まつ)” の例文
まつたく、服装なり丈ぢやわからない世のなかになりましたからね。何処どこの紳士かと思ふと、どうもへんちきりんなうち這入はいつてますからね」と門野かどのはすぐあとを付けた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ヘエ。「同じ牛でもどうも、五くらゐいたといふ事を聞きましたがまつたくでございますか。 ...
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
燐寸箱! 然だ、燐寸箱だよ、まつたく。狹くて、狹くて、全然まるつきり身動きがならん。のみだつて君、自由にねられやせんのだ。一寸何分とたけきまつた奴許りが、ギッシリとつめ込んである。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『イヤまつたく貴君あなたの物で御座ございます、けれども何卒どうまげわたくしたまはりたう御座ございます』
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
見出しおどろき申候れば昨夜つまづきしはまつたく殺害せつがいされし者と初めて心づき候因て殺し人は外に御座候はんおそれながら此儀御賢慮ごけんりよねがひ奉つるといふをもまたず小野寺源兵衞席を進みこゑあらくいかに傳吉おのれ邪辯じやべん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
目的があつてあるくものは賤民だと、かれは平生から信じてゐたのであるけれども、此場合にかぎつて、其賤民の方がえらい様な気がした。まつたく、又アンニユイに襲はれたと悟つて、かへりだした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その場所ばしよまつたくぼくつたのである、後背うしろがけからは雜木ざふきえだかさかさねておほひかゝり、まへかなひろよどみしづかうづまいながれてる。足場あしばはわざ/\つくつたやうおもはれるほど具合ぐあひい。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
承まはり候者かな小夜衣とは何のことにて候や夫はまつたく門違かどちがひにて有るべし然樣のことは夢にも覺え候はず何か御心得ちがひ成るべし拙者せつしやは町醫村井長庵と申す者にて候と聞より然ればたはむれにてもなきかと千太郎は大いに驚怖おどろき先日私し近邊きんぺんの料理茶屋の二階にて御目に懸り眼前がんぜんに貴殿へお渡し申したる五十兩の金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
神経しんけいぢやない本当だよ。まつたくにいさんの所為せゐだ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)