキ珍漢ありて、八百万やおよろず世のオール落語は、前途ますますめでたからんと、大提灯をもつものは、これも東都文林に、呆れ果てたる能楽野郎、あいさ、正岡容に候。
寄席行灯 (新字新仮名) / 正岡容(著)
定めしお町が八百万やおよろずの神々に此の身の無難を祈っているのであろう、あゝかたじけない
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「神代巻」や『古事記』に、天照大神あまてらすおおみかみ岩戸籠いわとごもりの時、八百万やおよろずの神、常世とこよ長鳴鳥ながなきどりあつめ互いに長鳴せしめたと見ゆ。本居宣長曰く、常世の長鳴鳥とは鶏をいう。常世は常夜とこよで常世とは別なり。
しかもその誓約は日本でいえば弓矢八幡、八百万やおよろずの神々というが如く天にします神の御名おんなに於て厳格に約束したのである。然るに会議して帰国すれば直ちに軍備を修めて戦争の用意をしていた。
そのような力味声りきみごえ出さば腹が減ろうぞ。もっとおとなしゅう物を申せい。人はな、笑いたい時笑い、泣きたい時泣くものと、高天原たかまがはら八百万やおよろずの御神達が、この世をお造り給いし時より相場が決ってじゃ。
その神様の種類からいえば、先ず店の間の天照皇太神宮てんしょうこうたいじんぐうを初めとし、不動明王ふどうみょうおう戸隠とがくし神社、天満宮てんまんぐうえびす大黒だいこく金比羅こんぴら三宝荒神さんぼうこうじん神農しんのう様、弁財天、布袋ほてい、稲荷様等、八百万やおよろずの神々たちが存在された。
吾こそは御嶽冠者なり! 口惜くちおしいかな、宝蔵には、八百万やおよろずの大和の神あって、彼の髑髏盃を守るがため、容易たやすひつに近寄り難く、かく一旦は立ち帰れども
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
日本には八百万やおよろずの神があり、仏教には八宗百派があるけれども、あちらではイエス・キリスト一つで統一されていたはずだ、本で読んだ時は、人間が神を拝もうと拝むまいと
お町はようや安堵あんどして、其の夜は神仏しんぶつがん掛けて、「八百万やおよろずの神々よ、何卒なにとぞ夫文治郎にうてかたきを討つまで、此の命をまっとうせしめ給わるように」とまたゝきもせずの明くるまで祈って居りました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
単調で荒涼な砂漠さばくの国には一神教が生まれると言った人があった。日本のような多彩にして変幻きわまりなき自然をもつ国で八百万やおよろずの神々が生まれ崇拝され続けて来たのは当然のことであろう。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
国王これをおとない眼を開きて相面せよといいしに、わが眼睛耀てりて、君輩当りがたしと答え、国史に猿田彦大神、眼八咫鏡やたのかがみのごとくにして、赤酸漿あかかがちほどかがやく、八百万やおよろず神、皆目勝まかちて相問うを得ずとある。
人々困難したため、我ら二、三の重役どもが、表面にはくだんの盃を御嶽山おんたけさんの頂きに埋めたと云いふらし、実はひそかに宝蔵へしまい、盃を納めた唐櫃からびつへは、八百万やおよろずの神々を勧請かんじょうして堅く封印を施したため
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
又も難船か、なんたる不幸の身ぞ、八百万やおよろずの神々よ、どうぞ一命を
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)