不幸ふしあはせ)” の例文
そらくもくした! うすかげうへを、うみうへう、たちままたあかるくなる、此時このときぼくけつして自分じぶん不幸ふしあはせをとことはおもはなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ロミオ 御坊ごばうか、消息たよりなんとぢゃ? 殿との宣告いひわたしなんとあったぞ? まだらぬ何樣どのやう不幸ふしあはせが、わし知合しりあひにならうといふのぢゃ?
四人の同胞きやうだい、総領の母だけが女で、残余あとは皆男。長男も次男も、不幸ふしあはせな事には皆二十五六で早世して、末ツ子の源作叔父が家督を継いだ。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この婦人は他の事でもつと聞えてもよいのだが、しあはせ不幸ふしあはせか、いつも男装をしてゐるので、それで一層名高くなつてゐる。
あのひと不幸ふしあはせな一生で死んでしまつたが、私はあのひとが志望をげてゐたらば、立派な働きをしてゐたであらうと思つて、勿體もつたいないことをしたと思つてゐる。
日本橋あたり (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
だとて我が今理屈を味方にするでもない、世間を味方にするでもない、汝が手腕の有りながら不幸ふしあはせで居るといふも知つて居る、汝が平素ふだん薄命ふしあはせを口へこそ出さね
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
不幸ふしあはせは斯の屋根の下にもお志保を待受けて居た。来て見ると、もう継母も、異母はらちがひ弟妹きやうだいも居なかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まあ嘘でも宜いさよしんば作り言にしろ、かういふ身の不幸ふしあはせだとか大底のひとは言はねばならぬ、しかも一度や二度あふのではなし其位の事を發表しても子細はなからう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母は、人としてだれでもが心得て居なければならない大切な金言を知らないのだらうか? 母は子供の時あれを教はらなかつたのだらうか……あゝ俺は何といふ不幸ふしあはせだらう。
親孝行 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
仲善なかよしのぞうくまとは、をりふし、こんなかなしいはなしをしてはおたがひの不幸ふしあはせなげきました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
私が、こんなに小さく、蒼白く、こんなにとゝのはない特徴のある顏をしてゐるのは、まつたく不幸ふしあはせだと思つてゐた。では何故、私は、こんなに野心やしんを持つたり、殘念がつたりするのだらう。
ロレ ロミオよ、てござれ、てござれよ、こりゃ人目ひとめおそはゞかをとこ。あゝ、そなた憂苦勞うきくらう見込みこまれて、不幸ふしあはせ縁組えんぐみをおやったのぢゃわ。
自分の霊魂たましひと自分の女房かないを信じない人も、懐中時計だけは信ずる。その懐中時計をすらお上手なしに報告出来ない人は、世にも不幸ふしあはせな技巧家である。
明晩とは今夜である銀之助はしみ/″\しづ不幸ふしあはせを思つた。しづは男に愛着おもはれた男を愛着おもふ女である。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
まあうそでもいさよしんばつくりごとにしろ、かういふ不幸ふしあはせだとか大底たいていひとはいはねばならぬ、しかも一や二あふのではなし其位そのくらゐこと發表はつぴやうしても子細しさいはなからう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あの不幸ふしあはせな父親の為には、どんなにかお志保も泣いて居るとのことであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ロミオ けふのこの惡運あくうん此儘このまゝではむまい。これはたゞ不幸ふしあはせ手始てはじめ、つゞく不幸ふかうこの結局しまつをせねばならぬ。
まあうそでもいさよしんば作り言にしろ、かういふ身の不幸ふしあはせだとか大底のひとはいはねばならぬ、しかも一度や二度あふのではなしその位の事を発表しても子細はなからう
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我輩はお志保や省吾のことを考へる度に、どの位あの二人の不幸ふしあはせを泣いてやるか知れない。奈何どうして継母といふものは彼様あんな邪推深いだらう。此頃こなひだも此頃で、ホラ君の御寺に説教が有ましたらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)