くれえ)” の例文
森「なぜ此のくれえな顔を持っていて、穢ない姿なりをしているでしょう、二つきしばりぐれえめかけにでも出たらばさそうなものですなア」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此處ここらのうまだつてろえ、博勞節ばくらうぶしかどつあきでやつたつくれえまやなか畜生ちきしやう身體からだゆさぶつて大騷おほさわぎだな」かれひとりで酒席しゆせきにぎはした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「そいつがこの頃は御覧なせえ。けちな稼ぎをする奴は、はうきで掃く程ゐやすけれど、あのくれえな大泥坊は、つひぞ聞か無えぢやごぜえませんか。」
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
心配する事アえ、先生。齡ア四十一だべえが、村一番の醜婦みたくなし巨女おほをなごだア、加之それにハア、酒を飮めば一升も飮むし、甚麽どんな男も手餘てやましにするくれえ惡醉語堀ごんぼうほりだで。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
神世の昔××××様のお声がかりの港なんだから、いつから初まったか解かれねえくれえだ。ツイこの頃まで生きていた太田道灌どうかんのお声がかりなんてえシミッタレた町たあ段式が違うんだ。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「うそをいやァ隣の料理屋……といったっていまあるあれじゃァねえ……どの座敷も人で身動きも出来ねえくれえだった。——だから口の悪い奴はいった、これじゃァ怪談会でなくって怪談祭だ。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
成程なるほど善悪にや二つは無えが、どうせ盗みをするからにや、悪党冥利みやうりにこのくれえな陰徳は積んで置きえとね、まあ、わつちなんぞは思つてゐやすのさ。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ちつたあ黴臭かびくさくなつたやうだが、そんでもこのくれえぢや一日いちんちせばくさえななほつから」勘次かんじ分疏いひわけでもするやうにいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
敵が然うしたら斯うだと仕方話いしてお目に掛けたゞ、敵なら捻り殺すだが、仕方話で、ちょっくら此のくれえなものさ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『ハイ行きますよ。貴方あんたくれえ隔てなくして呉れるしとア無えだもの。』
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「そんでお内儀かみさん、どのくれえしたもんでがせうねぜには、たんとんぢやはあやうねえが」勘次かんじあやぶむやうにいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
五十五じゃア定命じょうみょうとは云われねえくれえで嘸お前さんもお力落しで、新吉此処こゝに居るのか手前てめえ、え、おい
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
めえまア許してくれ堪忍してくれと云うが、物の理合りあいを宜く考えて見なせい、人と云うものは息ある物のつかさと云って、此のくれえな自由自在な働きをするものはねえのだ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
実は此処こゝに百両持ってるが、これはおめえのをったんじゃアねえぜ、己はんなかゝあの着物を着て歩くくれえの貧乏世帯じょてえの者が百両なんてえ大金てえきんを持ってる気遣きづけえはねえけれど
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
色事だって親の方にも義理があるから追返すくれえなら首でもるか、身い投げておっぬというだ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
亥「やッ、そればかりは旦那聞かれません、今まで彼奴あいつの為にくれえ苦労をしたか知れやしねえ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの巨大でっけえ森のある明神さまの、彼処あすこに隠れているのかえ、人の往来おうれえもねえくれえとこだから定めて不自由だんべえ、彼処は生街道なまかいどうてえので、松戸へン抜けるに余程ちけえから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わっちアどのくれえがっかりしたか知れやせん、まご/\している内に生憎あいにく病気にかゝりやして、さるお方の厄介になって居りますうちに、江戸の侍が海賊を退治したという噂、幸い病気もなおりやしたから
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おみねや、おらアもう此のくれえな怖いもなア見た事はねえ」
多「旦那様へお預け申したものはくれえになりやした」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)